双子のチョコレート人
オチが弱かったので書き換えました。
夜の散歩が趣味の私は、ある日公園の隅っこで、不思議な物を拾った。それは、ピンク色と水色の2色の板チョコレートだった。両端は複雑に飛び出したり凹んだりしていて、真ん中にそれとピッタリハマりそうな複雑な切れ込みが入っている。そして、ピンク色の部分と水色の部分から、それぞれ4本ずつ棒が飛び出していた。なんとも不恰好だ。
「やった!茜、やっと私たちが見える人に出会えたよ!」
「せやな〜葵。うちらこんな双子やから、ろくに動けんで困っとったんや。」
「見える上に拾ってくれたお姉さん!お願いがあるんですが、聞いていただけませんか?」
びっくりした。ただの変な板チョコだと思っていた物が喋ったのだ。
「えぇ!……こんなことってあるのね。お願いって何?」
「うちらの真ん中、ちょい複雑に切れ込み入っとるやろ?」
「そこで色が混ざらないように切り分けてほしいんです。」
「そーしたら、くるんってなれるんや。」
「チョコレート人は、筒状じゃないと自由に動き回れないんです。」
「普通のチョコレート人は、2人くっついたりしとらんから、自分でくるんってなれるんやけど……」
「私たち、珍しく双子で生まれちゃったので……」
「親とかにやってもらったりできないの?」
「親もおらんねん……気付いたら生まれとるのがうちらチョコレート人なんや。」
不思議なこともあるもんだ。確かにずっと手の上に乗せているけど、色で別々に喋るし、手の熱で溶けてきそうな気配もない。
仕方なく……というより未知の体験に少しワクワクしながら、切れ込みに沿って板チョコを割っていこうとした。
「ちょい待ちや。うちらの切れ込み、無駄に複雑すぎんねん。」
「人間さんは色々な道具を使えるんですよね?それでやったほうがいいんじゃないかな……」
「確かにそれもそうだね。家に帰ってからやるよ。」
私は公園を出て、自宅に向かった。そう遠くない自宅までの道のりを、賑やかに進む。ピンク色の関西弁の方は、人を見かけるたびに棒を忙しなく動かして興奮している。水色の大人しい方は、あまり動かないから分かりづらいが、花や犬に注目しているようだ。
ピンク色の方がずっと喋っているので、通行人に変な目で見られないかヒヤヒヤしていたが、このチョコレート人とかいうのは、普通の人には見えないようで、不審な目を向けられることはなかった。
家に帰りつき、切り分けられそうな道具を探した。包丁、マイナスドライバー、ドライバーセットに入ってた先が尖ってる――ピックツールって言うのかな?
これだけあればなんとかなるだろう。プラスドライバーだけじゃなくて、ドライバーセットを買っていて良かった。
「わぁ、道具ってこんなにあるんやなぁ!」
「すごいね。これなら私たちも自由に動けるようになれそう。」
双子のチョコレート人の切り分け作業を始めた。まずは包丁で、少しまっすぐなところを切る。パキ。意外とスッと包丁が入った。
複雑な部分は、マイナスドライバーとピックツールを組み合わせて穴を開けて、それを広げて切り分けていく。
「せや!普通のチョコレート人ってどんな感じなんやろ。」
「でも、私たちってそうポンポン発生するようなものじゃないし……簡単には見つけられないと思うなぁ。」
「一度気になったら、ようけ気になりだしたわ〜〜どないしよ。」
「ここは安全だから、ここに居ようよ。優しいお姉さんもいるし。」
「……せやなぁ。」
コツ、パキ、カチ、パキ
丁寧に、色が混ざらないように切り分けていく。型抜きみたいだな……と思ったところで、完全に切り分けられたようだ。
ピンク色と水色のチョコレート人は、くるりと筒状になり、複雑な切れ込みがピタッとはまる。
「おおきに!これで自由に動けるわ。あぁ〜〜自由って最高やな!」
「ありがとうございます、お姉さん。大変助かりました。」
ピンク色の関西弁の茜は、飛んだり走ったり本当に自由に動き回っている。
水色の丁寧な葵は、私にお辞儀をすると、私の本棚が気になるようでそちらに目を向けた。
私は一息入れようと、寝る前のホットミルクを入れに台所に立った。その隙を狙ったのか、茜は突然郵便受けに飛び込み、外に出た。
茜は自由に外を出歩けるようになった、という達成感でいっぱいになった。
普通のチョコレート人はどこにいるのだろう。やっぱり物陰とか草むらだろうか。
キョロキョロと周りを見ながら歩いていると、突然眩しくなり、巨大なものにぶつかった――
「お姉さん、お姉さん!大変!」
「おっと危ない。熱いもの持ってる時にぶつからないでね。どうしたの?」
「茜が飛び出していっちゃった!私、本が気になってじっくり見てたんだけど、その隙に外に出たみたい!」
「え?!葵ちゃん、茜ちゃんの場所とか今わかる?」
「なんとなく、方向だけなら!」
「双子で良かったね。急いで追いかけよう!」
私は葵を持って走った。葵が方向は教えてくれるが、道路はそう都合よく通っていない。回り道をしている気分になりながら走っていると、県道の交差点に辿り着いた。
「この辺みたいです。でも……横断歩道のところみたい……」
今は歩行者信号は赤で、車がどんどん通っている。
「とりあえず、歩行者信号が青になるのを待とう。」
「茜、無事ならいいけれど……」
歩行者信号が青になったので、葵の示す方に向かった。右折車が通りそうなところに、たくさんのピンク色のチョコレートのかけらと、ピンク色の錠剤がいくつか、足と手だったのであろう棒が4本落ちていた。
「錠剤と手と足を拾ってください!それで復活できます!」
葵にスマホのライトで地面を照らしてもらい、拾いながら葵に問いかける。
「チョコレートのかけらは拾わなくてもいいの?!」
「実はチョコレート部分は何でもいいんです。信号赤になっちゃいますよ!」
「この棒、ちょっと折れてる気がするけど大丈夫?!」
「……多分大丈夫です!全部拾えましたよね?チョコレートを買って、家に帰りましょう!」
這いつくばって拾い集めるのは大変だった。今手元には、錠剤が9個、棒が4本ある。肩に乗っていた葵が声をあげた。
「あれ?錠剤は10個のはずなんだけど……」
「えぇ?足りないとダメだよね?!」
「もちろん。もう一度探そう!」
「もし、そこの方々。困っておるのか?」
「わ、びっくりした!誰?!」
「わしは足元じゃ。」
私はしゃがむと、道端の草むらの中に、茶色のチョコレート人を見つけた。茜や葵より1ブロック分以上背が高い。葵が肩からピョンと飛び降りた。
「初めまして。私は葵と申します。私たちは双子で生まれたのですが、今バラバラになっている茜が、普通のチョコレート人はどうなのか、とても気になったようで、1人で勝手に飛び出していったんです。」
「初めまして、あかりです。バラバラになった茜ちゃんを復活させるには、錠剤が10個必要なんですよね?暗くて9個しか見つけられなくて……」
「あの辺りでバラけたんじゃな?ちょっと探してこよう。」
普通のチョコレート人が、横断歩道が青になるのを待って、あたりを探る。何個か錠剤を見つけられたようだ。
「困ったのぅ……3個ほど錠剤はあったが、色も違うし、純粋なチョコレート人の波動を感じられるものがない。車に踏まれて性質が変わったかもしれん。これが1番近い波動じゃな。」
「多少茜が変わっても、復活してくれればそれでいいです……!」
「復活する時に使うチョコレートって、できるだけ元の色と同じものが良かったりする?スーパーに行けばピンク色の板チョコレートも売ってるよ。」
「そうなんですか?!元と同じか近い色のものの方が、しんどくないです!」
「その通りじゃ。スーパーなぞ近寄らんが、今はそんなもんがあるんじゃなぁ。」
「そうだ!名前聞いてなかったけど、普通で長老のチョコレート人さん!一緒にあかりさんの家に来ませんか?茜が普通のチョコレート人に、すっごく会いたがっていたんです。」
「人生色々。そういう経験をしてみるのもありじゃろうて。」
「うん……?来てくださるってことですかね?長老さん、ありがとうございます!」
私は葵と長老を肩に乗せ、茜の残骸を大切に握り、24時間営業のスーパーに行った。入ってすぐ、バレンタインのポップが目に入った。この辺りを探せば、ピンクの板チョコレートはあるだろう。3種類くらいあったけど、開けてみないと本当の色はわからないから、全部買った。
「葵ちゃん、水色の板チョコレートはないから、葵ちゃんは色々と気をつけてね。」
「薄々そんな気がしてました……気をつけます。」
家に帰り着いた。ピンクのチョコレートを3枚全部開けて、葵と相談して1番色味が近い物を選んだ。葵と長老の指示通りに、選んだピンクチョコレートを、適切な大きさに切っていく。そして、その上にピンク色の錠剤を9個、オレンジ色の錠剤を1個、足の棒は下から飛び出すように2本(1本折れてるけど)、手の棒は真ん中の方に適当に。全てのものをピンクチョコレートの上に置くと、いきなりピンク色に光り輝いた。眩しすぎて何も見えない。
「あ〜、生き返ったわ〜。なんやねんあのでっかいの。うちは信号が青だから渡ったんやで?こないやなかったら……って、なんやこれ!うち、チョコレート人じゃなくなっとるーーー!!!」
「茜……!よ……くはないね。ビスケット人の錠剤が混ざったのかな?」
「あれが1番チョコレート人の波動に近かったんじゃが、ビスケット人の波動じゃったか……」
夢で見た話の面白かった部分を掘り下げてみました。




