稲荷チャット
セイメイ「キツネ?」
エンノ「ソレはどこの誰なのだ?」
フシミ「……ウチのものとしか……」
チョコン
取り調べの座敷にフシミとその隣にちんちくりんな幼女のキュウビが座る。
部屋の奥のイスに座するバンコの前まで連れてこられた2人はセイメイとエンノにキュウビの身分、出会った成り行きなどを改められていた。
キュウビの全てを見透かしたバンコが笑い出す。
セイメイ「バンコ様、コヤツの正体、見破られましたか?笑っていてはわかりませぬぞ?!」
バンコ「何、おぬしら、わからぬか?」
エンノ「むむむ、この狐女の過去……霧がかっていて見えませぬ。」
バンコ「なら、見破れるまで精進せよ。」
セイメイとエンノは唸った。
エンノ「うーん、妖力からして、白狐クラスではあるのよなぁ。」
セイメイ「キョウシロウ。其奴にそそのかされて、魅了されたのではないのだな?」
フシミは答えに窮した。確かにそそのかされはした。
フシミ「し、しかし、この者に助けてもらえたのは事実でしょ?」
グゥゥ〜
その時、キュウビの腹の虫がなった。気勢を削がれたセイメイとエンノは一旦落ち着くために茶をすすった。
セイメイ「まぁ、アジ・ダカーハ共を撃退できたのは事実。」
エンノ「これからどうする?」
セイメイはバンコを見た。ここの全責任者はバンコであったからエンノが決めたり、セイメイがどうこう言うことではなかった。
フシミとキュウビを目を細めながら見つめるバンコがヒゲを撫でながら答える。
バンコ「まぁ、我らのゲントを奴等の好きにさせる道理はあるまいて。」『コヤツ等を使うか。』
フシミ「……」
バンコ「エンノ行者は発電施設、陰陽師セイメイは浄水施設の守りを固めよ。」
エンノ「お任せを。」
セイメイ「承知。」
フシミ「あのー、俺達、もう帰っていいですか?」
模擬戦に、変なやつらと戦ったり、取り調べを受けたり、フシミもキュウビもヘトヘトだった。
バンコ「キョウシロウは奴等、アジ・ダカーハが現れたときに直ぐに駆けつけられるようにせよ。」
フシミ&キュウビ「ええ?!」
バンコ「なんじゃ?それ相応の給料は出してやるぞ?」
エンノ「コヤツを信用されるのですか?!バンコ様!」
セイメイ「危険では?!……あぁ、狐女の身元を分かってのことでしたな。」
エンノとセイメイは2人を見やった。
バンコ「人手が足りん、断れば牢屋行きよ。どうする?キョウシロウよ。」
助けを求めるかのようにキュウビは小声でフシミに叫んだ。
キュウビ『おい!キョウシロウ!どうするのじゃ?!ワシはまた封印されたくないぞ!?』
フシミ『どうするったって……』「分かりました。謹んでお受け致します。」
フシミはバンコに土下座した。ソレに習ってキュウビも続いた。
コレにて一件落着。……では、終わらなかった。
ドタドタドタ!
???「セイちゃん!」
セイメイ「げ!母上!?」
ギュッ
もう40にもなるセイメイは非常に若々しく見える美しい母親の胸に抱きしめられた。
エンノ「葛の葉、何用か?そんなに慌てて!」
バンコ「心配ないて、お主の子ではないか。」
呆れるエンノとバンコをよそに、葛の葉はかわいい我が子の心配をした。
葛の葉「セイちゃん、ケガはない?」
セイメイ「ありませぬ!離されよ!母上!」
赤面したセイメイは人目を気にせずベタベタしてくる母親を、しかし、無下にはできぬと振りほどこうとはしなかった。
葛の葉「キョウシロウはんがやられたぁ聞いて、いそー」
葛の葉はようやく辺りを見渡して、フシミ達を見た。
フシミ「……こんにちは、ご無沙汰してます。おばさん。」
葛の葉「あら!?あらあら!なんや、ピンピンしてはるやないの!」
葛の葉はキュウビと目があった。
キュウビ(しーっ)
葛の葉「なんや!うちのとこの人もいはるわ!こりゃ、セイちゃんの無事も祝って、今日はセイちゃんの好きなんにしとこか!」
セイメイ「うぅ。」
エンノ「……まぁ、セイメイらは置いといて、キョウシロウ、スマホはあるか?」
フシミ「格安のプロバイダーのとこですが……」
エンノ「稲荷チャットを入れとけ。すぐ連絡がつくようにな。」
フシミ「はい、分かりました。」
ここは、アジ・ダカーハの拝殿。
アンリ「……というのが事の顛末でして。」
祭壇の前、玉座の前に立つ男が唸る。
???「タカッブを退けるとは……どう致します?シャイターン様?」
玉座の顔色の悪い男は口に手を当てて話した。
シャイターン「ゲントを牛耳るホクト天満宮。一筋縄ではイカなかったか……」
アンリ「強かったですよ、陰陽師は。」
シャイターン「式神憑依と幻術と言ったな?どうにか突破する方法、道具はないのか?アンリ。」
アンリ「難しいですねぇ……我が妻、ジャヒーを連れて行っても?彼女が何か思いついて発明してくれるかもです。」
よし、分かった、とシャイターンは頷いた。
シャイターン「イブリース。今度、送り込む怪人は見繕ったか?」
玉座の前に立つ長髪の男はしばし考えて答えた。
イブリース「千里眼グフロール辺りがよろしいかと。あ奴なら、陰陽師の幻術にもある程度、対応できるのではと思います。」
シャイターン「よろしい!次の目標はゲントの浄水施設!アンリはジャヒー、グフロールを連れて向かうのだ!」
アンリはお辞儀をすると後ろの長椅子席に座っていた双子の娘達を立たせた。
アンリ「……帰ろう。タルウィ、ザリチュ。」
タルウィ「……また、勝手に決めて。」
ザリチュ「お母さんに怒られる。」
アンリ「ハハハ、大丈夫。お父さん、頑丈だから……」
前髪の長いアンリは顔がよくわからない男だったが、明らかに青ざめていた。
三人は仲良く手をつないで拝殿を後にした。
夕刻。
自分の庵に戻ったフシミはご飯にがっつくキュウビを置いて先に寝てしまった。
フシミ「疲れたから、俺はもう寝る。風呂も明日はいる。」
キュウビはちゃぶ台の上に置かれていたスマホで稲荷チャットのアプリを開いた。操作方法は式神憑依のときにフシミの頭の記憶からコピー、自分にインストールしてたので大体知っていた。
キュウビ 久しぶり!
葛の葉 キュウビちゃん?封印解けはったん?
キュウビ ワシにかかれば難なくじゃ!
葛の葉 何年ぶりやろなぁ?
キュウビ「ぐ……」
キュウビは葛の葉、ゲント人のいけずなところを思い出した。しかし、同期、同じ師匠のもとで修行をした葛の葉とは仲が良かった。
キュウビ しかし、葛の葉は結婚したのか?
葛の葉 せやねん!かわええやろ?うちのコ!
キュウビ そうじゃが、人ではないか?
葛の葉 恋愛に種族なんか関係あらへんわぁ。
キュウビ「ふーん。そんなもんなのか?」
その時、フシミが寝返りをした。
ドキッ
キュウビ『ま、まぁ悪いことはしとらんぞ?通信量かからんし、コレ。』
キュウビ ものは相談なんじゃが、その、好きな人を
振り向かせるのはどうするんじゃ?
葛の葉 何?何?キュウビちゃんも好きな人おるん?
キュウビ ま、まあな!
葛の葉 あら〜!ときめいちゃう!
キュウビ「……」(チラッ)
フシミ(グー、グー)
キュウビ して、葛の葉はどうしたのじゃ?
葛の葉 いろいろ。その人の好きな食べ物調べたり
好きな香水見つけたり?
キュウビ「はー、匂いかぁ。」
今後は、アジ・ダカーハとの戦いにおいて給料は出ると言うから香水も買えなくはないのか?
キュウビ『そんなもんより、メシに使いたいのう。』
キュウビ あい、わかった。参考にしてみよう。
葛の葉 がんばるんぇ!キュウビちゃんなら
いい人、捕まるよって!
キュウビ したらな。
葛の葉 今日は、ありがとぉ、ほな、また今度〜。
キュウビはスマホをちゃぶ台に片付けるとフシミの横に潜った。
キュウビ「おやすみ、キョウシロウ。」




