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【Epilogue】
「潤」
呼ばれるのに応えて腕の中から少し気恥ずかしそうな、しかし明るい笑みを向けて来る彼に、陽一郎は言葉にできない愛しさを覚えた。涙の後の残る、その頬にも。
ずっと、ずっと遠くから近くから黙って見つめていた、好きで堪らなかった相手が、陽一郎を好きだと言って笑い掛けてくれる。
いまはもう恋人になった、陽一郎の想い人が。
──藤沢には、やっぱり少し申し訳ないな。
陽一郎は、決して口に出す気はないが心のうちではそんな風に思っていた。
だからといって、あり得ないけれど万が一藤沢に『返せ』と言われても、陽一郎は潤を絶対に手放す気はない。
しかし、これは陽一郎の心の中だけの問題だ。
恋人には決して悟らせる気はなかった。
陽一郎は潤を抱き締めながら、恵太に詫びていた己の思考に蓋をする。
~END~
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