表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明  作者: りん
1/11

【Prologue】

「俺たち、もう無理じゃない?」

 (じゅん)は、今この瞬間まで恋人だった相手にそう切り出した。


恵太(けいた)さんはさ、いま自分のことしか考えられてないでしょ? 俺なんかいてもいなくてもどうでもいいって感じでさぁ。隣にいても、俺のことなんか目にも入ってないんじゃないの?」

「……そう、だな」

「そんな人と一緒に居たって、俺も全然楽しくないんだよねー。だからもう終わりにしようよ。恵太さんだってその方がいいでしょ?」

「確かに、な。今の俺は、悪いけどにーなのことまで気が回らない。にーなの言う通りだよ」

 潤が冷たく告げた別れを、彼は何の抵抗も見せずに承諾する。


「にーな。ホントに今までありがとうな」

 それでも優しい声で潤に告げて来た。

 いつもとても優しくて。

 ……優し過ぎたのが大元の原因なのかもしれない。もっと我儘を言ってくれれば。

 そう感じつつも、結局終着点は何ら変わらなかった、と容易に想像がついてしまう。


 潤の姓である『新名(にいな)』を、『にーな』と聞こえる少し舌足らずの独特のトーンで呼ぶ、──呼んでいた恋人。


「うん」

 恵太の最後の礼の言葉におざなりに頷くだけで応えると、潤は即座に彼に背中を向けて歩き出す。

 どうにか平静を保っていられるうちに、彼の視界から姿を消してしまいたかった。

 潤む瞳も、涙声も、決して悟らせないように。

 ただ勝手な子どもだと思っていて欲しかった。何の憂いもなく、彼が潤を、……元恋人(・・・)を忘れてしまえるように。

 さよなら、恵太さん。

 ありがとう。今まで楽しかった。

 一緒に居られて嬉しかった。


 ──大好き。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ