なんて呼ばれてるの?
「あーあ、スカート汚れちゃったじゃん」
そう言いながら、スカートをパンパンと叩く彼女を俺はただ呆然と見ているしかなった。
いやどうにかするって、もっと話し合いとかそういうのだと思うだろ…
そしたら、まさかの暴力全開の実力行使なんて。
確かに俺がリンチに合うのから救ってくれたのは凄く有り難いが、俺は本能的に彼女にちょっとした恐怖心を抱いていた。
「てめぇらいつまでそこに寝転がってんだよ!とっとと失せろ!」
北里はあのクラス中から愛される天真爛漫キャラとは思えない程のドスの聞いた声を男子生徒達に聞かせる。
そして、それを聞いた男子生徒達は身体の何処かしらを抑えながらそそくさと退散して行った。
「これで、私たちの勝負を邪魔するやつは居なくなったね。ねっ、華蓮」
その問いかけに、「そうだね」と返して俺の隣のもの影からひょっこりと顔を出した。
「でも、暴力に訴えかけるのはあんまり得策だったとは言えないと思うけど」
「えーでも、これが1番早いし楽じゃん。ていうか、そんなこと言ってるけど、華蓮だってなんかしら行動起こそうとしてここに来たんじゃないの?」
「それは…でも、私はもっと平和的に解決しようと…」
「ふーんどうだか。まぁ、どうでもいいや!そんな事より、東浜くん!今日も一緒に帰らない?」
ピリッとした空気を醸し出していた2人だが、その発端となった北里がいきなり言葉の矛先を俺に向けてきた。
「うっうん、いいよ」
「やったー!私、鞄とって来るから、先に校門行ってて」
そう言って北里は、さっきまでやっていた事を忘れたかのように笑顔を浮かべて、教室へと向かった。
「驚きましたか?理絵って実は私より大胆な所あるんですよ」
いつの間にか俺の隣に来ていた、西宮さんがそんな事を言ってきた。
いや、確かに北里のこの行動は大胆だけど、君が昨日やった初対面の男にセックスを申し込んで来たのも同じぐらい大胆だぞ。
「まっまぁ…そうだね」
「じゃあ、行きましょうか。あんな事が行われてた所に長居もしたくないし」
「うっうん、行こうか」
やっぱり西宮さんも普通よりも肝が座っている気がする。
だって、あんな現場みたら普通の生徒は大声上げて走り去るぐらいの恐怖はあったよ。
それなのに、顔色ひとつ変えないし…
「どうしたんですか?ほら、行きますよ」
「あぁ、うん」
俺は適当な返事を返して、少し前を行く西宮さんを追いかけながら校門へと向かった。
◇◆
「あっそうだ!今日、まだ何も東浜くんの初めて貰ってない!」
下校中、思い出したかのように北里がそう叫んだ。
「いやいや、そんな初めて毎日貰うもんじゃなくない?」
「えーでも、なんか欲しいじゃん。ねっ、華蓮も思うでしょ?」
「まぁ、貰えるもんは貰って置きたいよね」
該当の試供品配りを貰う人が一番多用するような事を言いながら、西宮さんは顎に指を押し付ける。
「あっいいの思いついた!」
「なに?」
「ねぇねぇ東浜くん、いつもさ女の子になんて呼ばれてる?」
「名前ってこと?」
「そうそう」
「うーん、話す時は東浜くんかな」
はい、嘘吐きました、すみません。
高校に入ってから、昨日まで北里以外の女子と話したことありませんでした。
だから、必然的に俺の名前を読んだ事があるのは北里だけなわけだから、今まで呼ばれたことのある名前は「東浜くん」だけになるのだ。
「そうなんだ、じゃあさ今日から涼介くんって呼んでいい?」
「うん、いいよ」
「やった、じゃあ私は高校で初めて、涼介くんを下の名前で読んだ女の子ってことだね!」
今にも飛び跳ねそうな勢いで、北里が喜ぶ。
いや、下の名前で呼べるだけでそんなに?
まぁ、俺の初めてを貰ったって言う方で嬉しいのか。
「えっ理絵だけずるいよ!」
「早いもん勝ちだもんねー」
「いや、別にそんな下の名前呼ぶぐらいなら、西宮さんがいいなら、全然呼んでもらって構わないよ」
「ほんとですか?じゃあ…」
「いいじゃん、まぁ私の二番煎じだけど」
だから、北里はなんでそこで煽る。
西宮さん見てみろ、その発言聞いて右手でめっちゃ握りこぶし握ってるじゃん。
「分かりました…それは二番煎じでもいいです!その代わり、私の事を華蓮って呼んで下さい!」
「えっ下の名前で…?」
「華蓮それは…!」
「そうです!ダメ…ですか?」
そんな上目遣いで声色変えるのはズルいだろ。
下の名前で呼ぶことは全然良いんだけど、なんていうかそれを他の男子に聞かれたら…また果たし状が届きそうな気がする。
まぁ、でも流石に北里がボコボコにしてたしそんな事はないか…
「わっ分かった」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
「あっじゃあ、私も二番煎じでいいから下の名前で呼んでー」
「北里もか…分かったよ」
「よっしゃー」
「じゃあ早速呼んで見てください…涼介くん」
本当にさ、これ素なのか?
なんか、あざとくやってるようにも見えてきてしまうぞ。
「…華蓮」
「ふふ、嬉しいです涼介くん」
「じゃあ私も涼介くん!」
「すー、理絵」
「はーい、ありがとう」
名前を呼ぶだけなのに何をこんなにドキドキしてるんだ全く、東浜 涼介という男は…
「結局、2人とも1個ずつ増えて変わらずか」
「まぁ仕方ないよ、だって相手だけ初めてをもらうなんて我慢できないもん」
「じゃあ、お互いが居ない時も事後報告したらOKってことにしようか」
「うん、そうしよ」
そう言って、当事者を交えず2人だけで勝手なルールを追加してしまった。
いや、それって俺は2人居なくても、どっちか居る時は気が抜けないってことだよ。
別に警戒しなくてもいいんだけど、しないと尊過ぎて心臓破裂するからね。
「じゃっまた明日」
「うん、また」
「さようなら」
そうこう言ってる内にどうやら、別れる十字路に着いたようで、挨拶をした後3人がお互い別々の道へ向かっていった。
そして、別れて数分が経った頃、後ろのからカツカツという音が近づいてくるのが聞こえた。
「待って!涼介くん」
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現在の戦績
北里:西宮
2 : 2




