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間接キス

うん、意味が分からない。

なんか、学校一の美少女にいきなりセックスのお誘いされちゃってるよ。


「ちょっと、華蓮!なんで、そんな事言い出すの」


「だって…理絵が煽ってくるから…!キスより上の事ってもう…これしかないでしょ!」


確かにこれは、北里が煽ったのが悪いな。

だが、今そんな事はどうでも良くて、俺はこの状況を回避する方法を考えないといけない。


「にっ西宮さん、とりあえず落ち着こうか」


「私は落ち着いてます!ほらだから、早く!」


「いや、全然落ち着いてないから…」


「そうよ、とりあえず深呼吸しなよ」


「嫌だ、絶対する!理絵はキスしたから、そうやって言えるんだもん!」


ダメだ、5歳の甥っ子以上に聞き分けが無くなってる。


「ちょっと待って!西宮さん、本当に1回深呼吸して、本当に多分気の迷いだから!はい、スーハースーハー」


「スーハースーハー」


俺が割と強めに言ったのが功を奏したのか、俺の言葉に従って、西宮さんは大きく深呼吸を2回した。

よかった、やっぱり一時の気の迷いだったんだ。


「どう、少し収まった?」


「うん、ごめんなさい…東浜くん。君の気持ちも考えないで…」


今度はさっきとは打って変わって、聞き取れるか分からないぐらいの弱々しい声で俺に謝罪の気持ちを向けてきた。


「いいんだよ」


「でも、やっぱり私だけ何もないのは許せない…」


「えっ?」


「は?」


そう言うと西宮さんは、スクールバッグの中から小さめの水筒を取り出して、一口口を付けた。

そして、彼女は水筒の蓋を閉める事無く、そのまま俺の方に突き出す。


「これ、東浜くんも一口飲んで!」


「えっでも…」


「間接キス、した事ある?」


「いや、ないけど…」


「じゃあ、私もひとつ東浜くんの初めて貰ったね」


そう言いながら、彼女はにっこりと笑っている。

これは、どうすればいいんだ?

受け取るべきなのか、それともしれっと拒否するべきなのか。


助けを求めるために無意識に北里の方を向いたが、目が全く合わない。

恐らく、自分はキスしたからその程度は許容してくれということなのかもしれないな。

でも、さっきのキスが異常だっただけで間接キスも一般男子高校生の俺からすると許容範囲超えてるんだけどな…。


いや、だが東浜 涼介、ここは男になれ!

ここで、受け取らないのは男が廃れるぞ!

そう自分に言い聞かせながら、俺は恐る恐る水筒を受け取り、口元に運んだ。

恐らく、麦茶なんだろうが緊張と色々な感情が混ざり過ぎて、殆ど味を感じられなかった。


「あっありがとう」


「やった!間接キスの初めて貰った!理絵、これでお互いひとつずつね」


「そうね、じゃあ今日はこれで終わり。また明日から、勝負ね」


「えぇ」


えっちょっと待って?勝負…なんの…?


「あの、勝負っていうのは…」


「決まってるでしょ、私達のどっちが多く、東浜くんから初めてを奪えるか」


「そんな勝手な…というか、それ以前にひとつ聞いておきたいことがあるんだけど…」


「なに?」


「あの、2人って俺のことが…」


「「好き」」


あっ、1音も遅れることなく見事に揃ってますね。

この数分で薄々気付いてはいたけど、やっぱり俺の事が学校で1番目の2番目の美少女が好きなんて全く理解が出来ない。

だって、北里は隣の席だからまだ分かるとしても、西宮さんとは同じクラスってこと以外接点ないからね。

まぁ、でもここで好きになった理由とか聞くと俺が色々と過多でぶっ倒れそうなので聞かない事にしておく。


「そうなんだ…」


「へー、どうして好きになったとか聞かないんだ」


北里は俺の思考が読めるのか?

そのうえで、俺の痛い所を着いてきてるってこと?


「いや、それ今聞くと俺が火吹いてぶっ倒れそうだから…」


「なるほどね…あっそうだ、華蓮」


「なに?」


「セックスを誘うのだけは禁止ね、それはどっちかが付き合ったら、初めてを貰うってことで」


「うん、分かったわ…」


「あー今の言い方だと東浜くんは私達のどっちかと付き合わなきゃいけない、みたいになってるけど、全然違う子選んで貰って大丈夫だからね」


「うっうん」


とりあえず、返事はしておいてが、正直空返事に近かった。

いや、違う子選んでいいって言うけど、学校で1番目と2番目の美少女に迫られて、それ以外の女子を選ぶって中々の至難の業だと思うぞ。


「さてと、帰りますか!」


そう言って、北里はぐーと身体を伸ばしてスクールバッグを取った。


「あっそうだ、今日は3人で帰ろうよ」


「あっいいねー」


「東浜くんもいいですか…?」


西宮さんは恐る恐る聞いてきたが、正直この2人の誘うを断る理由がない。

まぁ理由があるとすれば、この2人と並んで歩くと俺が浮くってことだが、下校時間から大分経ってるし、大して人に見られることもないだろう。


「うん、いいよ」


「ほんとですか?やったっ」


俺の返事を受けて、西宮さんは腰の当たりで小さくガッツポーズをした。

こういう所も可愛らしいんだよなぁ。


「じゃあ、行きますか」


「そうね」


「うん」


全員、荷物を持って3人並んで下駄箱へと向かった。

なんか、西宮さんとか特に高潔で近付き難いイメージあったけど、こうやって見ると普通の同学年の女子高生なんだなと感じる。

なんというか、上手くやって行けそうな気がする。


◇◆


と、昨日はそう思っていた。

だが、現実はそんなに甘々じゃないらしい。

翌日、俺が登校し靴箱を開けると、男からのラブレター、つまり果たし状が5枚も入っていた。


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