第7話 足湯
目が覚めると、親から何件か不在着信が来ていた。
一応、無事である事は伝えておこうとLIMEで『旅をしています、探さないでください』とだけ送る。
その数分後にまたスマホが震えたが切った。
今話してもブチ切れられるのは必須。
だったら後で纏めてブチ切れられようと、後のことは未来の自分に任せることにした。
「なんだろあれ」
ホテルに荷物を預けて外に出ると、熱海駅前広場に見慣れない施設を発見する。
「足湯じゃない?」
「おお、あれが噂の!」
言葉の通り、足だけ浸けて楽しむ温泉だ。
畳5畳分くらいの広さの溝に、ほかほかと温かそうなお湯が張られている。
両脇には木の板が設置されていて、そこに座って足を浸ける仕様のようだ。
「へぇ、家康の湯って言うのね。徳川家康が訪れて400周年を記念して作られた施設、なるほど……効能は神経痛、関節痛、冷え性、疲労回復……」
勉強熱心な七瀬が、案内板を熟読しながらふむふむと頷いている。
暗記テストの範囲でも無いのに凄いな。
「よし、入るか!」
「脳みそ回復の効能はないわよ?」
「いやそのくだりまだ続いてたんかい」
前屈みになって、スニーカーと、くるぶし丈のアンクルソックスを脱ぐ七瀬。
その動作がなんとも扇情的で、思わず目が奪われてしまう。
ちなみに今日の七瀬は制服ではなく私服だ。
清潔感のある白のTシャツにスキニーデニム、秋らしく落ち着いたブラウンカラーのアウターを羽織っている。
小物入れだろうか、肩にはショルダーバッグをかけていた。
動きやすさを重視しつつも、高身長スタイルを活かしたスタイリッシュなファッションだ。
スタバのコーヒーとか片手に持ってそう。
「何よ?」
「や、別に?」
何食わぬ顔で、俺も裸足になりちゃぽんと湯に足をつけた。
「おお……」
足先を包むじんわりとした温もりに声が漏れる。
少々熱めの湯加減が痛気持ちいい。
深さは足首くらいまであった。
足先から、上半身に少しずつ熱が上ってくる感覚。
足しか浸けていないのに、全身がぽかぽかして心地よかった。
「……最高だ」
来て良かった。
学校では授業が行われている時間に、遠く離れた熱海の地で足湯を堪能しているという背徳感も堪らない。
「はぅ……」
色っぽい声がして右隣を見る。
七瀬が緩み切った表情でぽーっとしていた。
鋭い双眸は瞼が下り、デフォルトがへの字の口もだらんと緩みきっている。
「堪能しているようで何より」
「は、はあっ?」
びくっと七瀬の肩が跳ねた。ばしゃっと水飛沫が跳ねる。
「べ、別に堪能とかしてないから! 足だけの温泉とか、こんなの全然大したことない!」
「じゃあ、もう上がる?」
「……あと10分くらい入っていたら、良さがわかるかもしれないわ」
ふいっと目を逸らし、頬を赤らめて言う七瀬。
何その可愛い反応。
「お、おっけい、あと10分くらいね」
そのまま30分くらい経った。
七瀬は大地のエネルギー的なものを享受しているのか。
目を閉じて微動だにしない。
大丈夫? 死んでない?
思った、その時……。
「大丈夫……絶対にうまくいく……あーしは大丈夫……」
左隣から声がして、心臓がヒヤリとした。
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