セフィリスとエミリアと戦闘訓練を行う
「す、すごい……力が溢れてきます。これが弓聖の力なのですか」
セフィリスは弓を持っていた。アルテミスの弓。伝説的な弓の武器だ。様々な矢を放つ事ができる。
「そうだ。その通りだ。これが俺の職業貸与者としての能力だ」
「ありがとうございます。トール様。これで私も闘えるのですね」
「簡単に言わない方がいい。相手はあの邪神だ。職業や力なんてもの、スキルもそうだ。与えられるだけでは不十分なんだ。使いこなせなければならない。武器っていうのは与えられるだけではなく、使っていかなければならないんだ」
俺は諭す。
「使っていかなければならない」
「そうだ。邪神は今、本来の力を取り戻しているそうだ。だから俺達もそれに対する策を練っていかなければならない。つまりは必要なのは訓練だ」
「訓練……」
「……でもトール、どうやってそんな訓練をするというの?」
エミリアが聞いてくる。
「本来ならできない事だが俺には職業貸与者としての能力がある。こいつを利用すれば本番さながらの訓練が可能だ」
俺は自分で自分に職業を貸与する。
「自己貸与」
職業として貸与するのは『ものまね士』だ。俺はスタッフを持った魔導士風の職業になる。
「トール、なにその魔法使いみたいな職業は、トールは今度は何になったの?」
「これは『ものまね士』だ」
「ものまね士? なにその職業」
「要するに擬態ができる職業だな。能力そのままをトレースして擬態するのは不可能だが、見た事のある相手に擬態する事ができる」
俺は実際、邪神ネメシスと交戦したのだから、実際の目にした相手という条件は問題なくクリアしている。
「だから俺はこの『ものまね士』で邪神ネメシスを擬態する。俺が邪神ネメシスになるんだ」
「トールってそんな事もできるの!? 何でもできちゃうのね!?」
エミリアが目を輝かせる。
「何でもじゃない。できる事しかできない。それじゃあ、行くぞ」
ものまね士となった俺はそのスキルを発動する。俺はものまねをした。真似たのは邪神ネメシスの姿だ。
「よし……! 成功したぞっ!」
「うーん……トールってわかってても実際にその姿を目の当たりにすると怖いわね……。思わず身構えてしまう」
「私もです。実際目の前に我がエルフ国を襲った相手とそっくりの相手がいると、自然と緊張してしまいます」
二人は怯んでいた。
「そんな事よりさっさと始めるぞっ! 短期間でお前達は強くならなきゃなんだからなっ!」
「「はい!」」
こうして俺達は邪神との闘いに向けて戦闘訓練を行っていく事となる。




