苦労してます
「エゴーリ兄様!」
ノックせずに扉を壊さんばかりに開け放ち、飛び込んで来る我が妹。
「ふぅ、また何かやらかしたのか?」
「ため息とは、酷くないですか?
エゴーリ兄様」
「お前が、俺を頼って来たのは、何回目だと思っている」
「え〜と?
7〜9回ぐらいですか?」
その返答に、俺は項垂れた。
こめかみを手で解しながら、
「47回目だ」
キッパリと答える。
すると、我が妹は、
「相変わらず、生真面目ですね〜。
そんなことではモテませんよ」
と軽く言い返してくる。
「関係あるか。
それで、どうしたのだ?」
いつものことなので、軽く流して本題を聞く。
「そうでした、大変です!
父が、派手に暴れて都市が半分消えたんです!」
それを聞いた瞬間、俺は、
(ああ今回は、妹では無く父の方か)
と考えた。
薄れる意識の中で。
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さて、俺はある秘密がある。
それは異世界の知識が僅かにあると言うことだ。
それがどうしたと言うかもしれないが、馬鹿にはできない。
何故なら、我が魔生に置いて大いに役立っているからだ。
俺は、魔界の貴族として生を受けた。
それも侯爵家の次男坊としてだ。
異世界の知識的に言うなら勝ち組と言えるかもしれないが、現実は違う。
魔界は、1に力、2に力、3、4に力、5に力の弱肉強食なのである。
治安部隊も無ければ、法律も存在しない極めて野蛮な世界だ。
これでもマシになったらしい。
今から、200年前はまさしく世紀末だったらしい。
まあ、魔界の話はこれぐらいにして、俺の話に戻るが、我が実家は野蛮な魔界でも野蛮人と言われるほどの家である。
軽く我が家族の説明としてまず、父は同じ侯爵家に喧嘩を売っては都市を吹き飛ばし、兄は少しでも気なる者に喧嘩を売っては町を吹き飛ばし、妹は気に入らない事があれば村を吹き飛ばすのだ。
普通なのは母と俺だけ。
そんな家族なので、もちろん3人は脳筋であり、政務なにそれ食べ物かという始末である。
そこで、出番なのが母と俺の2人である、ある時は金、ある時は権力、ある時は恐怖でそれらを無いことにしてきたのだ。
その中で、異世界の知識はとても役に立ってくれたのだ。
神に感謝したいが、そもそもこんな苦労をするのは神のせいだと思い直し、感謝しない。
さて、現実逃避はこれぐらいにしてどうするか母と相談しなければいけない。
俺は妹の雑すぎる説明を聞き流しながら、信頼できる部下に、精密な情報を集めるように指示を出しながら歩き出した。