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詐欺は誰の身にも起こりうる

 的確に相手の大事な書類のありかを見つけ、そして、その大事な書類の中で鍵となりうるものをすぐさま見つけられるフォルスにニーナは感嘆していた。


「おやおや。デュナン伯爵様は詐欺に遭っていたようだよ。」


「詐欺ですって?音楽大学の夢が詐欺そのものですの?」


 フォルスは当り前のように年端のいかない少女に書類を手渡し、ニーナはそれを受け取りながら相棒のように扱ってくれるととても嬉しくなっていた。

 しかし手渡された書類を見たところで、彼女に詐欺だとわかるわけは無い。


「どこが詐欺ですの?書式も正式なもので、ええ、これは正当な土地権利証ではございませんの?」


「九歳児が土地権利証の書式を正確に知っている方が詐欺と思えるが、ねえ君、この土地は本当にこの元持ち主のものだろうか。」


「え?」


「これは他人の土地を自分の土地だって偽っての詐欺だと思うよ。」


「まあ!では、偽られた人は土地を取られてしまうって事ですの?そして、お兄様。あなたはどうしてこの持ち主が違う人だってご存じなの?」


 フォルスはニーナの問いにクスクスっと笑うと、ラバーナの地図を引っ張り出して広げて見せた。


「大学を作るには広い敷地が必要だ。ただし、この場所は元は大きな土地だったものが細分化されて所有者が細かくなっているという所なんだ。そして、君に渡したその証書だけは日付が一番最近で、そして、敷地面積で考えれば同じ広さの物件と比べれば買い取り金額も高い。売り渋った人間からようやく買い取れた、と見る事も出来るね。」


 ニーナは書かれている住所をその地図に当て嵌めて、フォルスの言う通りだと理解した。


「伯爵さまはこの一帯が欲しいとご所望で、でも、売り渋りか所有者に会えなくて手に入らなかった。そこで詐欺師は売り渋られた最後の土地の地主に成り代わって、お金だけ奪った、という事なのかしら。」


「そう。」


「でも、よくも伯爵様は気がつかなかったものをお兄様は気付いたものね。こんなにたくさんの同じような権利証の中で見つけるなんて、驚きだわ!」


「うん。ここ、リーブスがリタイヤした後に住む予定で買った家だからね。」


「まあ!詐欺師さんの今後が怖いわね。」


「だね。」


 ガチャリ。


「お前らは何をしてる。ほら、お前らには分からない物だろ?その書類束を俺に渡せ。」


 ニーナとフォルスは同時に顔を上げ、彼等に小型拳銃を向けている男を見返した。

 殴られたのか右目の周りは青くなっているが、そのおかげで普段よりも地に足がついている男に見えるのは不思議だとニーナは考えた。


「オーギュストさん。この書類はあなたにこそ不要物だと思いますわ。」


 フォルスは、こらこら、と笑い声をあげた。

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