幼女と青年の悪巧み?
「あなた方は、いいえ、ニーナは何をするつもりなの?ニーナは子供でしょう。」
ニーナは幼い顔をシンディに向けた。
誰もが九歳以下の子供にしか見えない顔だ。
シンディはそんな表情も出来るニーナにぞっと背筋を凍らせたが、子供に何かをさせるつもりだったはずのフィッツの方が壊れた。
「うわ!可愛い!ああ、君はいつもこのままでいて!」
まるで迷子になった自分の娘を見つけたばかりの父親のようにして、彼はしゃがみ込むやニーナをぎゅうと抱きしめて騒ぎ出したのだ。
「もう。フィッツったら。わたくしはいつものニーナですわ。あなたはおフザケが過ぎますわよ。」
「ああ。ニーナだ。さっきのあどけなく笑った九歳児はどこに行ったのだろう。僕はあの可愛い赤ちゃんを抱き締めたいというのに。」
ニーナは自分を抱き締めていたフィッツを両手で力いっぱいに突き飛ばした。
フィッツはしゃがんでいたので、突き飛ばされたそのまま尻餅をついた。
「ひどい。」
「ひどくありません。幼い子供が抱きたいならご自分の子供を作ればよろしいでしょう。わたくしはこれがわたくしなのです。」
ニーナは鼻をフンと鳴らすと、すたすたとホテルのエントランスへと一人で入って行ってしまった。
「ああ、私達も早くあの子を追いかけなければ!」
「いや。あの子が目的地に行くまで少し待とう。本気で怒らせちゃったから約束通りの行動を取ってくれるか不安だけれどね。」
「あなたは本気であの小さな子供に何かをさせる気なの?」
フィッツは尻餅をついたままでシンディを仰ぎ見た。
大人びた表情しかしないニーナと対照的に、フィッツの方が悪戯を期待する子供のような表情をしていた。
「僕の采配じゃないよ。ニーナが神と崇める中将閣下様の作戦さ。三か月前までは野獣と呼ばれた淫獣があの子にはついている。怪我をする事は無いでしょう。」
「淫獣?それこそ危険じゃないの?」
「ニーナに対しては父性愛しかないから大丈夫。ニーナのお姉さんには朝から晩まで邪な気持ちと行動しか取れないけれどね。」
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だって。君とニーナは僕が選んだ戦闘服を着ているんだからね。」
フィッツはシンディに手を差しだした。
「何のことやら。」
シンディは大きく溜息を吐きながらその手を掴み、大きすぎる子供を地面から立たせてやった。




