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顔を知らない仲間だから言えることってあるよね

ゲームパートです。

そろそろ、ちゃんとジャンルの内容になっていく、はず、です。

Moco(もこ)〉『わーお、すごいねー』


 俺を含めギルドメンバーたちが皆言葉を無くしてると、オープンチャットにパーティメンバー外のキャラクターのログが現れた。


〈Moco〉『動画みたよー。ぜろが銃手に入れたっていうから、見に来たんだけど、ちょうどいいタイミングだったみたいねー』

〈Daikon〉『あら、もこさんおひさしぶりです』

〈Zero〉『おひさしぶりっす。てか、わざわざソロでこんなとこまで来なくても、メッセくれりゃ見せにいったっすよ』

〈Moco〉『えー、たまには顔を合わせて会いたいじゃん?』


 顔を合わせてって、ゲーム内だろうが、というツッコミは野暮ってもんだ。これはきっとMMO経験者にしか分からない感覚だろうな。

 オープンチャットは誰にでも見えるログなわけだが、今現れた〈Moco〉こともこさんは、俺とだいが数年前まで所属していた廃……コンテンツ攻略ギルド【Mocomococlubもこもこくらぶ】のギルドリーダーだ。

 見た目は桃色の髪の小人の女の子キャラクターのくせに、他の追随を許さないレベルの、このゲーム内最強の刀使いでもある。もちろんスキルはキャップに至り、俺が一昨日手に入れた銃に相当する刀も入手済み。さらに刀以外のスキルも大半が250を超えているという、もうまさに()()だ。


〈Pyonkichi〉『ちょちょちょ、え、なに、ぜろやんとだい、もこさんと知り合いなん!?』

〈Zero〉『あー、まぁ』

〈Daikon〉『俺ら昔、もこさんとこにいたんだよね、言ってなかったっけ?』

〈Pyonkichi〉『初めて聞いたわ!』

〈Pyonkichi〉『お前らの強さそういうことだったのか!』


 このゲーム内でもトップクラスに有名なプレイヤーに話しかけられことに驚いたのか、ぴょんがパーティチャットで訴えてくる。

 たしかにぴょんはまだ初めて3年くらいだから、俺らが【Mocomococlub】いたことを知らないのも当然か。


〈Moco〉『るっちゃんから聞いたけど、今のスキル当てるのって相当大変なんでしょ?』

〈Daikon〉『るっちゃん?』

〈Moco〉『あ、Luciano(ルチアーノ)のこと』

〈Zero〉『うへ、ルチアーノさんのことそんな風に呼べないっすよ』


 〈Luciano〉とは【Mocomococlub】と競い合う、最強ギルド【Vinchitore(ヴィンチトーレ)】のギルドリーダーだ。彼のギルドは攻略サイトに大量の情報を提供しているし、ある程度の期間LAをプレイしていれば、彼の名前は黙っていても知ることになる、それほどの人物である。

 それをるっちゃんと呼べるなど、双璧と言われるギルドのリーダーであるもこさん以外不可能だろう。

 ぴょんなどもう出てくる名前に驚きすぎてさっきからパーティチャットで喚き放題だ。


〈Moco〉『二人はそうでも、じゃっくんなら別に呼べるんじゃない?』

〈Jack〉『気づかれてたかーーーー』


 ここまでずっと会話に入ってきていなかったジャックが、話題を振られたことでようやく話しだす。

 ジャックも知り合いかよ! とぴょんが喚いているのは言うまでもない。


〈Jack〉『まぁ、俺はるっさんって呼んでましたけど……』

〈Moco〉『今でもたまにコンテンツ手伝ってるんでしょ? たまにはうちも手伝ってほしいというか、サポーター(メイス使い)の何たるかをメンバーに教えてあげてほしいわー』

〈Jack〉『何いってんすか、今のメンバーでも十分でしょうに^^;』


 基本的に語尾を「ーーーー」と伸ばす癖のあるジャックが普通にしゃべっているのも意外だったが、一緒のギルドにいたことがないのにその腕前が認められているジャックに、正直俺は驚いていた。

 だがもこさんが称賛している通り、たしかにジャックは上手い。装備ももちろんいいのだが、それ以上に味方がどう動くか、敵がどう動くかを把握しているようなプレイ技術は本当に尊敬に値する。

 正直初めて【Teachers】で一緒にプレイしたときは、流石元【Vinchitore】と感動したものだ。


〈Daikon〉『引き抜きはやめてくださーい』

〈Moco〉『引き抜きなんてしてないわよー。むしろ私も【Teachers】にいれてほしいくらい。転職しようかしら』

〈Jack〉『冗談はやめてくださいよw』

〈Moco〉『どうかしらね~。あ、そうだぜろ』

〈Zero〉『なんすか?』

〈Moco〉『るっちゃんとこでもその銃持ちが一人いるんだけど、誰だと思うー?』

〈Zero〉『……そんな分かり切ったこと聞くのはやめてください』

〈Moco〉『ふふ、でも()()()はスキル見せてくれないし。きっとネタにしたがってるから、そのうち向こうから口止めの連絡あるんじゃない?』

〈Zero〉『そんなに手に入れてる人少ないんですか?』

〈Moco〉『そうねー。私が知る限り、二人目かな。そもそもあのコンテンツでガンナー(銃使い)いれて編成しようって発想にならないわよ普通』

〈Moco〉『まず撃破までいったギルドも、一昨日までは3つしかなかったんだし』

〈Jack〉『もこさんとこと、るっさんとこと、あとはどこすか?』

〈Moco〉『【The()】って知ってる?』

〈Daikon〉『聞いたことないですね』

〈Zero〉『誰がいるとこですか?』

〈Moco〉『おしえなーい』

〈Jack〉『え、ここまできて!?』

〈Moco〉『じゃっくんがうち手伝ってくれたら教えてあげるよ?』

〈Jack〉『自分でしらべまーーーーす』

〈Moco〉『つれないなぁ』

〈Moco〉『っと、ギルドメンバーから呼ばれたからそろそろ戻るねー』

〈Moco〉『狩りの邪魔してごめんね、またね~』


 神出鬼没に現れたもこさんは、自分の言いたいことを言うや否やあっという間に転移魔法で帰っていった。

 こうなるとオープンチャットに残ったもこさんの発言ログだけが、彼女がここにいた証である。

 さて、じゃあ気を取り直して狩りを――


〈Daikon〉『なあ、あの子って誰?』

〈Pyonkichi〉『それ俺も気になった!』

〈Jack〉『俺も俺もーーーー』

〈Zero〉『え』


 再開しようと思ったのだが、パーティチャットが、もこさんが言った“あの子”が誰か、という話題で染まってしまう。

 うーん、これは正直、あまり話したいものではないのだが……。


〈Zero〉『ジャックは知ってるだろ?』

〈Jack〉『バレたかーーーーwでも、なんでゼロやん知り合いなの??』

〈Pyonkichi〉『おい誰のことだよ!』

〈Daikon〉『【Vinchitore】のガンナーってことだよな?』

〈Zero〉『まぁ、そうだな』

〈Daikon〉『ってことは、Cecil(セシル)?』

〈Jack〉『だろうねーーーー』

〈Pyonkichi〉『え! セシルって、あのセシル!?』

〈Jack〉『だろうねーーーー』

〈Daikon〉『だとしてもなんでもこさん、わざわざあの子なんて言い方すんの?』

〈Pyonkichi〉『おいおい、ゼロやんセシルとも知り合いなわけ!?』

〈Jack〉『たしかにーーーーそういう結論なるよね!!』

〈Pyonkichi〉『そこんとこどうなん!?』

〈Zero〉『あー、うーん、まぁ』


 この話題は正直あまり乗り気じゃないんだが、セシルこと〈Cecil〉とは、【Vinchitore】の中でもリーダーの〈Luciano〉並に、いや、それ以上に名の知れたLAプレイヤーだ。

 なぜならLAプレイヤー以外でも、彼女を知る人は多いのだから。


 セシルは猫耳獣人の女キャラを使う、【Vinchitore】の幹部でもあり、凄腕ガンナー。スキルは当然キャップに至ってるという話だし、銃以外にも高スキルを保有する圧倒的()プレイヤーである。

 そんな彼女の名がどうしてLAプレイヤー以外にも知られているのかというと、彼女が『月間MMO』というゲーム情報雑誌のLA担当ライターの一人だからである。

 しかもその中でも彼女が担当するコラムは【Vinchitore】に所属しているからこそ分かるような、レアな情報が多く人気が高い。

 だがそれだけではなく、さらに知名度と人気に拍車をかけているのは、彼女がコラムを掲載する際、自分のキャラの恰好をしたコスプレで、リアルの写真も出しているということもある。

 女性がリアルの顔を出せるということは、それはまぁ、察する通り見た目がいいからに決まっている。

 女優やトップアイドルほどではないが、コスプレ姿で紙面に登場するのに加え、ゲーマーたちが好きそうな猫のような愛らしさのある彼女は、LAユーザーたちにとってはまさにアイドルと言っても過言ではないだろう。

 うん、まぁつまり()()()のだ。


〈Pyonkichi〉『マジ知り合いかwすげえw』

〈Pyonkichi〉『ここまで来たら言っちゃえって! 気になって明日の授業失敗しそう!』

〈Daikon〉『授業失敗すんなしw』

〈Daikon〉『でも7年もフレやってる俺も知らないし、俺も気になるなー』

〈Jack〉『俺も銃持ちがセシルってのは想像ついたけど、ゼロやんと関係あるなんて知らなっかったなーーーー』

〈Jack〉『かつてのライバルとかーーーー?』

〈Zero〉『うーん、言わなきゃダメ?』

〈Pyonkichi〉『ここまできてひよんな!』

〈Daikon〉『俺らに秘密にする必要あんのかよ?w』

〈Jack〉『え、まさかリアフレとかーーーー?w』


 矢継ぎ早のログラッシュが、ジャックのログで止まる。

 俺がどう言ったものか悩んでいると。


〈Cecil〉『おひさー。あたしの言いたいことわかるかなー?』


 個別のメッセージが俺に届く。

 なんというタイミングだろうか。


〈Zero〉『もこさんから聞いた。お前の仕事の邪魔はしないよ』

〈Cecil〉『さっすが()()()()、分かってるー!』

〈Zero〉『りんりんはやめろ』

〈Cecil〉『えー、いいじゃんたまには』

〈Zero〉『なんだよたまにはって』

〈Cecil〉『久々の会話なのにつれないなー』

〈Zero〉『はいはい。仕事、頑張ってな』

〈Cecil〉『ん、ありがと』

〈Cecil〉『秋にはまた拡張データ配信じゃん?』

〈Zero〉『ああ、そうらしいな』

〈Cecil〉『そうなるとまた忙しくなっちゃうからさ』

〈Cecil〉『夏休みとか、少しくらい暇なるでしょ? 今回のお礼にご飯でも奢るよw』

〈Zero〉『別にいいよ、気にしなくて』

〈Cecil〉『んにゃー、あたしがりんりんに会いたいからって言ったらー?』

〈Zero〉『は? 冗談だろ?』

〈Cecil〉『それはどうかなーw今度Talk(トーク)に連絡するぜい!』

〈Cecil〉『じゃあな!あでぃおす!』

〈Zero〉『え、おい!』


 突然のメッセージに困惑する俺。あ、ちなみに“Talk”っていうのは今や世の中で使ってない人はほとんどいないであろう、メッセージアプリのことだ。無料でメッセージのやり取りや通話ができるため、現代人の必須アプリである。


 今のやり取りからも分かったかもしれないが、ジャックが予想したように、俺はリアルでセシルと面識がある。

 というかそもそも、俺がLAを始めたのは彼女がきっかけだ。


〈Pyonkichi〉『おい、ゼロやん急にだまんなw』

〈Jack〉『え、まさか本人から連絡きてたりとか!?』

〈Pyonkichi〉『ありうるな!セシルから連絡きたらそっち優先はしょうがないww』

〈Daikon〉『おーい、ゼロやーん』

〈Zero〉『ごめん、セシルからメッセきてた』

〈Pyonkichi〉『マジだったwww』

〈Jack〉『銃についての口止め依頼かーーーー』

〈Daikon〉『記録の残るアカウントへのメッセージじゃなく、わざわざキャラへのメッセージ?記事への口止めなのにそんなもんなのか?』

〈Pyonkichi〉『たしかに!だい鋭い!』

〈Jack〉『これは、メッセージで済む間柄ってことですかなーーーー!?』


 くそ、こいつら好き勝手予想しやがって……。そして地味にいろいろ鋭い……。

 まぁ、男同士だしいっか、こいつらなら変なひがみもないだろ!


〈Zero〉『()()()なんだ』

〈Daikon〉『は?』

〈Pyonkichi〉『うぇええええええええ』

〈Jack〉『まじ?』

〈Zero〉『ああ、俺はセシルに勧められて、LA始めたんだからな』


 ああ、言っちまった。

 変な炎上とかしませんように。

第一部分の―――の名前がいよいよ明らかになりました。

次話ではゼロが彼女について少し語ります。]


ちなみにTalkアプリは=Li〇eだと思ってくださいm(_ _)m

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