知り合いの知り合いって難しい距離感だよね?
ゲームパートです。
〈Zero〉『おーっす。今うちの部員がLA始めたっていうから、いろいろ教えてるとこ』
〈Daikon〉『え、ゼロやんの部って、女子ソフトじゃなかった?』
〈Zero〉『そうそう、よく覚えてんなw』
〈Daikon〉『前聞いたし、ってか、教え子にプレイヤーだってこと言ってんのか』
〈Zero〉『あー、去年バレちゃって、ギルド動画もけっこう見られてるよw』
〈Daikon〉『ふーん、現役JKと勤務後にLAとは……』
〈Zero〉『その言い方はやめろ』
〈Daikon〉『何時までやってんの?』
〈Zero〉『最長22時』
〈Daikon〉『そこはちゃんとしてんのなw』
〈Zero〉『あたりめーだろ』
〈Daikon〉『じゃ、俺もいくわー。終わったら1時間くらい素材狩り手伝って』
〈Zero〉『おー、ワームの巣穴の入口すぐ辺りにいるわ』
〈Daikon〉『いきなり巣穴? まぁおk』
〈Daikon〉、だいはログインすれば必ず俺に挨拶してくれるいい奴だが、基本的に俺と行動することが多い、実は友達が少ないやつなのだ。
ただフレンドが少ないからといってぐいぐい来るほどでもなく、ソロで何かしてるときはそっとしておいてくれる、適度な距離感が落ち着くフレンドなのである。
まぁ7年の付き合いなだけはあるってことだ。
〈Zero〉『今から俺のフレも見に来てくれるって』
〈Juria〉『だて?』
〈Zero〉『戦いながらタイピングすんのは慣れないとむずいよなwDaikonがきてくれるって』
〈Juria〉『おお』
目の前のモンスターと戦っているため、キーボードを打ちづらいのだろう。タイプミスと短文からそれを察することができるのは、俺も昔通った道だからだ。
それにJuriaが戦っているモンスターはゲームスタートして即戦ったら100%負けるレベルのモンスターなのだ。武器の性能のおかげで勝ててはいるし、槍スキルもばかすか上がっているので、続けていけばどんどん楽にはなっていくだろう。
そんな感じでJuriaの戦闘を眺めていると。
〈Daikon〉『こんばんはー。お、ロリエルフだ』
俺らのそばに現れたDaikonという名前のヒュームの男キャラは、ツンツンヘアーの金髪クール系イケメン顔だ。名前とのギャップに何か思わなくはないが、本人の好きな野菜の名前だという話だが、まぁ、キャラネームなんてそんなもんだろう。たぶん。
そんなキャラがいきなり“ロリエルフ”などというパワーワードをオープンチャットでかますのだから、リアルの俺は思わず吹き出してしまったぜ。
もちろん、即パーティに誘ってオープンチャットをやめさせたのは言うまでもない。
〈Juria〉『はじめましてー珠梨亜でーす』
〈Zero〉『本名はやめい』
〈Juria〉『あ、そうなの? じゅりあでーす』
〈Daikon〉『本名w』
〈Daikon〉『だいでーすw』
〈Daikon〉『ゼロやんの教え子なんだって?』
〈Juria〉『はいー。JKやってまーす』
〈Daikon〉『若いなー。なんでLAやってみよーと思ったの?』
パーティに入るやいなや、いきなりのおしゃべりモードだ。
若いなーとか、お前も普段相手にしてる年齢だろうが、というツッコミはあえて心の中に留めておくとしよう。
〈Juria〉『んー、SNSの友達けっこうやってるし、せんせーもやってるって聞いてたので、せんせーの動画見てもなんか面白そうだったからですかねー』
〈Daikon〉『せんせーだってw』
〈Zero〉『笑うな! まちがってねーから!』
〈Zero〉『つかあれだぞ、じゅりあの友達の一人、モブだってよ』
〈Daikon〉『いやどこのモブだよw 失礼だろw』
〈Zero〉『Mobkunだって』
〈Daikon〉『え、まじ?』
〈Juria〉『始めたって言ったら、この槍買ってくれましたー』
〈Daikon〉『うわ、天魔の槍じゃん。初心者にあげる武器じゃねーだろw』
〈Daikon〉『つかあいつJK相手に何やってんのw ……いや冗談じゃなく割とキモイな』
〈Zero〉『うむ、全くだよな……』
〈Juria〉『魔女っ子ルルルンのファンサイトで知り合ったんですよー』
〈Daikon〉『ガチヲタwww』
〈Zero〉『まぁ、趣味はそれぞれだからな』
〈Daikon〉『まぁあいつの話はいいや。で、こいつってどんな先生なの?w』
〈Zero〉『お前それ聞きにきただけだろ!』
〈Juria〉『んー、ゆるキャラって感じですかね。けっこう人気ありますよー』
〈Daikon〉『ゆるキャラwww』
〈Zero〉『答えなくていい!!』
〈Daikon〉『最強ガンナーの一角のくせに、リアルはゆるキャラとかギャップ狙いかよw』
〈Zero〉『うるせー!!』
〈Juria〉『部活の先輩なんか、ガチでせんせーのこと好きですからね』
〈Daikon〉『おいおい、ギルド内から犯罪者とかやめろよ?』
〈Zero〉『なんもねーよ!』
〈Juria〉『えー、そら先輩あんなに好きなのに』
〈Zero〉『やかましい』
〈Juria〉『あんなに可愛いのに』
〈Daikon〉『モテ男じゃーんw』
初対面同士のくせに予想以上の結託感で俺をいじってくるこいつらに、俺は画面越しにため息をつく。
つか、だいのやつほんとに来ただけじゃねぇか。
〈Zero〉『っと、おいじゅりあ、もう22時なるから今日はここまでだな』
〈Juria〉『えー、今時22時で寝る高校生なんていないのにー』
〈Juria〉『てか、じゅりあって言われたのじわるw』
〈Juria〉『学校でも下の名前でいいですよ?』
〈Zero〉『うるせえ、高校生は早くおちて寝ろ』
〈Juria〉『しょうがないなぁ。Daikonさんもぜひまたかまってくださ~い』
〈Daikon〉『だいでいいよー。ゼロやんがちゃんと仕事してなかったら教えてねw』
〈Zero〉『お前らは仲良くならなくていい!』
Juriaがログアウトするまでもまぁこうして時間がかかったが、強制的に俺がパーティに転移魔法を唱えたことであいつも渋々ログアウトしていった。
あー、なんか予想以上に疲れたわ……。
〈Daikon〉『いい子じゃん。ゼロやんいい先生やってんのな』
〈Zero〉『振り回されっぱなしだよw』
〈Daikon〉『俺なんて全然生徒よってこねぇけどなw』
〈Zero〉『そんだけ人当りいいくせに、よってこないとかねぇだろ』
〈Daikon〉『んー、リアルはどうかなー』
〈Zero〉『え、そういう感じなの?』
〈Daikon〉『まぁ、さっきの子見る限り、ゼロやんよりは厳しいと思うよ……w』
〈Zero〉『そうなのか。まぁオンとオフじゃ別なんてよくある話だろ』
〈Daikon〉『まぁね』
Juriaがログアウトして俺とだいの二人パーティになり、他愛もない会話をする。正直だいは俺のイメージだといつもにこにこしたいいお兄ちゃんキャラだと思ってたんだが、やっぱネットの印象ってのは違うものなんだろうか。
しかし教え子と関わらせるのは危険だな、うん。これからは極力Juriaとギルメンは近づけないようにしよう……。職業バレしてんのも善し悪しだったなー……。
〈Zero〉『で、なんか素材集めたいんだっけ?』
〈Daikon〉『ん、ああ。そうだった。ヒヒカネイロ作りたいんだど』
〈Zero〉『さらっと言う素材じゃねぇw』
しれっとだいが言ったヒヒカネイロとは、取得難易度がかなり高い素材で、高額装備の武器防具の素材として使われているアイテムだ。だいは薬品調合しかできない俺とちがって、防具職人でもあり、製作難易度の高い防具も素材を渡すと作ってくれたりするのだからありがたいものだ。
だが、ヒヒイロカネを作る素材がまず集めるのも大変なのだ。
素材を落とすモンスターは俺とだいの二人でもなんとか倒せなくはないだろうが、油断すると死にかねない。そんな高レベルダンジョンのモンスターを倒す必要がある素材が必要なのである。
〈Daikon〉『じゃあ火山集合、サポーターでよろw』
〈Zero〉『え、俺に試し撃ちさせてくんないの!?』
〈Daikon〉『俺だって昨日ウィザードで我慢したし』
〈Zero〉『く……』
〈Daikon〉『じゃあ明日は他のギルメンきたら、誘ってダイヤ亀でも狩りにいこう』
〈Zero〉『素材は分配?』
〈Daikon〉『いつも防具作ってあげてるのはだれかなー?』
〈Zero〉『ですよねー』
〈Daikon〉『亀ならスキルも上がるレベルだし、誘えばだれかくるっしょ』
〈Zero〉『だな』
そんな会話をしたあと、ディアゲル火山という高難度ダンジョンへ向かい、ロバーのだい、サポーターの俺の二人で23時過ぎまでおしゃべりしつつ素材狩りを行うのだった。
ちなみにサポーターは出来ると便利ジョブの一つであり、俺が銃以外にそこそこあげているのもサポーターをするためのメイススキルなのだ。
ボスフロアに行くまではサポーターとしてプレイしつつ、ボス戦だけはガンナーになることもしばしばある。
メイススキルは基本味方に強化魔法を唱えたり敵に阻害魔法を唱えるだけでメイススキルが上がるから、パーティプレイなら武器スキルも上げやすいんだよな。
ソロプレイヤー以外ならかなりこのゲームを楽しみやすくなる武器スキルだから、おすすめだぞ!
設定補足
〈Daikon〉のメイン武器は短剣。スキルは313で、かなり上位です。樫の杖は266で、十分強い部類です。
〈Zero〉のメイススキルは252。サポーターとしてもそれなりにプレイはできます。でもそこまで強いメイスは持っていません。