そのにっ!
んな訳あるか。
ということで、今回のやつは前回の裏話。
因みに『見習い二人の幹部生活3〜10』まで、割り込み追加しました。
「ただいまっすー」
わたしたちはなんかてきとうな部活動に入って、適当に済ませてお家に帰ってきた。ただいま。
そろそろ、申さんのお仕事が始めるらしいんだけれど、準備とかどうしてるんだろ?そう思いながら、手洗いとうがいを済ませてリビングに入ると、
「……おい、拗ねんなよ」
「…………だって」
未さんと申さんが睨み合ってた。
×
なーんか、気まずーい。
って、ちょっとだけ、現実逃避してみる。ダイニングに座って、わたしたちは未さんと申さんの様子をみることにした。(野次馬っすかね?)
「お前が妖精側に手を貸したくねェ気持ちはわかるっつーか俺も貸したくはねェけどよ、」
めんどくさそうに深い溜息を吐いて、申さんは未さんに近付く。そして未さんのほっぺを片手で挟んで、低い声で凄んだ。
「話が進まねェんだよ。とっととやれ仔羊」
「……はぁい……」
すっごく嫌そうなお顔で、未さんは自分のお部屋に戻っていった。……さっきの申さんのお顔、すごく、怖かった……。(迫力あったっすね)
未さんがいなくなったあと、申さんは制服のまま様子を見てたわたしたちの方を向く。
「ガキ共、勝手に他人の争いを鑑賞してんじゃねーよ。いい趣味してんな」
って、ちょっと毒づきながら、冷蔵庫に入ってたおやつをわたしたちの前に出す。
「てきとうに作ったやつだ。とっとと食え」
プリンだ!綺麗なカスタードの色がすごくおいしそう。黒っぽい粒はバニラビーンズかな?
「好みで掛けろ」
って、濃ゆい色のとろっとした液体が入った深めの片口を、プリンに目を輝かせるわたしたちの前に置いた。……もしかして、これは……!
「カラメルっす!」
同期の少女が、とっても嬉しそうにいう。
カラメルソースをすぐにかけたかったけれど、まずは一口食べてから。
「「!」」
わたしたちは、驚きに思わず目を見開いた。
「お口の中でプリンが溶けたっす!」
とろーり滑らかなプリン。すっごくおいしい。申さんは、わたしたちの様子に、結構満更でもない感じ。
「……で、何かあったんすか?」
プリンを口に運びながら、同期の少女は訊く。わたしもちょっぴり気になるから、止めなかった。すると、申さんはちょっと不機嫌そうなお顔で
「昨日、向こう側が主人公に夢を介して接触したんだとよ」
って教えてくれた。じゃあ、物語が始まったの?
「いいや」
あ、もっと不機嫌になった。
「干渉の力が弱かった所為で主人公が妖精に気付かずにスルーしやがったんだと」
「出来ないならするんじゃねェよ」と小さくぼやいて、大きくため息を吐いた。向こうのやる予定だったのを未さんがするってことは……
「んで、こっちに泣き付いてきやがった」
そうなんだ。すっごい嫌そうなお顔。
「夢を見ないと話が始まらねェから、未にやらせる事になったんだよ。……丁度持ち場に居たしな」
未さんって夢になにかできるのかな?おいしいプリンを味わいながら、考えていると、
「『仮の面』が夢に何かできるって、あっちは知ってたっすか?」
そう、同期の少女が訊いた。それに対して申さんは
「そんな大した情報収集能力、持ってねェよ。……ただの脳内花畑野郎共はな」
っていう。なんだか、言葉にちょっぴりトゲがある。カラメルをかけたら、ほろ苦い味が合わさって、なんだか大人な味、って感じがした。
「取り敢えず『仮の面』に頼めばなんとかなるとか思ってんだろうよ」
あいつらは殆ど思考が停止したクズ共だからな、と申さんがいったところで、
「未さんに何させるんすか?」
と、同期の少女は申さんに訊く。
「夢に干渉して、少女に『設定された夢』を見せる」
夢に、干渉?よくわからなくて首を傾げながら横を見ると、
「『設定された夢』って何すか?」
同期の少女も一緒に首を傾げてた。あっ、カラメルソースいっぱいかけてる……!
「主人公に物語を始めるのに必要な情報を与える、……プログラムの事だ。つまり、『設定した夢を見せる』ってのは、設定を相手の精神に埋め込むってなわけだ」
妖精の姿を見せるとか、妖精が少女たちにどうして欲しいのかとか、そういうものの微調整とかするんだって。最初だけじゃなくって、途中で何回か行う時もあるみたい。
「そうすりゃ、いやでも『自分じゃなきゃ駄目なんだ』って思うからな」
……もうちょっとカラメルかけたかった…「オイ、ガキ共。訊いておきながら、俺の話を真面目に聴いてねーだろ」
×
「輝く星、ステラ・スプレンドゥーレ!」
画面越しで同級生の主人公ちゃんの叫ぶ声を聞きながら、わたしたちは申さんの置き土産のタルトを食べた。フルーツたっぷりで、すっごくジューシー。(果物がすごいつやつやだったっす!)
無事に、同級生の女の子は魔法少女になったみたい。だからきっと、他の子達も、すぐに魔法少女になるんだろうな。