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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第二章 その日の難逃れ
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そのにっ!

んな訳あるか。


ということで、今回のやつは前回の裏話。




因みに『見習い二人の幹部生活3〜10』まで、割り込み追加しました。



「ただいまっすー」


わたしたちはなんかてきとうな部活動に入って、適当に済ませてお家に帰ってきた。ただいま。


そろそろ、申さん(パパ)のお仕事が始めるらしいんだけれど、準備とかどうしてるんだろ?そう思いながら、手洗いとうがいを済ませてリビングに入ると、


「……おい、拗ねんなよ」


「…………だって」


未さんと申さんが睨み合ってた。



×



なーんか、気まずーい。


って、ちょっとだけ、現実逃避してみる。ダイニングに座って、わたしたちは未さんと申さんの様子をみることにした。(野次馬っすかね?)


「お前が妖精側(あっち)に手を貸したくねェ気持ちはわかるっつーか俺も貸したくはねェけどよ、」


めんどくさそうに深い溜息を吐いて、申さんは未さんに近付く。そして未さんのほっぺを片手で挟んで、低い声で凄んだ。


「話が進まねェんだよ。とっととやれ仔羊」


「……はぁい……」


すっごく嫌そうなお顔で、未さんは自分のお部屋に戻っていった。……さっきの申さんのお顔、すごく、怖かった……。(迫力あったっすね)


未さんがいなくなったあと、申さんは制服のまま様子を見てたわたしたちの方を向く。


「ガキ共、勝手に他人(ひと)の争いを鑑賞してんじゃねーよ。いい趣味してんな」


って、ちょっと毒づきながら、冷蔵庫に入ってたおやつをわたしたちの前に出す。


「てきとうに作ったやつだ。とっとと食え」


プリンだ!綺麗なカスタードの色がすごくおいしそう。黒っぽい粒はバニラビーンズかな?


「好みで掛けろ」


って、濃ゆい色のとろっとした液体が入った深めの片口を、プリンに目を輝かせるわたしたちの前に置いた。……もしかして、これは……!


「カラメルっす!」


同期の少女が、とっても嬉しそうにいう。


カラメルソースをすぐにかけたかったけれど、まずは一口食べてから。


「「!」」


わたしたちは、驚きに思わず目を見開いた。


「お口の中でプリンが溶けたっす!」


とろーり滑らかなプリン。すっごくおいしい。申さんは、わたしたちの様子に、結構満更でもない感じ。


「……で、何かあったんすか?」


プリンを口に運びながら、同期の少女は訊く。わたしもちょっぴり気になるから、止めなかった。すると、申さんはちょっと不機嫌そうなお顔で


「昨日、向こう側(妖精共)が主人公に夢を介して接触したんだとよ」


って教えてくれた。じゃあ、物語が始まったの?


「いいや」


あ、もっと不機嫌になった。


「干渉の力が弱かった所為で主人公が妖精に気付かずにスルーしやがったんだと」


「出来ないならするんじゃねェよ」と小さくぼやいて、大きくため息を吐いた。向こうのやる予定だったのを未さんがするってことは……


「んで、こっちに泣き付いてきやがった」


そうなんだ。すっごい嫌そうなお顔。


「夢を見ないと話が始まらねェから、(あいつ)にやらせる事になったんだよ。……丁度持ち場に居たしな」


未さんって夢になにかできるのかな?おいしいプリンを味わいながら、考えていると、


『仮の面』(うちの組織)が夢に何かできるって、あっちは知ってたっすか?」


そう、同期の少女が訊いた。それに対して申さんは


「そんな大した情報収集能力、持ってねェよ。……ただの脳内花畑野郎(妖精)共はな」


っていう。なんだか、言葉にちょっぴりトゲがある。カラメルをかけたら、ほろ苦い味が合わさって、なんだか大人な味、って感じがした。


「取り敢えず『仮の面(俺達)』に頼めばなんとかなるとか思ってんだろうよ」


あいつらは殆ど思考が停止したクズ共だからな、と申さんがいったところで、


「未さんに何させるんすか?」


と、同期の少女は申さんに訊く。


「夢に干渉して、少女に『設定された夢』を見せる」


夢に、干渉?よくわからなくて首を傾げながら横を見ると、


「『設定された夢』って何すか?」


同期の少女も一緒に首を傾げてた。あっ、カラメルソースいっぱいかけてる……!


「主人公に物語を始めるのに必要な情報を与える、……プログラムの事だ。つまり、『設定した夢を見せる』ってのは、設定を相手の精神に埋め込むってなわけだ」


妖精の姿を見せるとか、妖精が少女たちにどうして欲しいのかとか、そういうものの()調()()とかするんだって。最初だけじゃなくって、途中で何回か行う時もあるみたい。


「そうすりゃ、いやでも『自分じゃなきゃ駄目なんだ』って思うからな」


……もうちょっとカラメルかけたかった…「オイ、ガキ共。訊いておきながら、俺の話を真面目に聴いてねーだろ」



×



「輝く星、ステラ・スプレンドゥーレ!」


画面越しで同級生の主人公ちゃんの叫ぶ声を聞きながら、わたしたちは申さんの置き土産のタルトを食べた。フルーツたっぷりで、すっごくジューシー。(果物がすごいつやつやだったっす!)


無事に、同級生の女の子は魔法少女になったみたい。だからきっと、他の子達も、すぐに魔法少女になるんだろうな。




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