物語の魔法少女
★新連載★
『物語の魔法少女』!
みんな、よろしくねっ☆
「……あ、」
目が覚めたら、自分の部屋の天井が見えた。当たり前の話だけど。
何か夢を見ていた気がするんだけどな。ま、いっか。
わたしは日野 光莉。花の中学生だ。
「おはよー」
「あら、おはよう」
寝ぼけ眼で一階に降りると、いつも通りニュースを流しながらお母さんがご飯を作ってくれてた。
「ほら、今日から新学期でしょう?遅刻したら大変よ」
お母さんは支度を終わらすよう促す。
「ふぁい、いっへきらふ!」
食パンを齧りつつ家を出た。
わたしの住んでるとこは、ハクセキ市、みどり町。
自然が豊かな、いい町なんだ!
★
「おはよう。朝から元気ね」
幼馴染のうみちゃんがくーるに声を掛ける。うみちゃんの本名は美浜 宇海。さらさらなロングヘアーの似合う、きれいな子。幼稚園の頃からずっと一緒なんだ。まぁ、ちょっと過保護、のような気がするけど。
慌ただしいの見られちゃった。……ちょっと恥ずかしいなぁ。
「おふぁおー!……もぐもぐ…ごくん!」
お行儀がこれ以上悪くならないよう、パンを飲み込んだ。
「おはよー、今日のクラス替え、みんな一緒のクラスだったらいいねー」
ゆったりと、つばめちゃんがいう。つばめちゃんの本名は丘野 つばめ。小学校の頃に同じクラスになって、仲良くなったんだ。優しい子なんだよ。
「……別に、私はひかりと同じクラスだったら他の子はどうでも良いけど」
こーら、うみちゃん。人見知りだからってそんな事言っちゃダメだよ。
「……だって……」
「人見知り……?」
なんでか、つばめちゃんは首を傾げてた。
さっきもお母さんが言ってたけど、今日から新学期。色々新しく始まる日だ。新しい子と友達になれるかなぁ。
と、
「最近のニュース見た?」
「なんだっけ、『この世界は私達が正す』とかなんとか言ってたような」
「出来るわけないって。アニメの見過ぎだよ、あれ」
「ねー」
そんな声が聞こえてきた。
「…最近、アレの話題ばっかりだね」
『アレ』ってのは、最近出てきた『Oz』っていう少人数グループの何かの組織だ。……ニュースをよく見てないから詳しくは分からないけど。
「他に話すことがないのよ」
さらりとうみちゃんは強い言葉を言う。
「辛辣だねー」
つばめちゃんもちょっと苦笑いしてる。聞こえてたらケンカになっちゃうかもしれないから、あんまりそういうこと言っちゃダメだよ。
★
「あ、かなたちゃん」
つばめちゃんと同じ方をみる。すると、かなたちゃんが朝の部活動練習をしてた。かなたちゃんの本名は高嶺 叶多。つばめちゃんの幼馴染みで、お勉強はちょっと苦手みたいだけど、スポーツなら何でもできるんだ!
「おはよー!かなたちゃん、朝から頑張ってるねー!」
運動場を囲むフェンス越しに、声をかける。
「人が足りないから助っ人してるんだー!」
ちょっと遠いから大きな声で呼びかけると、かなたちゃんも同じように大きな声でお返事してくれた。
「すごいねー」
「ねー」
わたしとつばめちゃんは、かなたちゃんのがんばってるのをみて、うれしくなった。
★
ホームルームが始まる。
「今日は転校生の紹介をします…」
先生が教室に入って少しお話しした後、そういった。
「……月乃宮、桜子……です」
きれいな黒髪を下で二つ結びにした女の子だった。髪がつやつやしてるなぁ。
「〇〇から来たんだって」
「へー」
半分聞き流しながら、今朝見た夢のことを思い出していた。
「それで……ねえ、きいてる?」
うみちゃんの声ではっと意識を戻した。
「はぇ?なんだっけ」
「もう、光莉ったら」
呆れたように、でも楽しそうにくすくす笑ううみちゃんをみて、なんだか幸せだなぁって思ったんだ。
★
休み時間になると、転校生の女の子はクラスメイトたちに囲まれていた。
「前のところで何してたの?」
「お勉強どこまでやってるのー?」
「何が流行ってた?」
「好きな人いるっすかー?」
みんな、女の子のことが知りたくてたくさん質問をしてた。けど、その女の子はとても困ってるように見えた。
「ちょっと。桜子ちゃんが困ってるからひとり一つ、ゆっくり。だよ?」
そう、みんなに声をかける。すると、みんなは「そうだね」「みんな一個ずつ質問しよー?」って、ちょっとだけ落ち着いてくれた。
「ーーありがと」
わたしがその子の横を通り過ぎたとき、そう、小さなささやき声が聞こえた。
★
お勉強も、お昼ご飯の給食も、お昼休みが終わった後のお掃除も、みんなでやったら楽しいよね!
今日も一日、楽しかった!
帰りの会が終わって、教科書やノートをカバンに入れていると、つばめちゃんはタオルやメガホンを取り出していた。
今日はかなたちゃんの応援に行くんだっけ?
「うん。約束してたからねー」
そっかー。じゃあうみちゃんと二人で帰ろっか。
「ごめんね、今日は生徒会の仕事が入ってるのよ」
えー。そっか。今日はひとりで帰るのかぁ。ちょっと、さみしいな。
「……二人っきりになれるチャンス、逃したくなかったけど」
あれ、なんか言った?
「いいえ。じゃあね。あなた可愛いんだから悪いものに襲われないか心配なのよね」
またそんなこと言ってー
「宇美ちゃんは本気っぽいけどー?」
「うるさいわね」
うみちゃんとつばめちゃんが仲良しそうでよかった。
★
その夜、わたしは不思議な夢を見た。
なんだか、白っぽくてぷにぷにしたまるいものが泣きそうなお顔で、なんだか悪そうなやつらから逃げている夢。
その子は、大事そうに何かを抱えていて悪いやつらはそれを奪おうと手を伸ばしていた。
あっ、危ない!
そう思ったときに、目が覚めた。
「あれって夢だったのかな」
夢にしては、結構はっきり見えた気もする。
「ひかりー!起きてるのー?」
ぼんやりしてたら、ちょっと怒ったような、お母さんの声が聞こえた。
「はーい!」
急いで着替えて、リビングに降りる。
★
今日は土曜日で、学校は休み。
いい天気だったけどみんな用事があるみたいだったから、ひとりでお出かけ。新しい物語を求めて、本屋さんに行くんだ!
……のはず、だったんだけど。
どうして、こうなっちゃったんだろう?!
本屋さんに行って、新しい絵本を買ったのはよかったんだけど。お家まで待てずに、広場で読もうとしたら急に
「俺は『Oz』の案山子だ!テメェ等、妖精を見てねェか?隠してんなら容赦しねェぞ!」
と、手の長い藁人形みたいな、ぼろぼろの服の変なのが、急に現れちゃった。
妖精、ってなんのこと?!
変なのと一緒に、なんだか黒くて大きなお化けまで出てきて、そいつがわたしたちの広場を壊し始める。
わたしは、近くにあった物陰に隠れて、見つからないように息をひそめてた。
すると、
「ど、どうしよう……ボクのせいで、この町が…!」
と、白っぽくてぷにぷにしたまるいものが、ぷるぷると震えて、うずくまっているのが見えた。もしかして、この子が『妖精』?
「どこ行きやがった!出てこい!」
大きな黒いお化けの上に乗って、案山子が叫んでる。……このままじゃ、町が……!
……でも。
「どうしよう、」
この妖精をあんな怖そうなやつのところになんて、渡しちゃダメな気がする。……そうだ。
「こっちにおいで!」
妖精に声をかけると、すごくびっくりしたみたいに、その子ははねる。
「ご、ごめんなさいっ!」
涙をこぼして、妖精が謝る。もしかして、自分のせいで、この町が危ないことになってるのを、悲しんでる?
こんな優しい子を、あんな怖そうなやつに、絶対、渡さない。そう、心に決めた。
「大丈夫。あなたの味方、だよ?」
優しく、その子に声をかける。
「あんな怖そうなやつに、あなたを渡さない」
「……ほんと?」
潤んだ目で見上げるその子を、そっと抱き寄せる。
「ほんとだよ」
そう笑いかけると、
「ありがとう」
妖精は笑顔になった。
★
「そこに居やがったか!妖精!」
逃げようとしたら、すぐに見つかっちゃった。
どうしよう?!
でも、
「あなたなんかに、この子は渡さないんだから!」
「ケッ、テメェみたいなひ弱なガキに何が出来るってんだ?」
不愉快そうに顔を歪めた案山子を睨みつける。
と、
「わっ?!」
妖精の持っていた荷物が、輝き出した。
「ま、まさか、」
案山子がうろたえて、
「やっちまえ!」
と、お化けに命令をする。お化けは大きくて太い腕を、こっちに向かって振り下ろす。
けど、それはわたしの目の前で弾かれた。
「ば、ばかなっ!」
そして、わたしは光に包まれる。
「輝く星、ステラ・スプレンドゥーレ!」
弾ける光と共に、わたしは声をあげた。
変身、しちゃった?!
どうしよう?!よくわかんないけど、夢で見かけた妖精を助けようと思ったら、変身しちゃった!
おまけに、変身したことは人にいっちゃいけないんだって!わたし、ちゃんと隠せるかな?!
そう思ってるうちに、なんだかうみちゃんには怪しまれちゃってるし!
次回、『きになるあのこは転校生!』
みんなも、たくさんお話し読んで、きらきらハッピー、だよ☆