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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第二章 その日の難逃れ
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家族ごっこ。


視点がいつもの子に戻る。



拠点を置く街は物語の中心的位置になる場所らしく、ずいぶん広くてたくさんのお店があるみたい。同期の少女とわたしは、新しい環境に少しどきどきしてた。


「あんまりキョロキョロすんじゃねーよ」


印象に残られると困るからな、と、わたしたちの後ろを歩く申さんは声をかける。とがめる感じじゃなくて、気を付けろ、って感じに注意するみたいな。


「申くん、もう『おとうさん』みたいだねー」


それを微笑ましそうに見ながら、未さんが申さんの後を付いてゆっくり歩く。そこで、わたしたちは観光や遊びでこの街に来てるわけじゃない事をはっと思い出した。目的を忘れて、迷惑かけちゃうところだったかも。


「うるせー。ただ悪目立ちしねーように言っただけじゃねーかよ」


顔をしかめて言い返す申さんに、


「んもう、申くん照れ屋さんなんだから」


と、未さんは嬉しそうに笑った。家族みたいだなって思ってたけど、これからわたしたちは家族に擬態するんだった。なんて呼ぼうかな?(あたしは『ママ』と『パパ』って呼ぶっす!)じゃあ、わたしもそう呼ぶ。


あとでそう呼んだら、未さん改めママは「ママ?うふふー、ママになっちゃったー」って嬉しそうに笑って、申さん改めパパは「中学生でその呼び方って幼くねーか?」ってちょっと呆れたように首をひねった。


そして、「これからお仕事頑張ろうね、パパ♡」ってママが言ったら、パパはすごく不機嫌そうに顔をしかめてた。



×



拠点の名前は『拠点C』。だから、今回も酉さんとのお仕事の時みたいな、普通の一般的なおうち。


「おっきなお城とか行ってみたかったっす」


同期の少女の言葉に、私も頷いた。ちょっと、みてみたかったかも。


「この仕事が終われば他の仕事も入るだろうから、そん時に期待しとけ」


別にこれがお前らの最後の仕事じゃねーんだ、って申さん(パパ)は言いながら、わたしたちにお部屋の割り振りをした。


「ドアが開くその2部屋、そこを好きなように使え」


そう言って、家具のカタログを(投げ)渡す。ドアが開かないお部屋は、二人がお仕事に使うんだって。(『開けるな』って言われたら開けたくなるっすけど、開かないんなら開けようがないっすね)


「これなんすか?」


パパから(投げ)渡されたカタログに、同期の少女と一緒に首を傾げると、


「殺風景だと怪しまれるだろ。揃えてやるから家具一通り欲しいやつに印付けとけ」


そう答えてくれた。怖いひとかと思ってたけど、結構良いひと、なのかな?(悪の組織の一番上の幹部の一人なんだから、フツーに悪いひとだと思うっす)


「今日中に家具一通り揃えたいから、さっさと選べよ」


じゃねーとシンプルな殺風景な部屋にしちまうぞ、とパパが言ってたけど、わたしはそれでだいじょうぶ。(あたしもダイジョブっすよ)


そう答えたら、パパは「最近の若い奴の趣味はわからねーもんだな」ってがりがり頭をかいた。ママは、のんびりと周囲のマップを見ていて、


「あっ、ここたくさんお店がありそうだねー」


とか、


「このお店、美味しいんだってー」


って楽しそうにしてた。パパは最終的に、


「好きな色を三つ選べ。テキトーに作ってやる。気に入らなかったら言え」


っていったけど、どうやって作るのかな。



×



「じゃあ、お買いもの、行こっかー」


未さん(ママ)の提案で、わたしたちは潜伏する街の確認もかねてみんなでお出かけをする事になった。まずは、一番目立つショッピングモールから。


「お揃いのパジャマ欲しいっす」


わたしも欲しい…かな。


「いいよぉ」


にこにこ笑顔で、ママは許可してくれる。多分、これはママやパパのお金じゃなくて、経費とか、わたしたちのお給料から出ていくんだろうな。パパは、特に用事はないみたいだけど、わたしたちの好きなものを把握するために付いてくるんだって。


「あ、そうだ」と声をあげて、ママは大人用のパジャマを二つ手に取る。


「ぼくも、申くんとおそろいのパジャマ買っちゃお」

「やめろ」


間髪いれずにパパが拒否してたけど、ママは気にせずに買い物かごにパジャマを入れたみたい。


「これで決定、ねー」


「なー、俺の発言権は」


「ないよぉ」


「『良いよ』みてーなノリで俺の権利を剥奪すんじゃねーよ」「えへへぇ」「笑ってんな」


仲良しさんなのかな?


「仲良いっすね」


こそっとかけられた声に、わたしは頷いた。



×



「すごいっす」


おうちに帰ったら、わたしたちのお部屋がすっかり完成されてた。好きな色に、結構いいかも、って思ってたベッドや机、チェストとかによく似た機能を持った家具がひとそろい、そろってた。


「触り心地もいいっす!」


クッションにもふもふと顔をうずめてそういうから、わたしも触ってみる。……ふわふわだ……!


「気に入ってもらえたんなら良かったよ」


わたしたちの様子を見て、パパがふん、って安心と自信を混ぜたような溜息を吐いた。


「因みにその家具は頼めば寮の自室まで持っていけるからな」


「そうなんすか!?」


お部屋に帰るのがたのしみになっちゃうね。


「よかったねぇ」


にこにこと、ママが頷く。……そういえば、今日行ったショッピングモールは、基本的にはお洋服とか小物や雑貨を見てたけど、家具屋さんも一緒にあったし、もしかして……。そっとママを見てみても、


「なぁに?」


ゆったり首を傾げるだけだった。


とりあえず。


こうして、わたしたちの正社員(?)としてのお仕事は、始まった。



小猿さんたち、がんばりました。


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