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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第二章 その日の難逃れ
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適任


またもや視点が変わります。


今回は申。


久しぶりに、酉から仕事の用事で研究室に呼ばれた。


「一体なんだよ、面倒くせーな」


折角面白そうな玩具を見つけたってのに。捕まえていたそれを適当な保管瓶に放り込んだ。それを手下の小猿共が片付けるのを尻目に仕事部屋から出る。


呼ばれた先に向かう途中で、


「あれれ、申くんだー」


未と合流する。


ぽてぽて歩く様子は起きているのか寝ているのか判断がつかない。起きてるならあまり近寄りたくないんだが。


「なんだよ未。俺は今から酉に呼ばれてるからあとでな」


「あ、ぼくも、酉くんに呼ばれてるんだよー」


おそろいだねぇ、と未は呑気に笑う。……絶対ろくな仕事じゃねーな。


「そういえば申くん、迷わず来れたんだねー」


えらいえらいと頭を撫でる手を振り払った瞬間、がしりと腕を掴まれた。


「えへへ、こうやって会えたのも運命だよねぇ?」


「……」


起きてんじゃねーかよ。みしみしと音を立てる腕にもう帰りたくなってきた。



×



わざわざ俺達を自身の研究室まで呼ぶって事は、他の奴には聞かれたくねー話か。ってか相変わらずコイツの仕事部屋は殺風景で何もねーよな。独房かよ。


「今回は直属の部下(星官)を持っていない『未』(こいつ)『申』()が担当って事は何か意味あんのか」


「それなりに」


渡された資料にざっと目を通し酉に訊けば、いつも通りの胡散臭い笑顔を貼り付けて頷く。


コイツの笑顔って少しの間だけなら『好青年の笑み』、程々に付き合いがあれば『嘘っぽい笑み』。かなり長い間の付き合いがあると、『腹黒い笑み』に見えるもんだから不思議だよな。


「他の幹部だと、まず無理なんだよ。大抵顔が割れているから」


ってことは『探し()()』か。人か精霊か妖精、バケモノとか対象が分かんねーからな。ってか仮面着けてる組織なのに面が割れてんのか?……いや、意味合いを考えてみると、『正体がバレてる』…魔力か気配が知られてるってことか。


「まあ、あとは性格の問題かな」


「性格?俺達みたいに()()()()()()()()()()()が向いてるってか」


そうじゃ無いよ、と酉は困った風に首を傾げながらも俺達がいかに適任なのか説く。


「戌クンは真っ直ぐで午くんは慎重過ぎる」


そーだな。おまけに戌はうるせーし。午は石橋を叩いて壊しかけるタイプだ。だがその程度なら条件が揃えば問題ないだろう。


……つまり、条件を整えられない状況か相手、もしくは時間をかけられないと。


「卯クンには、無理」


そうだな。魔力が月みてーに鬱陶しく煌めいてるしな。単純に新人の仕事じゃないってことだろう。


「だから、顔も割れてない上に、性格的に問題なさそうな君達って訳さ」


「……なぁ、それって「とにかく、多分今が最後のチャンスなんだよ」…そうかよ」


被せるようにいう酉の様子に、少し違和感を覚える。酉が他の幹部(俺達)に隠し事をしているのはよくある事だから、別に良いけど。


「未は居なくても良いだろ」


「……ふふ、申クン。君、未クンも必要だから、一緒だってわかってる?」


ふと湧いた疑問を口に出すと、酉は不気味に笑う。…なんだ?厄介なことでもやらせようってのか?


未ができる事といえば、夢を介した干渉ぐらいじゃねーのか。そう思って未を見ると、


「ん、なぁに申くん」


とにこにこしていた。さっきからずっと黙ってるがこいつ話しちゃんと聞いてたのか?


「ぐっすり聞いてたよー」


寝てんじゃねーかよ。


「……まあ、酉が無意味な事は滅多にやらねー性格だってのは理解してるが」


何やらせるつもりだろうか。それよりも。


「そろそろ腕離してくれませんかね未さん」


片手で資料見るのめんどくさいんだよー。


「んふふー、運命なんだからしょうがないんだよぉ」


意味わからん。ていうか腕折れそうなんですけど。


「ぼくが紙をめくるから一緒に見ようって言ってるのに。申くんってば恥ずかしがり屋さん」


と未はくすくすと笑った。その仮面ぶち割ってやろうかテメェ。


「オレがいること忘れてない?」


「わすれてねェよ!」


こほんと酉はわざとらしく咳払いする。傍観してないで助けてくれ。



×



「(……ってな事があった訳だが)」


酉から遣わされたガキ二人を見る。


「なんすか?」


寝癖短髪のガキ。コイツは確か、感情が湧きにくい世界の出身だ。感情がなかなか集まらなくて酉が苛ついてたのを覚えてるが、それ以外記憶に残ってねー世界。そこの出身にしては、結構感情豊かに見えるな。


「……?」


ストレート姫カットのガキ。コイツは機械化がかなり進んだ世界出身。要約すれば産業革命を環境に配慮せずに突き進め続けた世界。植物はほぼねーし空気は汚ねーしで最悪な土地だったことしか覚えてねーな。で、コイツはほぼ喋らん。


ってか同じ角度で首傾げんなよ仲良しか。


「仲がいいんだねぇ」


二人の頭を撫でて、にこにこと未は笑う。仲が良いのは結構だが、それで足を引っ張られるのは困る。仲良しごっこする為の場所じゃねーしな。


「おい、ガキ共。俺達の邪魔だけはするなよ」


「分かってるっすよ」


「…!」


寝癖短髪のガキが軽く頷き、ストレート姫カットのガキが意思を表示する為か力強く頷く。上司且つ年上に対する態度じゃねーな。


「(まあ、出撃も今すぐでもねーし、しばらくは世界への潜伏とコイツらの様子見も兼ねて、静かにしておくか)」


と、思ったところで、俺と未(俺達)が探す対象の情報を殆ど酉どころか、組織から一切渡されていない事と、未の()()に気付く。


……ほんと、()()()()()ろくな仕事じゃなさそうだな。



『ぐっすり』と『しっかり』を言い間違えた(らしい)未ちゃん。


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