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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第二章 その日の難逃れ
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追加分は3から10まで。


まっさらな仮面を付けたひとたちは、わたしたちを無機質な部屋に連れていった。そこには酉さんのように鼻先が尖った鳥みたいな仮面に真っ黒な外套を纏ったひとがいた。なんだカラスみたいだな、と思っていたら


「私は中級戦闘員の更に上の“星官”、『畢宿(あめふりぼし)』です」


「中級戦闘員以下の育成担当をしています」と、そのひとは胸に手を当て、優雅に頭を下げた。なんだか、その動作が酉さんっぽいなって思った。同期の子も同じように思ってたみたいで、「酉さんみたいっす」と小さく呟いたのが聞こえる。畢宿さんに聞こえてたのかは分からないけれど、なんだか少し誇らしそうに見えた。


「私と同じような()()が後14名ほど居ますが、今回、畢宿の中であなた達と関わるのはこの私、『(ひつ)』だけですから、ご安心ください」


と、黒い外套の胸元にある、石のように硬そうな留め具を示すように手で触れた。色は黄色くて、丸い。


「畢宿の、畢さんっすか?」


そう同期の少女が訊くと、「まあ。そうでありますが、私の事は『畢宿』とお呼びください」と、その人はいった。……こだわり、なのかな?


「これは、役職名に『宿』を持つ、上級戦闘員(星官)だけが身に付けることが許されたバッジです」


酉様から直接頂いたのですよ、と、胸を張るその姿は、すごく嬉しそうだった。そのバッジは、他にも色があって、各()()で形が違うみたい。色は黄色の他は桃色、緑色、橙色、青色、紫色、赤色。円形の他の形は波形、長方形、三角形、なんだって。


「あなた達は本日付で『一等戦闘員』になります。ただの二等戦闘員(アルバイト)だった時よりも、気合を入れてください」


と、畢宿さんは厳しい声色でいう。


「酉様からの直々の命にて、私には『あなた方お二人を早急(さっきゅう)に中級戦闘員まで引き上げねばならない』使命があります」


なんでかな?「そういうご命令ですから」って畢宿さんはいっていたけれど、もしかすると、理由は教えてもらってないのかも?(分かってたら理由くらいいいそうっすよね)


「それ故に上位幹部である私が直接、あなた方に教育を施します」


ふん、と腕を組んでわたしたちを値踏みするみたいに見て「普段は私の部下達、中級戦闘員が複数名へ、まとめて行いますが」と畢宿さんは告げる。(特別扱いっすかね?)そうなのかも?


「ちなみに、『邪気吸着型変換機』は、使用した事はありますか?」


なにそれ?よくわからないな、と思っていたら


「『じゃきゅ、きゅーきゃくがたへんかんき』って何すか」


って同期の子が聞いた。……なんだか違うような。


「『怪物を生み出す黒い物体』のことです」


畢宿さんはいつのまにか持っていた、怪物を作る時に使う黒い物体をわたしたちに見せた。……あれってそんな名前だったの?


「あるっす」


わたしも!と、うなずくと


「でしょうね」


知ってた、と言いたげに軽くうなずき「では、こちらへ来てください」と、畢宿さんは歩き出す。


「感じ悪いっす」


思ってもいっちゃダメ、だよ?



×



着いた場所は無機質で白い、小さな教育みたいな部屋だった。話によると、複数ある小部屋のうちの一つみたい。部屋の中には長机が二つ、二列になるよう並べて置いてあって、パイプ椅子が各長机に二つずつ。パイプ椅子たちが向いている方向の壁にホワイトボードと天板の位置が高い机が一つ置いてある。


「あなた達はそこへ」


と、畢宿(あめふりぼし)さんは長机の方を勧める。ホワイトボードに近い方にわたしたちは並んで座った。ふと天板の高い机に、怪物を生み出す時に使う黒い物体とよく似たものがいくつか置いてあるのが見えた。


「この、邪気を魔法少女の粉(キラキラ)に変換する変換機(黒い物体)は、幾つか種類があります。一等戦闘員(正規雇用)になったからにはいずれ使う事になるでしょうから、基本的なものを紹介します」


まずは、いつも使ってる真っ黒くて丸い物体を手に取った。


「邪気吸着型変換機は、邪気、要するに穢れを依代(よりしろ)やその周囲から吸着し魔装者に浄化させ、魔法少女の粉(キラキラ)へ変換してもらいます」


丸くて、ちょっと大きいボールみたいなやつ。それは表面が滑らかな質感で鈍く光を反射してて、なんとなく、絵の具を固めたものみたいな感じだとわたしは思った。


「そして、これがその『強化版』です」


さっきの黒い物体よりも二回りほど小さなものを見せる。大きさは卵くらい。


「実際、強化版(これ)を構成している穢れや薬品等の量は通常版(こちら)と同じです」


と、両方とも手に取って大きさの違いを見せてくれた。すると「質問があるっす」と同期の子が手を挙げた。


「構成がおんなじもの、おんなじ量なのに、どして怪物は強くなるんすか?」


「あとなんでちっちゃいんっすか?」と、質問の許可が降りてから、同期の子は畢宿さんに訊く。それに対して畢宿さんは「その質問を待ってた」と言いたげに頷いた。


「強化版は通常版と違い、穢れを濃縮・圧縮しているのですよ」


よく見ると強化版の黒い物体はちょっぴり、光の反射が鋭いように見える。……なんだか硬そう。


「その反動で同じ成分や分量でも強力な怪物が生み出せるんです」


そう答え、「どうぞ、お手に取ってください」と、わたしにいつも使ってる通常版の黒い物体を、それより二回りくらい小さな強化版の黒い物体を同期の少女の方に、一個ずつ手渡した。


「おお……ちっちゃい方がなんか硬いっす」


と、わたしが差し出した通常版と、その手に持っている強化版を交互に触ったり撫でたり、突いたりしながら、同期の少女はいう。


わたしも通常版と強化版の、その滑らかな表面を撫でてみる。……うん。強化版の方がつるつるしてて、思ってた通りに硬かった。出来たての硬いプラスチックのおもちゃ、みたいな触り心地。


「これは濃度が2倍のもので、主に収穫の目処が立つ後半辺りで使用します」


と、わたしたちに手渡した、怪物を生み出す黒い物体と、二回りほど小さいその強化版の黒い物体を受け取りながら、畢宿さんはいう。


「それで、こちらは1.5倍のものです」


さっきの二つの黒い物体の真ん中くらいの大きさの黒くて丸い物体をわたしたちに見せた。そして、それを真っ黒な巾着袋の中に入れる。……なにかな?


「これは、あなた達へのプレゼントです」


と、少し柔らかくなった声色で、畢宿さんはわたしたちに一つずつ、その黒い巾着袋を手渡してくれた。


わたしの巾着袋の紐はなんだか赤い色をしていて、同期の子の紐は紫の色をしてる。中には『1.5倍濃度の邪気吸着型変換機』が5つほど入ってた。


……プレゼント、もらっちゃった。


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