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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第一章 仮の面
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仮の面はどう足掻いても。


 とうとう、私が管理者として指示を出す世界の物語が始まる。


 最上位幹部になりたて(あの頃)よりも大分自身に馴染んできた仮面に触れる。いつものシンプルな形状から、衣装に合わせてレースやリボンをたっぷり使った美しい仮面(コロンビナ)に変化させる。


 あの頃よりも大分、知識が増えた。仮の面(私達)が何故、魔法少女の粉(キラキラ)を集めているのか。組織の本当の目的は何なのか。組織にとっての、最上位幹部()ではない、自身()の重要性も。


 卯は自身の衣装や、世界観に合わせた建物の装飾品に目を滑らせる。それらの装飾品の数々を、申(達)が作っていることも知った。


「…始まるのね」


 後ろも振り返らずに、卯は言葉を溢す。殆ど気配もなく後ろに現れていた酉は、面白そうに笑った。


「そうだねぇ。緊張してるかい?」


「そうね。でも頑張るわ」


頑張るしか、ない。


「さて。これで一応、教育係(オレ)から君に教えることは殆どなくなった訳だけど。最後に、何か聞きたいことはあるかな」


いつものように、酉は問う。


「いくつかあるのだけれど、いいかしら」


「うん、いいよ。答えられる範囲でしか答えられないけど」


それでも構わない、と卯は小さく頷く。


「あなた、魔法少女達に勝ったことはある?」


()()()は、勝ったことはないよ」


()()()()()()()()()()と言いたげに、酉は答える。


「……初めて会った時の『勝ち逃げ』ってどういうこと?」


卯の2つ目の問いに、よく覚えてたね、と酉は笑う。


「『自分が優勢な状態で身を引く』ってコトだよ」


「今日はこのくらいにしてあげる、って感じで切り上げて拠点に帰るんだ」


「魔法少女を倒さないの?」


3つ目。理由は殆ど分かり切っていたが、敢えてそれを問う。


「オレ達の一番の目的は魔法少女に勝つことじゃなくて、ノルマ達成することだからね。欲張って踏み込み過ぎて失敗しちゃあ目も当てられないし」


本当の理由をわざと隠して答える酉に、卯は相変わらず変なモノだと思うのだった。


「……じゃあ、最後の質問いいかしら」


「いいよ」

 

「『どうして、私達は魔法少女達に勝てないの?』」


 それは、組織に入ってからずっと、心の中にあった疑問。


「強くなる前に、さっさと倒して仕舞えばいいのに」


余裕ぶって魔法少女達を泳がせて、それで最終的には泳がせた魔法少女達に倒されてしまうなんて。


「……それは、出来ない話だなぁ」


「……どうして?」


「だって、」


分かってるくせに、と言いたげに振り返る酉は、


仮の面(オレ達)はどう足掻いても、」


珍しく、困ったような笑顔を浮かべた。


魔法少女の敵対組織(悪の組織)だからね」


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