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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
序章 エリスの黄金林檎
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下級戦闘員の日常4

その4


繰り返して似たような文章になってる箇所があるのはわざとです。


 『卯』の席が空いた。


 それはつまり、『卯』の役が居なくなってしまったということだ。


 つまり、私が補佐していた上司が居なくなった、ということだ。


 一度も顔を見ることも無く、上司と永久にお別れをしてしまった。一度くらい顔を拝んで見たかった、ような気がする。


 騒がしくなる組織内で、『次は自分が』と息巻く者達は自身の功績をそれとなく部下や同僚に語り、誰かの足を引っ張ろうとして、悪い噂を嘘偽り真実関係なく、周囲へと振りまいた。 


 それを見ながら、私は指示通りにいつもの仕事場所へと向かう。足の引っ張り合いには興味もないし、私は既にどうせ周囲から下に見られている。足を引っ張りようにも最底辺にいるのだから、これ以上下がるわけもない。 



×



 仕事の量が減っていた。


 今まで人の7倍近く仕事があったとすると、今日はその7分の2。かなり減った。強いて言うなら、こんな状況になっても自身の仕事を押し付けているそいつのメンタルの強さに感服した。


 仕事を押しつけられなくなったのは、自身の評価を上げる為、下げさせない為、だろうか。とにかく就業時間を考えて焦って仕事をする必要がないので、ゆっくりと、ぼんやりしながら作業を進めることにした。



 変わり映えのない仕事の事。


 毎日、似たような書類の分類の仕事ばかりで、自然と分類の仕方と、分類の種類をすっかり覚えてしまった。


 正確に、且つ素早くデータを読み取り、他人が見易いようにまとめる。今更ながら、私が今までしていた仕事の量が()()()()ことに気が付いた。



 昨日の事。


 もうほとんど何も思い出せなくなっている。何処で、誰に会って、何をしたのか。仕事の量が減ったのは、そこで出会った誰かのお陰だろうか。それとも、『卯』がいなくなったからだろうか。


 何方にせよ、今の自分が今までよりゆっくり出来るのでどうでも良い。 



 最近出来たらしい、お店の事。


 お菓子の店だっただろうか。休日に近くを通りかかった時、若い女性達が列を作っていたのを眺めていた。同僚達とは一緒に行きたくない。きっと延々と愚痴を聞かされるだろうし、やっぱり自分のペースで楽しみたい。



 持ち物の買い替えや、不足について。


 あの製品がそろそろ無くなりそうだとか、あれが無くなっていたような、とか。不安なものは今日確認しておこう。




 そういえば。


 色々と考えていると、常日頃……とまではいかないが、少々疑問に思っていた事を思い出した。最近忙しすぎてすっかり忘れていた。最上位幹部(上司)に出会ったら聞いてみたかったのに。



「……聞きそびれちゃった」



 こぼれた言葉は、無機質な部屋に響いた。


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