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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第一章 仮の面
35/86

焦る量産品。


「『仮の面』が、妖精の国に行った!?」


 (うつろ)な妖精の報告を受け、若い男が素っ頓狂な声を上げた。


「もしかして、今までの色々が妖精の所為だって気付かれたの!?」


顔面蒼白の若い女は落ち着きがなく、うろうろと廃墟の中を歩く。


「そういえば、妖精が『どうしてリミッター解除について知ってるの』とか言ってなかった?」


もしかして、結構色々とばれてるんじゃ、と子供も心に余裕がない様子で爪を噛んだ。


と、


「まあ、気付かれてしまったのはしょうがないよね」


子供の声色が変わった。ような気がした。


「それじゃあさ。次、どうするの」


気のせいだったようだ。いつもの声だ。


「そりゃあ、……やられる前にアイツらを消すしか無いだろ」


子供の問いかけに若い男は答える。


「それが良いわ」


若い女は賛同する。



「妖精をけしかけて」


「脅威を先に排除して、」


「証拠を隠滅して。」



そして、


逃げてしまえば、大丈夫だ。



×



「まだ、仮の面は妖精の国にいるらしい」


虚ろな目の妖精から報告を受けた若い男は、仲間に告げる。


「じゃあ、そこを狙おう」


子供は怯えの混じる声で提案した。


「不安材料はさっさと消したほうがいいよね」


「確かに。じゃあ、魔法少女と契約してる妖精を重点的に使って」


若い女は計画を練り始める。


「妖精と魔法少女が直接手を下せば、俺達が逃げる時間もできるしな」


若い男が逃亡経路について幾つか目途を付けたようだ。


「魔法の残滓とか、においとか、僕たちが居たっていう証拠も色々消さなきゃね」


そう、子供がにおい消しの道具と『草』を取り出した。子供は道具を起動させ、根の付いたままの『草』をゆっくりと大きく振りながら、廃墟内を隈なく歩く。


「何してんだ?」


 子供の行動に疑問を持った若い男が問うと、


「この草、周囲の魔力を吸着する性質を持ってるんだよ」


子供は少し得意げに話す。


「複数ある『草』の中で、凄い少量でもしっかり吸着してくれるんだ」


その『草』は自分達の拠点周辺を覆っている植物でもあった。自分達の拠点をこの場所に選んだのは、その草が沢山ある事、妖精の国に近い事等が理由あった。


「へぇ。意外と役立つ知識持ってんだ」


若い女は見直した、と子供をほめる。しかし、子供自身、何処でその知識を得たのかは覚えていなかった。


「おい、さっさと終わらせろ、そろそろ妖精の国から出るらしいぞ」



×



「ちゃんと、仮の面(アイツら)のところに行ったみたいだな」


 若い男は妖精や魔法少女の気配を遠くに感じ、安堵の溜息を吐いた。3人は、拠点としていた廃墟から随分と離れたところに来ていた。


 大変であったが、移動には一切魔法を使わず、妖精の国が風上側になるようにして移動してきた。あともう少し歩けば、人の多い場所や貿易港などに着くだろう。証拠もすべて消したので、紛れさえすればもう二度と見つかるまい。


「ある程度の薬はもう抜けてるはずなのに、ちょっと揺さぶっただけで言うことを聞いてくれるなんてね」


若い女は妖精ってお人好し、と嗤う。若い女は、まだ薬の余韻が残っている《》に己の犯してしまった罪を自覚させ、罪悪感に苛まれているところを突いた。薬で意識があまり覚醒しきっしていない《》に無理やり色々と(誘導的に)会話し、判断させ、自己催眠状態にさせたらしい。魔法は使っていないし、自ら自身の催眠にかかっている。そのため、自分達は大丈夫だと踏んだ。


「本当に、扱いやすくて助かるなぁ」


そう、子供は云った。


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