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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第一章 仮の面
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卯、妖精の国に行く。


「……ちっさ」


 思わず丁寧でない言葉が溢れる程に、妖精の国に着いたら思った以上に建物が小さかった。

 国の入り口だと思われる門の高さが(仮の面では)小柄な卯の肩くらいまでしかない。『外から来る相手の事を考えていないのか』と言いたくなるが、もしかするとこの国で作れる最大のサイズだったのかもしれない。


「な、なんのご用ですか」


 門の前で中の様子を伺っていると、熊のぬいぐるみのような妖精が声をかけた。兵士のような格好をしているので、門番や衛兵なのだろう。妖精の大きさは膝下にも満たないくらいの大きさだった。


 妖精は怯えたように震えながら、それでも仕事を全うしようと必死に、しっかりとこちらを見上げていた。よく考えてみると、自身よりも圧倒的に大きなものを相手にする、というのは怖いものかもしれない、と思い、その『あからさまに怯えています』としか言えない態度には目を瞑る事にした。


 卯はビクつく妖精にゆっくり近付いて、そっと膝を地面に突き、


親書(これ)、何だか分かるかしら」


紙の用途もなんと話しかければ良いのかも分からなかったので、酉が言っていたように紙を妖精に見せる。


「へあ、こ、これは……」


すると、妖精は慌てて門の横にある受付のようなところに戻り、何処かに連絡を入れ始めた。


「……はい、はい。……では、そのように」


連絡切ると


「たいへん失礼しました、こちらへどうぞ」


と、受付の奥にある客間(推定)に招いてくれるようだった。が、微妙に小さくて屈むのも面倒だと考えた卯は、


「少し待って」


そう妖精に告げると、一旦門から離れた。



×



「ここまで来れば良いわね」


と、妖精の国の入り口から死角になる箇所で、『ねこ』を胸元から取り出した。卯が何をしようとしているのか察した『ねこ』はその小さな口を尖らせた。


「ねこ、良いわね?」


『ねこ、(らく)したかったにゃ』


『ねこ』を鎖骨の間に押し込むような動作をした後、ばっと手を広げる。その瞬間、卯の体が柔らかい光に包まれたかと思えば、その身体は2つに分かれていた。


「……ふん。まあ、このくらいの大きさなら大丈夫そうね」


 手足の様子や格好などを確認しながら、髪の長い方は呟く。


 呟いた方は、卯を幼くしたような姿をしていた。月白色の髪を翻し、深紅に煌めく目を瞬かせる。半分くらいの身長になったので、これならある程度は妖精の国の内部を楽に移動できるだろう。


「にー…」


 しょんぼりと項垂れるもう片方も背格好と顔は同じだったが、仮面が兎ではなく、猫を模したものになっている。卯の髪は腰に届くほどのロングヘアだったが、こちらは肩くらいで切り揃えられた墨色のボブヘアーだ。服もスカートではなく、ショートパンツである。


「これで良いわ」


 兎の仮面の方が小さく息を吐き呟くと、


「……ほんとに、だいじょうぶねこ?」


猫の仮面の方は不安そうに瑠璃色の目で周囲を見る。その様子に、一体何を不安がっているのだと首を捻り


「大丈夫に決まってるでしょう。さ、早くさっきの門のところまで戻るわよ」


さっさと用事は済ませてしまおうとばかりに、くい、と兎の仮面の方は乗り気でない様子のその袖を引っ張る。


「……ねこ、おいしいおやつ所望する」


 ぷくりと、頬を膨らませ不貞腐れる猫の仮面の方に、適当に返事をした。


「あとでね。コレが終わってからよ」


「ふに……」



×



「あ、あれ?! ふ、増えた」


 熊のぬいぐるみのような妖精は、首から下げる名札のようなものを持って門の前で待っていた。戻って来た卯の姿が変わっていた事に腰を抜かしたのか、卯達を見上げて持っていたカードを放り投げ、尻餅をつく(どちらかと言えば増えた方にびびっている)。


「ごめんなさいね、この子(ねこ)の分もお願いして良いかしら」


カードが地面に落ち、タン、と硬い音が虚しく鳴った。


「は、はい。いますぐお持ちします」


 妖精が落としたカードを拾い上げ、再び受付のような場所の奥に引っ込んだ後、卯は周囲を観察するように視線を巡らせた。


 建築様式、とかそういうものはよく分からないが、独特な素材やデザインをしているようだ。妖精の国内部へと続く地面は白い石畳のようなもので覆われ、門やその横の受付(推定)等の建物も恐らく、石材や木材を組み合わせたもので出来ていると思われる。


 だが、色合いや形状がパステル調で柔らかい。まるで、古さとポップさ、素朴さを混ぜ合わせたような感じだった。はっきり言ってよく意味が分からないような状態であったが、そういう印象を持ったのだった。


 門の向こうに見える妖精の国は、快晴の日のようにキラキラと強い光を放っているように見える。「サングラスと日焼け止めでも塗っておこうかしら」と、そう、ぼんやりとてきとうな事を思ったところで、


「大変お待たせしました。身分証明カードをお二人分、お持ちしました」


と言う妖精の声が聞こえた。



×



「これは、妖精の国(この国)にいるかぎりはその身の安全をほしょうする役わりをもっているのです」


 門番の妖精は、卯と『ねこ』が受け取った身分証明カードの説明を行う。


 カードは幼い姿の卯達の手のひらに収まるくらいの大きさで、保護の為かホルダーの中に入っている。そして、そのホルダーに紐の留め具が付いており、卯達はそれを首から下げているのだった。


「ふーん」


 卯はホルダーごとカードに触れ、良く見る。カードは硬い素材でできており、重くはないが少し厚みがあった。恐らく、中に何か機械でも入っているのだろう。


「らんぼうにあつかうと壊れてしまうので、大切にあつかってください」


それが位置を知る為のものでも、生体反応を確認する為のものでも、どうせ持ち帰れないのだろうから、卯はあまり興味が湧かなかった。


「じゃあ、このカードがなかったら保証されにゃいってことねこ?」


「えっ」


 カードを光に透かしたり、裏側を見ていたりしていた『ねこ』がそう問い掛ける。その言葉に硬直してしまった妖精に、卯は雑なフォローをした。


「気にしないで。悪気は無いの」


「……はぁ…?」


よくわからない、と妖精は首を傾げたものの、『悪気がないならいっか』と言いた気に持ち直し


「それでは、使いのものが着いたようなので、お城までごあんないします」


そう、卯達を門の内部へ案内する。



妹に妖精の国について「どんな感じがいいかな」と聞いた時、


「らぴゅた」


と返事が返ってきました。


ハピネスをチャージする幻影帝国のイメージをそれに混ぜてください。



意味わからないでしょう?


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