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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第一章 仮の面
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妖精、って何。その2


しのは我慢強くないので、(一応)書き終えた小説を書き終えたらすぐさま投稿してしまいます。


なので、既に投稿されていても、ミスや足りないところを書き直したり書き足したりして、(少し)内容が変わっている可能性があるので、(仮に完結したら)読み直してみてください。




「じゃ、頼んだぜ」


 未を預ける(押し付ける)と、申は何処かへ直接行くらしく、人がひとり通れる程の大きな暗い穴を開き、くぐっていった。

 居なくなった空間に向けて「申くん…」と未は実に寂しそうな声で申を呼んだが、申は戻ってこない。


「申くんってやさしいけど、いじわるなんだよね」


テーブルに突っ伏しながら、()ねる未は呟いた。


「はーん、ツンデレってやつですか」


けっ、と唾を吐きながら戌は相槌を打つ。……そういうものなのだろうか。戌はどうも酉や申には対応が厳しいらしい。


「ネタにはなりますけど申殿(アレ)はお呼びじゃねーんですよ」


「つんでれ……?」


未は不思議そうに首を捻ったが、まあいっか、と考えるのを止めた(悪口でなければ何でもいいらしい)。



×



「それで、何か話してくれるの?」


 卯は未に問い掛ける。未も妖精らしいので、聞いたら何か、妖精についての新しい情報を教えてくれるかもしれない、と思ったからだ。


「えーっと、妖精のこと? だっけ?」


テーブルから顔を上げ、未は首を傾げる。卯がそれに頷くと、奥で作業をしていたらしい亥が人数分のお茶を持って戻ってきた。


「アタシも、聞いてもいいかい? アタシが知らなかった事も色々知られそうだしね」


「うん、いいよ。たくさんお話ししても、()()()()()()()()()もんね」


 亥の問いかけに未は快く返事した。


「じゃあ、早速だけど」


 卯は切り出す。


「あなたの知っている妖精の情報って何?」


「大量生産の妖精について、まずお願いしてもよろしいですか?」


ざっくりした卯の質問を捕捉するように、戌も問い掛け、「知っていればで良いんですけどね」と未を促す。


「えっと、ぼくがあそこ(妖精の国)をでるまでのことしか答えられないんだけど、」


ごめんね、と前置きを入れて未は語り出す。


「『いっぱいつくられる(大量生産の)妖精』についてなんだけど、たしか『契約ができる妖精をたくさんつくりたい』ってことで研究がはじまったんだ」



×



 大量生産の妖精は、元々は使()()()()()()()()()()()()()()()()としての運用を目的としていた。

 しかし、魔法少女の粉(キラキラ)のエネルギー効率の良さが発見されてからは()()()に『契約器官』を持った妖精を作り出し、それらを契約妖精として育て上げることにした。


 『契約器官』とは契約妖精のみが持つ、魔法少女と契約で必要な臓器だ。契約器官は妖精達の核の直ぐ前に有り、核と太い管で繋がっている。


 契約器官の大きさが魔法少女の基礎的な魔力量、契約器官の部屋の数が契約できる魔法少女の人数となっている。因みに限界数は、未の知る限りでは7名くらい、らしい。


 意図的に作るにしても、契約器官を持つ妖精の発生率はかなり低いらしく、大量生産型でも、大樹産型でも、契約器官持ちだと判ると、契約妖精を育成する特別な機関に通う事になる。また、その妖精に家族がいる場合は国から補助金(の、ようなもの)が送られ、生涯不安なく暮らせるとのこと。



「いちおう、ぼくも契約器官を持っているみたいなんだけど、使ったことはないかな」


 未は思い出すように頬の辺りに手を当て、うーんと(うめ)く。


「学校には行ったけど、そういうおべんきょうをぼくは()()()()()()し、むりに使うと、傷んじゃうんだって。本に書いてあったんだ」


 未は契約器官を持っているらしいが、使い方は知らないらしい。未の語る内容に相槌を打ち、卯は少し気になった事を亥に問う。


「あなたは、契約器官(そういうの)は持ってないの?」


その問い掛けに、亥は静かに首を振った。


「アタシは……契約器官(それ)は持っていない。だけど、頭は良かったからそれとは別の機関には行ったね」


妖精の国の学校は、複数の種類があるらしい。その話も後で聞こう(忘れていなければの話だが)。



 妖精が宿らなかった『運命の大樹』の実と妖精が生まれたあとに残る実、大樹の葉を利用して生み出される大量生産型の妖精は、契約器官を持つものを契約妖精育成機関へ、持たなかった妖精を兵士育成機関へと送られ、妖精の国に貢献するように()()される。


 因みに大量生産型の妖精の核は、主に葉を固めたものでできており、自然発生型や大樹生まれの妖精と違い、自然死しても何も残らない。


 こういった生まれ方や死に方の違いによって、実から生まれた妖精を『種妖精』、大量生産型の妖精を『葉妖精』と呼ぶ()()もいる。あまり良い意味では使われず、相手を貶す意味でよく使われる。生まれ方の違いで妖精達は互いにいがみ合っているらしい。



×



「……なんだか、アタシが居た時よりも酷くなってるみたいだね」


 苦々しい声色で、亥は呟いた。


「それほど『同種への仲間意識』が高いのならば、僅かでも違う、『個性の強い同種』が生まれれば、排除活動が盛んになりそうですねー」


「……そうだね」


能天気な声色の戌の言葉に、静かに未は同意した。


「『亥が居た時よりも』って事は、その前から妖精の間では生まれとかで何か(いさか)いがあったの?」


そう亥に問い掛けると、


「そうさね……さっきアタシが言った、『機関』の話も絡んでくるんだが」


「全部話すと長くなりそうだから、大まかな端折(はしょ)った内容になるけど、それでも良いかい?」と、亥は卯の方を見る。「教えてくれるなら」と卯が頷いたのを確認し、亥は


「じゃあ簡単に、」


と、妖精の社会について話す。



×



「要は、妖精は階級社会になっていて、大体『政治を行う妖精(為政者)』、『国を守る妖精(防衛者)』、『祭礼を取り仕切る妖精(聖職者)』、あとは『契約妖精』と『物を生み出す妖精(生産者)』に分かれている」


「まあ、人間達の社会とそう変わらないが」


「その中で、為政者と聖職者、契約妖精の地位が最上位にあって、その下に防衛者、最下層に生産者がいる」


「その分け方は親妖精の身分ではなく、『生まれた瞬間から持つ素質』で分けられる。……妖精は血筋なんて無いからね」


「その『素質』の見分け方は、運命の大樹の花の(つぼみ)を持たせ、その蕾が『咲いた花の形』で決まる」


「何故か、どの場所の蕾を持たせても特定の形の花しか咲かないから、『間違いの無い分け方』らしいが……」


「それで。……後はなんとなくでわかるだろう。その分類(ごと)に妖精達は専用の機関に入れられる。そして、その中でまた、『上級』『中級』『下級』で分けられ、上の階級の妖精が下の階級の妖精に()()()()()()()()()と言う訳だ」


「為政者や聖職者、契約妖精の『下級』は、その下の防衛者に、防衛者の『下級』は更にその下の生産者にそれを行う」


「……そして、それの中で更に『大樹生まれ』か『工場生まれ』かで差別が起こる。だから、『更に酷い事になっている』と言う訳さ」


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