考える量産品。
食糧の攻撃は、意外と効いていなかった。上層部に効かないだろう事はなんとなく分かっていたが、下位の戦闘員達にも殆ど効果が無かったように思えた。
きっと、何処からか食糧を奪っていたに違いない。『仮の面』は、悪の組織なのだから。
書類改変のその後、送る食糧に関係のある妖精達や、その周辺に調査が入ったことも、知っている。 普通の妖精達の記憶は既に改竄しているので、直接的に漏れることはないだろう。
原因の解明や調査をすると知って、少しだけ安堵を覚えた。強かでは無いと、妖精から魔法少女の粉を盗もうだなんて思いつく訳がないのだから。
自分は、間違えていない。
×
食事が無くなるだけでは、『仮の面』は弱らない。予想通りだったけれど、予想以上に効果が無かった作戦。効果のない作戦は、続ける必要はない。
「それじゃあ、次はどうする」
次はなにをしようか。なにをすれば、どうやったら、『仮の面』を倒せるだろうか。妖精の魔法は。
「魔法少女達の力を上げてみる、とか」
確かに、そうだ。パワーアップすれば、『仮の面』の連中を倒す事ができる。そうすればそのあと、『仮の面』以外も、たおせるし。
けど、どうやって魔法少女たちの力を上げよう。
「敵対組織の力を借りるのは、いやだな」
その言葉に、頷く。敵対組織に借りなんて作ったら、一体何を請求されるか分からない。 気がかりは、少ないほうがいい。
「それじゃあ、自分で魔法少女達の力を上げないと」
誰か の声が 聞こえる。
なにか、あったような 。
じぶんの力だけで、魔法少女を強くするやり方が。
確か
「リミッターを、はずす」
それだっけ
「リミッターを外せば、強くなる」
なんだか
思考が
溶けていく
×
魔法少女達のリミッターを外してみる事にした。
契約している夢を持つ少女達には、内緒にしておこう。これは、妖精の国と『仮の面』だけの問題だ。余計なことは伝えないままの方が、魔法少女達は安心して戦えるだろう。
眠る魔法少女を起こさないように、静かに手を翳す。そうすれば、薄らと契約時に結んだ魔法陣が現れる。魔法陣の一部に触れ、文字を書き換える。
「っ、」
ぱきり、小さく何かが割れる音がした。これで、魔法少女に掛かっているリミッターは外れた筈だ。痛みはないはずなのに、魔法少女は小さく呻いた。
何故だろう。身体の中心がきゅう、と締まる感覚がした。
まとめて契約内容の変更は出来ないので、できるだけ素早く済ます。
「おやすみ、魔法少女」
他の魔法少女達も、リミッターを解除する。その度に、何故か身体の中心が痛んだ。
×
他の、魔法少女との契約の書き換えを済ませた。何故だろう。あたまがいたい。
じぶんの不調はそこまで問題ではない。魔法少女達は強くなったはず、なのだから。
魔法少女達を守るリミッターの解除。
それは、魔法少女達の力を上げるために必要なものだ。そのはずだ。
『仮の面』を倒すためには必要な処置だ。教科書にも載っていた、方法。
そういえば、『リミッター解除』だなんて、だれが思いついたんだっけ?
「なにを言ってるの」
《》はさいしょからひとりでしょ?
「ひとりごとが大きいのはよくないよね」 疲れてるんだ、きっと。
なにか、たいへんな事をしてしまった気がする。 だいじょうぶだよ。
「成功すればいいんだから」
なんのために、仮の面を倒そうなんてことをしようとしてるんだっけ。
思いだした。
「これで褒めてもらえる、かな」