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仮の面はどう足掻いても。  作者: 月乃宮 夜見
第一章 仮の面
13/86

初出撃。


バケモノ→怪物

に表記が変わりました。


『初』というよりは久々の出撃な卯。


 『ねこ』に体当たりされる感覚で目が覚めた。目線だけを横に向けると『ねこ』がじっとこちらを見つめている。ゆっくりと瞬きをし、上半身を起こす。すると側にいた『ねこ』がどこからともなく櫛とブラシを虚空から出し、それを器用に操って卯の髪を整えていく。


「……」


 ぼんやりと時計を見ると辰の刻。人間達が活発的に活動し出す時間帯だ。予定よりほんの少し寝坊してしまったようで、卯は慌てて身支度を済ませて待ち合わせの場所に行く。


 今日は最上位の幹部となってから初めて出撃する日だった。本来はあまり行う必要のない内容なのだが、卯が「上位幹部になってから、殆ど書類の分類などの事務仕事しかしていない」と答えた事で、一度、確認の為に補助付きで出撃することになったのだった。今回は出撃し慣れていて説明の上手い同僚の最上位幹部に補助をしてもらう。



×



「よう、お前早起きだな」


 待ち合わせの時間丁度ぴったりに、補助の申は現れた。


「別にこうして俺達が直接出撃しなくても、誰かが出撃してる動画を解説付きで鑑賞するだけのやつでも良かったんじゃねーの?」


「クソつまんねー教習みたいになるけどな」と呟く申は、今日は頭蓋骨のような半面ではなく、顔全体を覆う()()()猿の面と(たてがみ)のような被り物をしていて、顔の周辺をしっかりガードした格好だった。おまけにマントも羽織っているのでかなり動き難そうだと卯は思ったが、申は軽快に動く。


「これは()()()()()()()()』の格好だ。とりあえず言っとくが、見た目よか暑くねーし軽いからな」


 自身の格好を見つめていた卯に、申は軽く答えた。


「お前も色んな格好や()()のストックを持ってる方がいいぞ。後々楽になるからな」


 ちら、と卯の格好を見て申は言う。卯の現在の格好は組織で配布されている制服に、その世界の設定に合わせた上着をただ羽織っただけの姿だ。一応、認識を阻害する仮面の効果で付け焼き刃のようには見えていない(筈だ)。


「けどなぁ……俺、こんなに早い時間に起きる事そうないんだよなぁ」


 欠伸を噛み殺しながら、申は今回行う予定の書かれた資料を取り出した。「誰だよこんな朝っぱらから外に出かけるって提案した餓鬼……」と、小さく毒付く。


()()辰の下刻(8時20分~9時)なのに?」と卯が訊くと、「()()辰の下刻なんだ」と返事が返ってきたので申は随分とだらしない生活をしているのかも知れない。


「今日、こんな朝っぱらから俺達が出撃するのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。……餓鬼は元気だよなァ」


 面倒そうに後頭部をガリガリと雑に掻き、申はもう一度、欠伸をした(次は噛み殺さなかった)。申は組織の構成員達ではなく、この時間帯に出撃する起因となったイベントに文句を言っているのだった。


「俺達が新しい場所に拠点を置くと決めた時、まずは『この地帯に魔法少女が居るか』を確認する。で、もし居なければ、『魔法少女になれそう/なりそうな対象(獲物)が居るか』探る」


 申は小さな機械を取り出し、少し振った。何か反応を示したらしいそれを忌々しげに睨み付け、


「戌や寅とかは『野生の勘』ってヤツで探すが、確実に見つけたい場合は子の奴にでも専用の機械(もの)でも作ってもらえな」


機械を(ふところ)に仕舞った。


「魔法少女になりそう、又はなれそうな対象の大まかな見つけ方は、このテンプレートを見れば判る」


 申は持っていた資料の一部を卯に見せる。魔法少女の色とその性格、持ち得る武器等の情報が記載されていた。名前や住所、生年月日に、容姿を確認できる写真。他にも学歴や趣味、特技等が書き込まれており、まるで履歴書のようだ。


カリスマ性を持つアホ(ピンク枠)優等生やお嬢様(ブルー枠)気の優しいやつ(イエロー枠)が居れば、ほぼ確実に妖精共(アイツら)はやってくる」


誘蛾灯に群がる虫ケラみたいなもんだな、と少し嘲笑めいた短い息を吐き、


「今回は、もう既に魔法少女が居る場所を狙ったから探るというか、探す作業は無い」


資料を虚空に仕舞った。そのまま卯の方を見て


「生憎、近くに魔法少女が居るみたいだから出撃だぜ」


近くで談笑しながら何処かへ向かっているらしい少女達を、雑に指差した。先程の申の持っていた機械は、このことを知らせていたらしい。


下位戦闘員の頃(今まで)みたいにそう簡単に攻撃喰らったり、やられたりするなよ?」


 上位幹部としてのプライドやブランド、部下に示しがつかなくなるからな、と言って申は後ろに下がった。


「ここからは、お前1人でやれ。死にかけたら助けるぐらいはするからな」


 卯は少女達の話しに耳を傾ける。どうやら今日は休みの日で、魔法少女達はみんなで買い物(仲良しイベント)をしていたようだ。



×



 卯はとりあえず電信柱の上(高いところ)に乗って、程良く『穢れ』の溜まって居そうな人間(依り代)を見つける。そのあと、()()()()()()()()文言を発して依り代を怪物に変化させる。この、『依り代を怪物に変える』行為は、『仮の面』を含め、妖精や魔法少女と敵対する組織にとっては最も重要な仕事だ。

 それは妖精や魔法少女と敵対する組織の殆どは必ずと言っていい程出来る行為で、これが出来なければ『悪の組織じゃない』と()()()()言われてしまう。(別に組織の方針次第では行わなくても良いのだが、あまりそういう事を言われたくないもので、その結果、殆どの妖精や魔法少女と敵対する組織は依り代を怪物に出来るようになっている。)


 『仮の面』が依り代を怪物に変化させるためには、組織内で定期的に配布される黒い物体を使う。その物体は真っ黒で艶があり、絵の具を固めたような印象を持つ。その大きさはソフトボール(3号ぐらい。直径大体9cm)ほどである。

 その物体はとりあえず狙いを定めて投げれば、魔法的パワーによって対象に必ず当たるという便利な代物だ。最悪、明後日(あさって)の方向を向いて、てきとうに投げても対象を決定していれば当たる。(見栄え的にお勧めはしないが。)


 怪物は基本的に理性は無く、依り代の抱えた穢れ(暗い感情)のままに動き出す。依り代が「リア充爆発しろ」とか思っている人間だったならば、カップルや幸せそうな人達を狙って攻撃する。


 そして、そのまま怪物を放置していれば――



「なんて酷いことをするの?!」


 薄ら桃色がかった髪の女の子を中心に、騒ぎを聞きつけた複数の少女達が集まる。


「変身、いくよ!」

「「「うん!」」」


「……来たわね」


卯は憂鬱そうな溜息と共に腕を組み、少女達を無表情に見下ろした。



――数分もしないうちに、魔法少女達が現れるのだ。



×  怪物にする物体について ×


怪物に変化させる物体は、各人/モノに月の初めにノルマの量だけ配られる。


あとは書類を申請したら申請した個数もらえて、使い切ったら再び申請できるようになる(使い切るまで追加はできないが、なんらかの事情があれば考慮される)。


実は怪物を生産する物体の正体は、妖精の国や組織内で生産されて()()()()廃棄物を利用した物。


要するに、ゴミを使って怪物を生み出し、それを魔法少女達に浄化させる。


妖精、組織達はゴミ処理が出来て、依り代の暗い感情も浄化出来る。 全く持って、万々歳なシステムである。


因みに、浄化されたあとの廃棄物は『願いを叶える物体』などに変化し、魔法少女達が集める。


無 駄 が な い っ て い い ね !


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