記憶現像システムとは(1/2)
過去を知り、未来を変える。
まるで絵に描いたようだ
魂が込められている
素晴らしい作品には、そう言った比喩表現が用いられる。
しかしそれは当然である。
何故なら本当にその通りなのだから。
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記憶現像システムとは、生物が記憶するものを物体として表現するシステムのことである。
これは記憶できる全ての生物に対応し、その表現方法は様々である。
絵画、写真、フィギュアーー
このシステムにより技術が認められ、日本の先進化が進む。そして生活水準が向上し、より豊かな大国へと成長した。
しかしこの画期的なシステムには当然のようにデメリットも存在する。
それは「表現するためには″寿命″を必要とする」ことである。
体積や解明度、脳の占有率や表現方法が大きければ大きいほどたくさんの″寿命″を使う。
そしてこれらは″一瞬″しか表現できず、動画や音声など時間をかけるものは表現できない。
日本の犯罪解決率が上がった裏には、真面目な警察官の寿命を使った証拠集めがあり、
世界に誇る芸術家が多く選出される裏には、寿命を賭してまで表現される作品があった。
昨今ではこのシステムを利用した安楽死が発案され、それを求めて多くの人が日本を訪れたとされている。
システムには専門の技術が必要となり、実行される上で「必要となる寿命の長さ」「表現する媒体」の確認が必須条件として法律で決められている。
そのシステムを利用した営利的活動も跋扈しており、その繁栄の反面、詐欺に利用する者も現れ始めた。
国家は「記憶現像システム法」を定め、個人の意思に反する現像行為はしないこと、寿命・媒体を正しく提示すること、資格のない者のシステム施行を禁止することなどを制限した。
また未成年の利用は可能だが、必ず保護者の許可が必要である。その裏では薬物売買同様に、金銭目的で″寿命″を買い取り、現像する違法者がいる。システムの利用は個人の自由ではあるが、正しくシステムの美点・汚点を理解することが求められている。
教育機関では、記憶現像システムの正しい理解を深めるよう各職員に通告している。しかしシステムの理解が追い付かない職員が多く、近々教員採用試験にシステムの理解について問う問題が組み込まれるという話が出ている。理解していない上での教育は危険であると指摘されて以来、情操教育と同等に重んじられるようになった。
このように、このシステムが導入されることにより、世界の仕組みは少しずつ変化していった。またその時代の中で、システムの在り方も変わりつつあった。
この物語に出てくるものはフィクションであり、実在する諸団体および人物には一切関係ありません。