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短編

可哀く縋ってくれ

作者: どっすん丼


 今日も今日とて学校だ。朝起きて、顔を洗って、食事を摂る。身支度をもろもろ整え、机の上に置かれた金をサイフに入れ、割れた酒瓶を部屋の隅へと除ける。


 「うーん、今日は良いてん、」


 ――ブツンッ。


 (……ん?)


 周囲が突然にブラックアウトしたかと思うと、今度は四方八方が真っ白になって、なんか、目の前に、見知らぬ老人が……居る。


 「すまんのう」


 (え? んん? はい? え……えぇ?)


 今、さっき、たぶん自分はカーテンを開けて、朝日を浴びた。記憶が確かならそうであるからして、こんな上下左右あらゆるところが真っ白で、奥行きとかいう概念が消えた場所に来た覚えはない。なんならただの一歩さえ踏み出してない。直立して、カーテンを開けただけ……だったはずなんだけどなあ!?


 「実はの、人数が足りんのじゃ。ちゃんと設定された基準の、××億人までは増やせたんじゃがの、あとほんの、×××人が足りんでの」


 白いひげをたっぷりと蓄えた老人はそう言い、小さくため息を吐く。俺はこの辺りで、自身に起こっている異変に気付く。


 指先一本、動かせない。喉を震わせることも、瞬きすることも、できないのだ。


 「少し分けてもらうことになったんじゃが、突然新しい世界に放り込まれては可哀そうじゃから、こうして謝ろうと思ってのう。すまんのう」


 (待て待て待て待て待て待て!! 何言ってるんだよこの人!? え? はあ? いやこんなの夢だから! これは夢これは夢これは夢!!)


 意味の分からないことを言う老人が、真っ白な空間に俺を呼んで謝る。そういう夢であって欲しい。あって欲しいと思っているのに、焦りと恐怖が止まらない。冷や汗が出ている感覚がするが、俺は――さっきから呼吸もできていない(・・・・・・・・・)のだから、きっと皮膚は乾いたままなのだろう。


 「勝手が違っては生きにくかろうと思って、きちんと対策はしておる。向こうできちんと、与えられた分の寿命は生き抜いておくれ。でないとまた、新しいのをもらわねばならんからのう……」


 ふう、と老人は嘆息して、持っていた杖をこつん、と虚空にぶつける。俺はまた世界が真っ暗に変わり、そして――次の瞬間、自分の家に戻されたことを悟った。


 「……ゆ、め?」


 開いたはずのカーテンが閉じられている。


 困惑して辺りを見渡すと、血や酒のシミがついていたカーペットは真新しいものとなっており、へこみの目立っていた壁が平面を保っていることに気づく。

 割れた瓶も、ビール缶も、昨日帰ってきて早々に『あの人』が吐いたゲロも消えていた。


 あらゆるものが消えた部屋の中、机の上にぽつんと本が置かれている。表紙には、『The world』『世界』『세계』『El mundo』『Мир』と書かれていた。


 「……お、俺ん家じゃない?」


 恐る恐る、とカーテンを掴み、外を見る。そこには――。


 ――何の変哲もない、だけど、見覚えの全くない平凡な街並みが広がっていた。


 「み、見覚えがねー……」


 家の中を散策すると、だがしかし、間取りは以前(?)と同じだった。靴箱には俺の靴だけがあり、不意に確認した通帳には、ぴったり百万円が入っていることが記入されている。他に引き出した後も振り込まれた後もない。新品で、綺麗な通帳だった。


 「こわいこわいこわいこわい。SAN値削れるって」


 がくん、と項垂れると同時に、遠くからチャイムの音が聞こえる。学校が始まったらしい。


 俺には登校する余力など、まったく残っていなかった。



◆◆◆



 通帳から金を引き出すことには成功した。当面、生きてはいけそうだ。


 某ハンバーガー店を彷彿とさせるワクドナルドなる店舗でハンバーガーを買うと、ジャンクな味にほっとする。ポテトを食べながら街並みを見て回ると、やはり見覚えはないのだが、生活するのに重大な支障はなさそうだった。


 ただ、一つ気になったのは、時折薄暗い路地裏に、赤い絨毯が引かれていることだ。この都市特有のルールなのだろうか。その絨毯のそばには、建物の裏口と思しき扉があった。


 俺がまじまじと見ていると、大通りからそこへ入っていく刺青を入れたオッサンに不審そうな顔をされたので、その奥にいた猫に気を取られたふりをしてやりすごした。

 何かしらの常識だったら、悪目立ちしてしまうかもしれない。なるべく早く真相を掴みたいところだった。


 一度家に戻って、また散策してみる。

 靴は増えていなかった。誰も帰ってこない、俺だけの家らしい。一緒に暮らしていたはずの人間は、いつまで経っても帰ってこなかった。


 そういえば、ポケットに入っていたスマホは電波を拾ってくれていた。それを用い、不気味で後回しにしていた本のタイトルを検索したところ、それらはすべて『世界』を意味する単語らしい。

 ぺろり、と本を捲ってみると、一ページ目を除き、すべてが白紙だった。一ページ目には、表紙と同じ文字の羅列が、淡く発光している。ど、どういう仕組みですか……?

 日本語――或いは中国語――で『世界』と書かれているところに触れると、本が一瞬だけ、なんと自立して浮いた。手から一センチぐらい。俺は飛び上がって壁に頭をぶつけた。


 「やばい……」


 やばい。薄々感じていたが、痛みを感じた。


 完全に夢じゃないし、今の本が重力を無視した現象といい、どう考えても超常的な力が働いている。


 「やばい……」


 何が『やばい』のか、やばいことが多すぎて上手く言えないが、とにかくやばい。

 時計を見ると、午後六時を指している。もしも俺がしているバイトのシフトが不変だった場合、俺はそういう意味でも『やばい』ことになる。


 が、あまり遠出をしたくない。


 バイト先は学校のすぐ近くのラーメン屋だ。学校はここから歩いて一時間、自転車で三十分。

 ずいぶんと様変わりした街並みに迷子にならずに到着することは無理だし、あの赤いカーペットのような、よくわからない暗黙の了解が蔓延っていたら俺は(社会的に)どうなるか分からない。あーもう、明日も学校あるのに、どうすればいいんだよ……。


 「……え? てか俺、学校何処だよ。同じとこ通ってんのか?」


 はっと気づく。そうだった。Mから始まるハンバーガーショップがWから始まるんだぞ、ここは。学校名が変わっていたり、女子校になっていたりしても不思議じゃない。

 これはいよいよ以て困った。どうすればいいんだよマジで。


 『――ただ今の解析率、七割五分。現在、解析済み情報に問1と問2に対する解答があります。これより解答を始めます』


 「は? やば」


 『解1。あなたの通う高等学校は“赤酸漿(あかほおずき)”高校です。解2。解1は、以前の世界であなたが通っていた高等学校とは異なります』


 「……マジかよ……」


 『問3を認証。解3。解1、2は真実です』


 ――本がある辺りから、声がする。


 頬を抓ってみるが、やはり痛い。これが夢だったら面白いのになー! 笑い話で済むんだけどなー!!


 「も、もしもし……?」


 『呼び出しを確認。応答は可能です』


 「ウワーッ……シャベッター……」


 びくびくしながら本に触れるが、本からは反応がない。手から落ちた時の、開かれたままの無生物ヅラを保っている。


 「し、質問しまーす……」


 声をかけてみる。


 『問4の認証準備は完了しています』


 「お、おお……案外律儀……」


 ページを捲ると、一ページ目には黒いインクで『世界』だけが書かれていた。他の言語は消えている。次のページからは、問1から問3まで、先ほどの俺の質問と、それに対応する答えが書かれていた。


 「じゃ、じゃあ、あの……今日のバイトのシフトって、どうなってるか分かる?」


 『問4を認証。解4。本日の有期労働は午後六時からです』


 「はいオワタ」


 ごろん、と大の字になって天井を仰ぐ。いやこんなの仕方ないでしょ……仕方ないじゃん……だって――。


 「問ごー。これは異世界転移ですかぁー?」


 『問5を認証。解5。これは異世界転移です』


 ――異世界転移したらしいし。まじやべえ。




 「……異世界転移したら、何したらいいんだ」


 『問10を認証。解10。質問が漠然としすぎています。現在の他の転移者情報より類型行動を提示することは可能ですが、解析が終了していません。不具合1。解答を望みますか?』


 「望む」


 『不具合1に対する続行を認証。対応1。あなたと生活環境が類似している人物は、“規範本”より情報を集めた後、護身のため外出を控える傾向にあります。また、“禁則事項”について知り、“禁則事項”となり、“禁則事項”が起こり死亡するという行動を行った人数は、初期の人間の四割を越えており、最も取られた行動です』


 「四割って何人ぐらい?」


 『問11を認証。解11。“禁則事項”です』


 ……検閲されている。

 四割も死んだのだから当然か。それより気になるのは、『護身のため外出を控える』という点だ。


 「この世界で、俺の身近にある脅威は何? 生存権に関わるものでいい」


 『問12を認証。解12。悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎……』


 しばらく解答が終わらないっぽいので、丸いキャラクターを積み上げる某ゲームアプリを始める。ハート送っ……たら誰に届くんだろ。さっき聞いたけども、人間関係も若干変わっているらしい。以前の世界で俺が親しかった友人は、こちらの世界でおおよそ容姿とか性格とかが似ている、別人をあてはめられているらしいのだ。

 仲の深い人間は、今後の俺の人生に影響を及ぼす人間なので、寿命にも関係してくるらしく、結構似ている人員で埋めてくれているそうだが、関係の薄いクラスメイトなんかはもう全然似てないらしい。


 だから、俺にとって何の価値も持たなかった『あの人』なんかは、存在ごと消えてしまっていた。


 役所で戸籍を確認したところ、数年前に鬼籍に入っており、俺の親権者は顔も見たことのない叔母になっていた。


 「おっけーグーグル。将来の展望ってどこで見れるんだー?」


 適当な戯言を言うと、グーグルではないが本が認証してくれた。


 『問13を認証。不具合2。解13を優先しますか?』


 「解12の中で環境要因が大きい死因だけピックアップして。上位十位ぐらいで」


 『不具合2に対する拒否を認証。対応2。問12に対する変更を認証。解12´。不慮の事故、自殺、火災、他殺、呪詛返し、妖による殺害――』


 「ちょちょちょちょちょい待って…………」


 なにて? え? 妖? はぁ?


 「……他殺の内約、上位五位教えて」


 『問14を認証。不具合3。解14を優先しますか?』


 「するする超する」


 『不具合3に対する続行を認証。対応3。解14を優先します。一位、呪い。二位、素材としての解体。三位、生贄としての殺害。四位、隠ぺいのための口封じ。五位、通り魔』


 通り魔って単語にこんなに安心すること、ある? いーやないね。ありえないね。色々とな!! ホント色々とな!?


 「やっっっべえ……」


 『不具合4。解12´を再び始めますか?』


 「律儀っていうか融通効かないな……忖度できねーの? 流行ってんだぜ今……」


 地面を転がる俺の姿が見えないのか!! と叫びたい。泣いちゃいそうな心でスマホで妖を検索すると、やはりどれもおどろおどろしい容姿と能力だ。俺の癒しはすね擦りだけ……。なんだこいつ、かんわいいな……。


 『問15を認証。忖度は可能です。あなたの希望をどうぞ』


 「可愛くて……あと、わかりやすくて、くどくない感じで!!」


 食い気味に言うと、本は光に包まれる。なんかまた超常的な力が働いているようだ。まばゆい光に目を閉じ、次に瞼を開いた時には、そこには――。


 「ね、猫……?」


 「いえ、すね擦りです」


 「シャ、シャベッター!?」


 「声帯を形成しましたので、お好みの声で話すこともできますが、どうしますか?」


 「ご、ごめん……もうちょっと温かみのある声出して……可愛いにゃんこにその絶対零度の目と声は……キツい……」


 俺がちょうどスマホで見ていたすね擦りが釣り目気味だったせいで、まるで猫に『社会のゴミが』とでも言われている気分である。


 「にゃおん……これでどうですかね?」


 「あ、あー……くぎゅうボイスっぽい……」


 「ではあなたも落ち着かれたところで、解答を続けましょうか。何が知りたいですか? とりあえず、『異世界転移したら何をしたらいいのか』について話しましょうか?」


 「あ、うん……」


 くぎゅうボイスの猫は、お願いしたら俺の膝で丸まってくれた。めちゃくちゃに可愛い。


 「この世界はあなたの知る世界と大きく違うところがあります。それが妖怪や、陰陽師の存在です」


 「なにそれ!? マジでやべー。俺そんなのに狙われんの? 死因予想ランキングで結構な割合占めててさ……ホント参るって……」


 毛並みを撫でると、猫的機能を備えたすね擦りはゴロゴロと喉を鳴らす。可愛すぎて吐きそう。


 「前提として知っていてほしいのは、あなたの寿命は九十五歳だということです」


 「え? 自分の寿命知っちゃったよ……」


 「本の時でも、聞かれれば答えましたよ。と、まあ、九十五歳なのです。あなたの持っている時間は九十五歳まであり、あなたは基本的に、自分の持つ時間を、生ききらなければならない運命なのです」


 「……まあ、不足分の人材を? 異世界から? もらったらしいし? 死んだらまたもらわないとらしいし?」


 「その通り。世界のシステムとして、寿命通りに死んだ人間は、死んだあと魂となり順調に輪廻に乗ります。そして、寿命通りに死ななかった人間は、輪廻に乗らずに寿命を“別の場所”で消費しなければなりません。この“別の場所”、というのがネックで、その一時置き場に人が集中すると、本体である世界に様々な悪影響が現れます」


 「ゴミとか排気ガスみたいなもんか……一旦集めてから燃やすし、燃えた後ゴミ処理場の外にも影響出るし……」


 「間違ってはいませんが……。この、一時置き場に人を入れるのがあまり好ましくないことを知っていただければ、まあ十分です」


 「ゴミ一杯になると集めてきても置く場所ないもんな……」


 自分のことゴミ扱いするんだこの人間……みたいな顔で猫に見られた。カワイイ。カワイイけど、本の時よりずいぶん感情豊かだ。

 可愛い感じで、なんてアバウトな願いで……こんなに……こんなに可愛く……え? かわいすぎる……肉球ピンクじゃねーか……。


 「と、とにかく……! そういった、寿命エネルギーの残った魂が現れないよう、寿命を持つ者は、なるべく他の要因で死なないように加護が与えられているのです!」


 「ほーん……」


 肉球ぷにぷにやんけ……。


 「あなたを含む、異世界からこの度移植された人間は、特に強く加護を与えられて居ます。神は、生存する人類数十億人に、まとめて祝福を与えたため、彼らの祝福は薄くなっておりますが、あなたたちは少人数でしたので、かなり濃く与えられるのです。これによって……ふにゃん……」


 尻尾で顔殴られた。お、お尻の付け根つんつんしただけじゃないですか……!


 「じゃ、邪魔はやめてください……! あなたの質問に答えるのが私の存在意義なのですよ!? ……こ、この加護によってですね!! あなた方は呪詛を始めとしたこの世界での脅威に対して、抵抗力があるのです! “霊力”というこの世界の人間の力へと対抗する抵抗力――“鬼力”とでも言いましょうか――がある!」


 「少年飛翔漫画みたいだな」


 おとなしく頭を撫でるのみに抑え、思いを馳せる。

 あれは愛読書の一つだ。毎週必ず買うようにしていた。この世界にもあるのだろうか? 大型連載の内一つが、来週から世界大戦に突入するところで終わっていた。続きが非常に気になる。


 「その漫画のような環境が、もはや他人事ではないのですよ。あなたは鬼力がある限り、死なないのです。これの意味するところが分かりますか?」


 「んー……居眠り運転の車が、突進してきたとする。俺はそれに気づいてない。いざぶつかる――ってなった時、運転手が急に目を覚まして、進路を変えたり……とかする?」


 「いいえ。居眠り運転をしていた運転手が心不全を起こし、ハンドルに頭をぶつけ、あなたは助かり、運転手は死にます」


 「……っは。やっべぇな、それ……」


 「もちろん運転手も魂を持った一人。運転手の持っていた寿命の分だけ、あなたの鬼力は削れます。が、あなたは大いなる加護の持ち主。それは微々たる量であり、ほんの僅かな数分だけが、あなたの寿命から消えます」


 ……俺ってもしかして歩く天災なんじゃないか? 俺がみんなから身を守るんじゃなくて、俺をみんなから守らなければならないのでは?


 「つまりそれって、俺が死にそうになるたび、近くにいる人が肩代わりして死ぬってこと……だよな……?」


 「意識すれば、自分が負債を負うことは出来るでしょう。……私としては、別の懸念について提言させていただきたい」


 すね擦りは俺の胸元に顔を擦り寄せると、なんだか切なそうな声でにゃあと鳴いた。


 「そんなあなたは、霊力を持つ人間には、“莫大な霊力を持つ人間”に見えるのです。あなたの鬼力は、平均的に見てもずば抜けています。死に際まで、精神健やかに、健康に生きて死ぬ。それが以前の世界での運命だったものですから……」


 おそらく、健康な人間と、若くして死ぬ人間や、認知症やがんを患って弱ったりしてしまう人間とを比べた場合には、寿命は同じでも鬼力の量には差があるのだろう。

 んで、俺はたまたま病気にもならず、精神的なダメージを受けることもなく、大往生する予定だった、と……。


 「霊力を持つ人間は、妖や陰陽師にとって極上の餌です。食らえばその力を取り込むことが出来、また、意識を操り傀儡とすれば、肉壁と出来る。悪ければ、四肢を引きちぎられ、力だけを抜かれ続けるようなことさえも、ありえるのです……。いくら死ににくいとは言え、それは絶対ではありえない」


 二本足で胸に縋り立つ猫の背を撫でると、その尾はゆらりと嬉しそうに揺れた。可愛いなあ……。


 「――どうか死なないで、ご主人様。私は、あなたのために存在しているのです。」


 ぎゅっと頬に暖かな温度が触れる。猫の手が首に回ってて気持ち良い。

 じわじわと頬が紅潮して、頭がふわふわした幸福感に包まれる。こんな満たされた気分は初めてだ。こいつ、俺のことを心配してる、の、か? それだけじゃなくて、自分が消えたくない、って打算もあるんだよ、な?


 それってつまり、俺のこと――必要としてる、ってことだよな?


 だ、だって、こいつ、俺なしじゃ生きられないんだもんな。だって、俺のためにあるんだもんな。

 俺のために用意された本だった物で、俺が望まなきゃこんな風に喋ることも出来ないんだもんな。


 それって――とっても健気で、どうしようもなく、哀れで。

 ああ、なんて、可愛そうなんだろう……!


 「お前――可哀いなあ」


 思わず呟いて頭を撫でると、猫はにゃおん、と鳴いて、俺に頭を擦りつけた。






実は連載にする予定だったけどここまでで力尽きた……。

▽主人公

DVとネグレクトの被害者。もはや母の存在を認識しておらず、今後もそのように生きていく。

幸運にも病一つかからず生きて死ぬ予定だった。精神的にも、あらゆるストレスを無いものとして扱うことで健やかに生きる予定だった。


▽真理の書

神様が詫びで持たせたルールブック。転移者たちは主人公のように様々な形へと変化させたが、意志持つ生き物にしたことは必ずしも良い意味を持たない。

彼らは故意的に情報を伏せることが出来るようになったのだ。


▽すね擦りもどき

概念的にもとよりあやふやな生き物だったため、すね擦りっぽいビジュアルの中身別モノとなっている。

命じられれば、派生したどんな化け物にもなることができる。主人公の鬼力と合わせれば、犬神として呪いを振りまくこともできるだろう。

主人の望む「愛らしい姿」へとなった。自分より弱く、自分へ心を砕き、自分を愛し、それでいて、打算があり自分を裏切らず、自分なしではいられない。そんなモノしか彼は愛せない。



学園ではあらゆる霊能者たちが集っており、そこで術の使い方などを学ぶことになったり、車椅子で体が弱く、寿命もあと半年の理事長がメチャメチャ強かったり(転移者ではないが、寿命通りに死なせるため、残り僅かな時間、霊力が一時的に高まっている)とか。


転移者は相棒であるルールブック(神様に持たされたので死んでも離せないけど)共に戦う感じ。鳥とか虫とかに化けてる本と霊力で戦うみたいな。


家族恋しさで本を弟の姿に化けさせてるヒロインポジの子を見て、人間姿の本が故意に「どうやったら帰れるの!? もう嫌あ!」というヒロインの子の質問に『元の世界には戻れない』と明言するのを避けているのを見て、「口を与えるとこうなるのか……」と一瞬冷めた感じで自分のルールブックを見た後、「私はご主人様の味方です……!! どうか、信じて!」「うんうん、あー肉球ぷにぷに……」とか誤魔化すとか……。

主人公の望みが「自分を愛する弱いもの」だったので、機械的だったルールブックにゃんこの方は、過ごす時間が増える内、心的なものを学習してしまい、主人公のことを心底から愛してしまってるという。


あとはなんか日本全体で大きな妖怪が現れたとかで力を合わせ、関西連合と手を組む際、関西側のリーダーが独自すぎる術を使っていて、その理由が「いや、あの本鬱陶しかったんやって。独り言にも反応してくるし。うざいねん。やから『俺の視界入ってくんな』ってゆったら、なんか消えた」とか。多すぎる鬼力を襲ってくる妖怪にぶつける内、我流の力の使い方を覚えたとか。


そういうのを誰か書いて欲しい。陰陽師モノ好きなんだけど難しい……。

前作誤字脱字報告してくださった方ありがとうございました! あ〜こんな自分得小説読んでくださってる方ほんとに居たんだ…! と感動いたしまして、おかげで創作意欲湧きました~!

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