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2話

空いた時間で少しずつ書いてた。

「違う!」

寝ぼけていた脳がこの場の間違えを認識し、それに伴い意識が一気に覚醒する。

「なに?シロ、怖い夢でもみた? 」

「ちげぇよ!ここどこだ!この鎖はなんだ!お前は誰だ!?」

起き上がった彼女は眠そうに目をこする。

その動作が少しキュートに感じてしまうが今は違う。

「シロ、そんなに同時に言われてもわからない。」

「いやいやわからないのはこっちだよ!状況を説明してくれ!」

「あなたが私のペットになった。」

「全くわかんねぇ、、、どうしてこうなった? やっぱ俺前世で何かやったか?」

状況が悪くなったり理解できなったりすると前世の自分という架空の人物を出し責任を押し付けるのは彼の悪い癖だ。

その時バンと扉が甲高い音を立て勢いよく開きカラス頭の人型生物が顔を出す。

「なんか出てきた!」

カラスは黒いシルクハットをかぶっておりその黒い目は吸い込まれそうなほど純粋な黒だった。

「それについては私か、、、あっ」

勢いよく出ようとしたせいで開いた反動で戻って来る扉に挟まれるカラス。

恥ずかしそうに扉閉め帰っていく。

それを静かに見守っていると今度は扉が戻って来ないようゆっくりと開け部屋に入ってくる。

「それについて」

「いや無理だから! バッチリ見えちゃってたから!」

カラスは目を大きく開き動きを止める。

あんぐりと大きく開けた口は間抜けとしか言いようがない。

「何故、、、。」

「いや、なんでいけると思ったんだよ、、、。」

カラスがやらかしたせいで部屋が静まりよくわからない雰囲気になってしまった。

「おい誰か喋れよ」そんな気持ちをそっと心にしまい静寂に耐える。

「ベスター、何しにきたの?」

女の子がベットに深く腰をかけ、かなりリラックスした状態で目の前のカラスに要件を問う。

「ええと、シグレ様はまだこの人間に自己紹介とかしてないのでは?それどころかこの状況をわかってないのでは?」

「、、、大丈夫。なぜなら私のペットだから。」

「どっからその自信が出てくるんだよ、、、。」

シロはため息を一つたてると改めてカラス頭のベスターという男?に顔を向ける。

「すまねぇ、この子の話じゃ全くわかんない。あんたから改めて説明してくれないか?」

「わかりました。このベスター、あなたのために全力で説明させていただきます。」

「いやほどほどでいいから。」

「ではほどほどを全力でやります。」

「いや全力をやめてって言ってるの。」

「それは昨日の出来事でした。」

「聞けよ!」

シロとベスターがくだらないやりとりをしている間にシグレは二度寝の快楽に溺れている。






「ベスター、暇。」

「おおシグレ様、唐突に何ですか いつもみたいにお昼寝はなさらないので? 」

魔王の娘として彼女は前までとても忙しく、やる事が無くなってからずっと惰眠にふけっていた。

普通、魔の頂点に君臨するものとしてはありえない事なのだろうがシグレの場合、親である魔王が重度の親バカなのである。

「では読書などどうでしょう?例えばこんなのとか。」

ベスターが取り出したのは1ページの幅が広く厚さが少ないこの世界ではとても珍しい本。

「なにこれ?」

「私が前異世界に行った時に買って来た月間 ペットの飼い方 でございます。ちゃんと翻訳もしてありますよ。」

「へぇ、、、」







「というわけです。」

「いやわからねぇよ!」

シロが叩いたクッションがぼふりと音を立てて凹む。

「雑誌を読んでシグレがペットが欲しくなったのはまぁ読み取れる。でもなんで俺!? 犬とか猫とかいたじゃん! 」

「違う。」

シグレがボソリと一言。

「シグレじゃなくてご主人様と呼んで。」

「お前が読んだの絶対奴隷と書いてペットと読む的なやつだろ!月間奴隷(ペット)の飼い方だろ!」

「あと、ペットが欲しいって言ったの私じゃなくてベクター。」

「いやぁ、読んでたらつい飼いたくなっちゃってですね、、、。」

「お前らほんと自由だなぁ!」

いつのまにかシロの息がきれている。

それどころか汗もかいているし、ちょっとした倦怠感を感じていた。

だがそんなことは知らずに二人は気ままにに過ごしているのだ。

「なぁ、結局どうなってんだ。俺はどうやってここに来た?なんで俺がペットに選ばれた?」

シロの真面目なトーンの声に二人は顔を見合わせる。

そしてベクターが静かに嘴を開く。

「選ばれた、、、という表現はあっていますがあなたの考える意味とは違いますね。」

違う意味、、、シロにはその事が理解できなかった。

真面目な話になって服に染み付いた汗が冷たく感じる。

「つまり我々が故意に選んだわけじゃないんですよ。そうですねぇ、あなたの身近なものでいうとゲームのガチャシステムですね。」

「つまり?」

「我々が召喚儀式を行った瞬間と同時刻に死の危機に瀕している違う世界の生物をランダムに一体呼び寄せる、、、というものです。」

「それ俺がすでに死んでるはずってことか?」

ベクターは黙って頷く。

「ちなみに条件は自由で「同時刻に踊っている」、でも「同時刻に書物を読んでる」でもいいですよ?」

あいにくだが、シロは召喚条件のことなど聞いていない。

だがなぜここに来たのかはわかった。

ゲームの存在を知っていたり異世界の雑誌を持っているのはわからないが。

だが一つを知ると一つの疑問が出てくるのが人間というもの。

「じゃあ今向こうでは俺の葬式でもやってんのか?」

「いえいえ、転生ではなく召喚なので向こうは今頃行方不明として扱われてるでしょう。トラックでひいたはずの少年が跡形もなく消え去った、と。」

「 ! じゃあ今なら」

「無理。」

シロの言葉に重ねるようにシグレの否定が入る。

それはシロの 帰りたい という願いを断ち切るのと同義。

もしシロが特別な人間であったならこの住む世界の変化にも対応できただろう。

だがどんな些細な変化をも嫌う普通の人間がこの局面に衝突した時願うのはなんだろうか。

皆、元に戻る事を願うだろう。無論シロも。

「な、なんで、、、」

「この召喚は物を返す時同じ時間、同じ場所に返す必要がある。」

「同じ時間、同じ場所、、、。」

つまり元の世界に戻った瞬間にトラックに引き摺られるということ。

即死は免れない。

それではシロの家に帰るという願いは達成されない。

「まずそもそも時間を超越する魔法なんて世界の魔力を集めて成功するかどうか。」

「まぁ、戻る事は諦める事ですかね。」







「しろ?シロどこか痛いの?」

「今は、、、ちょっとほっといてくれ。」

シロにとって心配してくれるシグレの気持ちは有難い。

どうしてこうなったか、誰かに責任を押し付け責めてやりたい。

しかしシロをここに連れて来たシグレを責める事はできないのだ。

連れてこられなかったら今頃シロは棺桶の中。

結果だけ見たら命の恩人。

だが普通の人間であるシロには突然の変化に対応することができなかった。

そのせいで今は全てが敵に見えているかもしれない。

「シグレ様、人間とは身体も心も弱いのです。今は時間を置くべきかと。」

ベスターのアドバイスにシグレは不服そうにベットに潜り込む。

それでも何もしなかったのはベスターの言う事が正しいと判断したからだろう。

さっきまでシロが動くたびにジャリジャリと甲高い音を立てていた鎖は彼がうずくまっているせいで沈黙していた。




「うし!これも全部前世の俺が悪い! じゃあ仕方ない! 俺が前世の分まで頑張ってやる! 」

「シロ、うるさい。静かにして。」

「辛辣!? さっきまで心配してくれてたじゃん! 」


今回も読んでいただきありがとうございます

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