短編 命よりも大切な婚約者に捨てられたので白騎士様は死にたい
作者が突然思いついたものをただ書いただけです!良ければ読んでください。(下手)
こんな作品だが書いたことに後悔はしていない!
「私、ノルン=セスカトールはあなたイグニス=サーグウェルとの婚約を破棄します」
僕の全てである婚約者が隣に僕の親友を侍らせて言われた一言だった。
「そうか、僕では力不足だったんだな・・・」
僕は今まで彼女にどんなことでも尽くしてきたつもりだった。
家への送り迎え、買い物の付き添い、食事作りの手伝い、「愛してるよ」など言いすぎていくつ言ったのか覚えていない。他にも掃除、洗濯。後は学園での友達作りの手伝いなどもやったな。
それに僕は彼女に認めてもらうためにこの国で一人しかなれない王国直属の第一級聖騎士にもなったな。
忙しくても早く仕事を終わらせて毎日定時で帰って会いに行ったな。
「それでノルンいや、ノルン様は幸せになれるのですか?」
僕も、一応侯爵家の跡取りだが婚約を破棄された今では上下関係がある。そのための敬語だ。
「・・・え、えぇ当たり前じゃない。ね?」
「あ、あぁそうだな」
二人とも何処かキョドキョドしているが僕は聴きたいことが聞けてとても満足した。
「そうか、よかった。絶対に幸せになってくれよ!」
僕は、ゆっくりと後ろに歩き出した。
「どこに行くの?」
「死にに行きます。今までありがとうございました。貴方と過ごした日々はとても楽しかったです。僕の心の氷を溶かしてくれた。貴方には感謝の気持ちしかありません。では」
僕は、全力で走り抜ける。人間が走る速度などたかが知れているが、僕は第一級聖騎士とてつもない速度で走り去る。
「え?ちょっと待って!イグニス!!」
ノルンが声を上げイグニスを呼んだ頃にはもう遥か遠くに行っていた。
第一級聖騎士になったイグニスの人生は華やかになることが確定していたも同然だった。別にわざわざ婚約破棄をされてもほかの女は幾らでもいる。だが、イグニスにはその考えはなかった。いつも横で支えてくれたノルンだけが生き甲斐で全てだった。
それを無くした今、イグニスは誰も生きて帰ったことがないと言われている破滅の島の目の前まで来ていた。
「ここなら僕を殺せる奴がいるかもしれない」
イグニスは聖騎士自分で死ぬわけにはいかない。
それに人間にはイグニスは殺せない。剣をつきたてようとすると鎧のように硬い筋肉に阻まれ毒を持っても体が一瞬にして浄化してしまう。
そのためイグニスは、魔の者に自分の最後を終わらせてもらうつもりだ。
「行くか」
イグニスは、軽く助走をつけ一気に跳ぶ。それだけで相当離れていた島に辿り着く。
「早く死にたい」
島の奧をどんどん進んで行く。ノルンのために死ぬために。
♦︎♢♦︎♢♦︎
僕がこの島に来て5年の月日が経過した。
まだ死ぬことが出来ない。もっとも左腕が肩まで無くなっており右目が完全に切断されて閉じられているが。
「今日もまた死ねない」
いつのまにか破滅の島と呼ばれるこの島の中でも最強の存在になってしまった。最早魔の物でさえ恐れて近づいてこない。
そんな時ふと、魔の物とは違う雰囲気を持っている存在が自分の気配感知の範囲に入っていたことを認識した。人間のものだ。
僕は警告のために走る。
「おい!ここから先は危険だぞ・・・子供か?」
僕の目の前には真っ白な肌をしたまだ小さな子供がいた。
子供はずっと泣きじゃくっている。
「とりあえず落ち着け。どうかしたのか?」
「うぅぅ、お兄ちゃんだれ?」
「僕は、イグニスというその年齢だと名前くらい聞いたことがあると思うが?」
「ヒック!お兄ちゃん白騎士様なんですか?」
先ほどまであれだけ泣きじゃくっていた子供が一気に泣き止みポカンとした顔をする。
「白騎士?そんな名前もあったな」
イグニスは第一級聖騎士でたくさんの呼び名が存在していた。
「嘘ついちゃメ!」
「うそ?」
「白騎士様は、もう死んじゃったの!それに白騎士様はそんなにボロボロにならないの!」
「そうか。それでなんでここにいるんだ?」
「おとぉさんの部屋で遊んでたらピカピカ石あって、触ってたら、ここにいたの」
成る程、転移石か・・・
どうせ今からやることもないどうせだから送ってやるか。
「お前の家は何処だ?」
「おまえじゃないの!ラリス=サーグウェルなの!」
「お前!サーグウェル家の子供だったのか?誰の子供だ?リンカか?ダンジか?ソールか?」
「おかぁさんはリンカだよ?」
まさか姉の子供とはな・・・不幸なこともあるものだ。
とまで言ったところで後ろから猛烈な速度で巨大な雹が降り注ぐ。
ここの特徴の一つ気候変化だ。僕はラリスを持ち上げ海の方角へ走る。
「苦しいが少し我慢してくれ」
僕は一気に速度を上げそのまま海の上を走る。
実はこの動きとても単純明快だ。足が沈む前に出す簡単な作業。最早寝ながらでもできるくらい完璧に仕上がっている。
「よし、大丈夫か?」
「ほぇぇ、凄いよ!もう一回やって!」
「だめだ。サーグウェルなら王都でいいよな?」
「お兄ちゃん送ってくれるの?」
「乗りかかった船だ。それにここに置いていけばお前は死ぬだろ?なによりも羨ましい死ねるなんて」
「お兄ちゃん死にたいの?」
「あぁ」
「死んじゃメ!」
ペシッ!と異常なまでに軽い一撃がイグニスに当たる。
「死んじゃったら何も残らないんだよ!だめ!」
だけどその一撃は今まで受けて来た肉体的なものよりも痛かった。
「そうだな。死ぬのはダメだな」
「うん!よかったねおにぃちゃん!」
「それじゃあ掴まれ!一気に行くぞーー!」
背中にガッチリくっついたことを確認し僕は走る。こうしていると自分の成長が感じられた。以前なら5時間かかった道のりを僅か5分にまで短縮できてしまったのだから。
「何今の?もう一回やって!!」
キャッキャキッキャ言っている後ろの可愛い生物を抱えながらなら上々なタイムであろう。
「お屋敷の位置は同じか?」
「うん!」
「それじゃあ行くぞ!」
僕は軽く跳ぶそれだけで街の反対側にある屋敷の敷地内まで軽々と飛んで行く。最も風圧などを気にしながらだったため少し距離を誤ったが。
「ほい!着いたぞ」
「ほんとだ!!ありがとうおにぃちゃん」
「おう!じゃあ行ってこい!」
「ダメ!おにぃちゃんも一緒に来るの!」
「え?でもな〜」
「ラリス?ラリス!!」
困ったように頬を掻いていると後ろから母親のような人が現れラリスを後ろから抱きしめる。
「ラリス!大丈夫?怪我はない?」
本当にこのご婦人は大丈夫なのだろうか?知らない人が目の前にいるにも関わらずずっと娘と話すのは。
ラリスの方も我慢していたのか涙が溢れる。
「う、うわぁぁわぁ。まぁまぁぁぁぁこわかったよぉぉ」
「そうだったでしょうね。もう大丈夫だよ」
2人が抱き合いながら涙を流す。どうやらそれを見ていた使用人が人を呼んできたようだどんどんと人が集まってくる。
よかったな。みんなに愛されて。
僕は気づかれないように、揃っと立ち去ろうとする。
「おにぃちゃん!待って!」
その言葉で全員がさっきまで気にも留めなかった僕の方を見る。
「まま!あのおにぃちゃんが助けてくれたの!」
「え?貴方は」
ラリスが僕のもとにきて笑顔で抱きつく。
「ほら、離れろみんなが心配しているぞ」
「おにぃちゃんはどこに行くの?」
「僕か?また破滅の森に戻るが」
「おにぃちゃん死んじゃうの?」
「うん、そうだなできることなら死にたいな」
「ダメなの!!おにぃちゃん死んじゃやだ!」
「そんなこと言われても僕にはもう何も無いからしょうがないだろ?それに今もしあの方と会ったりしたら折角の幸せが不幸になってしまうかもしれないからな」
「そんなのしらない!ダメなの!おにぃちゃんは私と一緒にいるの!!」
「やめなさい、ラリス」
「ママ、おにぃちゃんが死んじゃうよ〜」
「お母さんに任せて!」
母親がゆっくりと近づいてくる。
「お帰りなさいイグニス、生きていたのね?」
そうやって僕に抱きついてくる。周りの人達は皆ぽかんと頭の上にハテナマークを浮かべている。
「ひひひひひひ、人違いじゃぁないかな?」
「おにぃちゃん?まま?」
「貴方は会うのは初めてだったわね。この人が貴方のオジに当たる人物で歴代最強最年少聖騎士“白騎士”よ」
「おにぃちゃんほんとに白騎士様だったの?」
「・・・はぁ、まぁ一応な」
「それで又どうして5年間も姿を現さなかったの?そんなにボロボロになってそれじゃあもう無傷の剣は名乗れないわね」
「死にたかったんだ」
「なんで?」
「ノルン様に捨てられたからな。もう生きる価値がない」
「え?まさかそれで?」
「だから姉さん僕を殺してくれないか?姉さんの魔法なら僕を殺せるかもしれない」
「いやよ」
「そうか」
「まま、おにぃちゃん死なない?」
「うん!そうだよーお母さん超強いから白騎士様だって守っちゃうんだから」
「すごーい!!」
「それで、ノルン様はどうなされてる?」
「今ちょうど来てるわよ」
「なに!?僕は去るとしよう」
僕は、急いで飛び上がろうとするが足にラリスがくっついているためできない。
「離してくれラリス頼む!」
「やぁだぁぁ」
ラリスが僕の足を掴んだまま離さない。そうしているうちに目の前に金色の髪をなびかせた麗しい乙女が現れた。
はぁ、手遅れか
僕は、膝をつきこうべを垂れる。
「お久しぶりでございます。ノルン様、不甲斐ないばかりに自分は死ぬことができませんでした。命令さえして頂ければここで自害を」
そこまで言ったところで目の前の女性に抱きつかれる。
「ごめんなさい!イグニス。私のせいでそんな傷を負わせてしまって」
イグニスはポカンとした顔で姉上を見つめる。
「あなた知らなかったのね?あの婚約破棄の宣言は真っ赤な嘘よ」
「え?でも、そんな」
「貴方が言われた日は何日か覚えてる?」
「4月1日」
「その日は?」
「土の日だ」
「え?知らないのエイプリルフール」
「なんだそれ?」
「本当に知らないのね、嘘をついてもいい日なのその日は。完璧すぎる貴方を騙そうって計画だったのよ。まさかここまで信じてるとはね」
「じゃあ僕とノルンの婚約は・・・」
「破棄されてないわよ」
ちらっとまだ抱きついて涙を流しているノルンの方を見る。どうやら相当自分を責めていたようだ前よりかなり痩せている。
「ごめんなさい。そんな傷まで作って本当にごめんなさい」
「そんなことよりも、僕は君の事をもう一度愛してもいいのかい?」
「こんな、私を、もう一度、ヒック、愛して、くれるのですか?」
「当たり前さ。君は僕の全てだからね。だが親友は許さん一発殴る」
イグニスは強く自分の婚約者を抱きしめる。
「もう片腕は無いのですね?」
「嫌か?」
「全然嫌ではありませんが、生活に差し支えると思って」
「じゃあ直すか!『再生』」
グチャッと音がなり新たな腕と目が現れる。ついでに周りについていたあらゆる傷という傷が消え去る。
「おっと。すまない気持ち悪いものを見せた」
「どうやって?」
「僕が白騎士と呼ばれている所以だ。僕の技能白魔法あらゆる傷、病を全て直してしまう技能だからな」
今度こそ白騎士は自分の婚約者を両腕で強く強く抱きしめる。もう離さない為に。
こんな愚作を読んでいただきありがとうございました。
本当に頭が上がりません!!