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闇雲怪奇譚  作者: くろすけ。
6/13

5 〜トイレの花子さん〜



               5



事件発生から一週間経った放課後、青山裕佳梨はある場所に向かうために歩いていた。

 あれから犯人は、まだ捕まっていない。

 この事件の話題は全国に広がりつつあり、学校には連日テレビのリーポーターや新聞記者などが来ていて大騒ぎだった。

 そんな時、裕佳梨は後藤静香に事件当日のお昼休みで話題になった【トイレの花子さん】の話を聞いた。もしかしたら、それで旧校舎に行ったのではないかと。

 ————だとしたら、私のせいだ。

 一緒に旧校舎探検に行こうと誘われたのに、店の手伝いがあるからと断ってしまった。もし無理してでも付いて行っていれば、こんな事にはならなかったかもしれないのに・・・・・・。

 後悔してもしきれない。だからせめて、この事件の犯人を知りたかった。そして何で絵美を殺したのかと問い詰めたい。しかし毎日、新聞やテレビを見ていても解決する兆しは一切見えない。

 無能な警察に苛立つ中、学園の生徒たちの間で、ある憶測が広がっていた。

 「「「犯人って・・・・・・人間じゃないんじゃない?」」」

 最初は何を馬鹿な事をと思っていた裕佳梨だったが、演劇部の一年生の花子さんの話と絵美が死んでいた現場が、まさに旧校舎3階の女子トイレだったのもあり、一概に否定しづらいものになっていた。

 ありえない事だ————。

 この世界に幽霊や妖怪がいるなんて、子供の夢物語だ————。

 でも、それでも、可能性があるなら縋り付きたかった。

 そんな時、後藤静香から、とても興味深い話を聞いたのだった。

 

 「・・・・・・本当の話かは分からないんです。もしかしたら、詐欺とかかもしれないんですけど、この街に普通の人には〝見えないモノ〟を相手にする仕事をしている人・・・・・・いわゆる〝霊能者〟の人が住んでいるそうなんです————」


 教えてもらった地図を頼りに住宅街を歩き回っていた裕佳梨だったが・・・・・・。

 「ん〜・・・・・・あれ? ここさっきも通ったような・・・・・・あれ?」

 昔から地図を読むのは苦手なので、中々目的地に着かず、近くに人もいないので途方に暮れていた。

 そして不運な事にスマホのマップアプリを起動させようとしたら、昨日の夜充電するのを忘れたせいで、今は深い眠りについてしまった。

 ————もう、何してるんだろ。

 そんな情けない自分に肩を落としていると————。

 「・・・・・・あの、何かお困りですか?」

 いきなり背後から声を掛けられたので、ビックリして悲鳴を上げそうになったが、何とか耐えて振り向くと、そこには若い女性が立っていた。

 たれ目気味の優しそうな表情に、ボブカットの髪型はよく似合っていて、白のブラウスに黒のスカートの服装と合わさると、正しく清楚なお嬢様を絵に描いたような人だった。

 「どうかしました?」

 「えっ! いや、えっと————」

 見蕩れていたなんてとても言えない。

 それよりも、せっかくのチャンスなのだから道を訪ねよう。

 「・・・・・・あの、ここの住所に行きたいんですけど————分かりますか?」

 持っていた手書きの地図を女性に渡すと、少し確認しただけでコチラに紙を返却してきた。

 分からなかったのかと思ってガッカリしている裕佳梨の顔を見て、女性はニッコリと微笑んだ。

 「ご案内いたしますよ。ここ私の住んでいるお家なので」

 「へっ! ほ、本当ですか!」

 「はい、嘘じゃないですよ」

 ————すごい偶然。まさか探していた家の人に会うなんて————あっ、という事は。

 「もしかして! あなたが噂の霊能者の方ですか?」

 「!」

 よくよく見ると、ちょっとミステリアスな感じがあっていかにも〝それ〟っぽい感じがしたので、思わず聞いてしまった。

 その裕佳梨の言葉に女性は一瞬驚いたような顔になったが、すぐに笑顔に戻り、その可愛らしい小さな唇を開いた。

 「ごめんなさい。それは私の事じゃなくて光太郎さんの事です。私は助手をしているんです」

 「そっ、そうなんですねぇ・・・・・・ごめんなさい」

 興奮してしまった自分が恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしている裕佳梨に手を振り「いえいえ、大丈夫です」と答えながら、女性は改めて自己紹介をした。

 「私は、若井姫奈と申します。よろしくお願いしますね」

 そっと差し伸べられた手を握り返しながら、裕佳梨も慌てて自己紹介をした。それが終わると、若井は先立って前を歩き出す。

 「では、行きましょうか————」



 

 住宅街は夕暮れ色に覆われ、学校を終えた学生達が家に帰宅する姿が多くなった頃、裕佳梨はようやく目的地に到着した。

 目の前の建物はどこにでもありそうな一軒家で、赤色の屋根と白色の壁、小さな庭にあるガーデニングスペースには様々な色の花が咲いており、ほのぼの家族が今にも出てきそうな雰囲気が溢れていた。

 「んっ?」

 入り口の門の横に目を向けるとそこには《闇雲》と書いてある表札が掛かっている。

 「やみ・・・・・・く・・・・・・も?」

 細く白い腕でゆっくり黒い門を開けた若井は、裕佳梨を中へと促した。

 「ここが、青山さんが探していたお家ですよ」

 「・・・・・・じゃあ、この闇雲という人が————」

 本当に、この闇雲という人が絵美の事件を解決出来るかは分からないが、とにかく話してみようと、裕佳梨は覚悟を決めた。


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