第十五話 ユウトの家
「ただいま!」
「お帰りなさいユウト。」
ユウトが家の扉を開くと母親が出迎えてくれた。
エプロンをして髪を後ろで束ねている。
奥からは美味しそうな香りが漂っており、どうやら夕飯の準備中らしい。
化粧は薄いが綺麗な人だ。
「今日もたくさん釣れたかしら?」
「うん。今日は蛇も一匹いるよ。」
ユウトは魚と蛇を取り出しながら言った。
「あらあら、今日もたくさん取れたわね。蛇はお父さんに渡しておいて。って………あら?」
ユウトの母親は俺に気付く。
「今日は友達を連れて来たの?」
「そうだよ。名前はまだないんだけどね。」
(お邪魔します。)
俺が挨拶をすると少しビックリしたような顔されたが、すぐに微笑んでくれた。
魔物を差別しない。
いやぁいいお母さんだ。
「狭い家だけど、ゆっくりしていってね。」
(ありがとうございます。俺から見ると大豪邸ですよ。)
「あら、そう言ってもらったのは初めてよ。」
お母さんはクスクスと笑った。
実際、トカゲから見た家はまるで神殿のような大きさだ。
「じゃあお父さんに蛇を渡してくるね。」
「わかったわ。まだ納屋にいるはずよ。」
ユウトは魚を母親に渡して外へ出た。
庭はそこまで広くないが、少しばかりの畑と納屋がある。
(いいお母さんだな。)
「そう?普通だと思うけど。」
(普通の母親ってのは、それだけですごいんだぞ?)
「そうなのかなぁ。」
(いつか分かるさ。)
そんな話をしているとすぐに納屋に着いた。
納屋は庭に建てられており、庭はそんなに広くはないため全体が一望できる。
だが妙だな。
中から全く気配を感じない。
俺には”気配察知”があるから、ある程度人や魔物の気配が分かるんだが………
(ユウト、多分お父さんはここにはいないぞ?)
「え、ほんと?」
父親は猟師で、いつもここでその日に取れた獲物を捌いているらしい。
今日に限っていないって事はないようなんだが………
「お父さんいる?」
ユウトが声を掛けてみると。
「お、ユウトか。おかえり。」
納屋からは返事があった。
「なんだ、いるじゃん。」
(…いたな。)
俺の予想は見事に外れた。
気配察知のLvが低いから分からなかったのか?
ユウトが呆れた目で見てくる。
やめろ、そんな目で見るんじゃない。
ユウトが扉を開くと、そこでは男がイノシシを解体していた。
「黒蛇を持ってきたよ。」
「おぉ、黒蛇か珍しいな。干物にでもするか。そっちのトカゲはどうする?」
父親が俺を見ながら言う。
これはヤバイ流れだ。
(どうも、ユウトのお父さん。)
状況を打破する手はただ一つ。
挨拶。
それは初対面の人の心を開く魔法の言葉。
内心冷や汗をかきながら話しかけると、ユウトも焦って説明する。
「この子は獲物じゃないよ!喋れるトカゲなんだ。」
(そうなんですよご主人。)
「ほう…それは脅かして悪かったな。息子と仲良くしてやってくれ。」
そう言って笑ってくれたものの、やっぱりまだ怖いな。
目の前にいても気配を感じないし。
俺のスキルLvが低いだけなのか?
獲物から見た猟師がこんなに恐ろしいとは…
いやぁ新たな発見だなぁ。
挨拶もそこそこに家に戻ると、母親が夕飯の支度をしていた。
今日はパンとシチュー、そしてユウトの釣った川魚だ。
遅れて父親も帰ってきて、家族三人とトカゲ一匹でテーブルを囲んだ。
俺には川魚を出してくれた。
白身の魚をバターで焼き、塩と胡椒を振ったシンプルなものだ。
それでもこの体になって初めて食べるちゃんとした料理。
これは────もう我慢できん!
(いただきます!)
「ふふっ、どうぞ。」
鼻をくすぐるバターと胡椒の香り。
噛みついた瞬間、身がほろほろと崩れる。
バターの濃厚な味わいと丁度いい塩加減が口いっぱいに広がり、自然とため息が出た。
(あぁ………ここが楽園か。)
「あらあら、気に入って貰えて良かったわね、ユウト。」
「そうだね。そんなに美味しかったの?」
(これまで食べた物の中で一番だ!)
人間だったころに食べた物の味は覚えていないが、ここまで感動する物を食べたことはない。
ないはずだ。
そんな気がする。
それから無我夢中で魚を食べ続けると、お腹が膨れて動けなくなった。
「この子、面白いわね。」
「でしょ?いっぱい食べれて良かったね。」
(………ユウト、明日もまた釣りに行くぞ。)
「はいはい、分かったよ。」
(うぅぅ、食べ過ぎて苦しい…………)
ユウトがこちらを見ながら笑っている。
「そういえば、この子は人の顔を見ただけで名前が分かるんだ。」
「へぇ、凄いわね。それじゃあ、私の名前は分かる?」
(もちろん分かりますよ。)
満腹で上機嫌な事も合わさり、この時のおれはかなりのドヤ顔だったことだろう。
さてさて、お母さんのステータスはどんな感じかな?
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【名前】アヤカ
【性別】♀
【年齢】29歳
【種族】ヒューマン Lv3
No.1 言語理解 Lv3
No.2 道具利用 Lv2
No.3 趣味(料理) Lv4
【ステータス】
体力:F 攻撃:F- 防御:F-
敏捷:F- 精神:D 魔力:F+
【称号】
◼シルフの加護
No.1 森の祝福 Lv2
No.2 清めの風 Lv3
No.3 解毒 Lv2
No.4 森の癒し Lv1
◼料理好き
No.1 味覚 Lv4
No.2 包丁捌き Lv4
No.3 調理加減 Lv4
No.4 段取り Lv2
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お母さん若いな。
この世界では結婚するのが早いのか?
称号のスキルは便利そうな物が多い。
”料理好き”の称号は分かりやすいな。
”シルフ”てのはなんだろうか。
まぁ色々調べるのは後にしよう。
今は名前を聞かれてたし。
(アヤカさん、ですね。)
「まぁ、凄いわね!」
「でしょ?」
相変わらず他人のことでドヤ顔になるユウト。
「じゃぁお父さんの名前は?」
ユウトにそう聞かれて隣に父親がいたことを思い出す。
無口な上に存在感がないから忘れていたぜ。
猟師………やはり侮れない。
どれどれ、この凄腕猟師のステータスはどんな感じかな?
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【名前】シュウヤ
【性別】♂
【年齢】38歳
【種族】ヒューマン Lv5
No.1 言語理解 Lv3
No.2 道具利用 Lv3
No.3 趣味(芸術) Lv3
【ステータス】
体力:F 攻撃:E- 防御:F
敏捷:E+ 精神:B 魔力:D-
【称号】
◼暗殺者
No.1 忍び足 Lv5
No.2 変装 Lv4
No.3 気配消失 Lv5
No.4 無音詠唱 Lv5
◼鮮血の操者
No.1 血の弾丸 Lv5
No.2 血濡れの薔薇 Lv3
No.3 生命の水 Lv5
No.4 血の傀儡 Lv3
◼守護者
No.1 防御 Lv2
◼猟師
No.1 鷹の目 Lv2
No.2 気配遮断 Lv5
No.3 解体 Lv3
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【進化先】
・ヴァンパイア
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