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おしどり夫婦へ  作者:
21/22

最終話 おしどり夫婦へ

彼らは辿り着きます。

おしどり夫婦へ・・・

 4月24日。その日は雲1つない快晴だった。


 僕は9時半頃に式場に着くように家を出た。たぶん美咲は着付けにもっと時間がかかるのでもっと早くに出ているはずだ。あとでウェディングドレス姿を見るのが楽しみだった。準備ができると、僕は司会者やスタッフに挨拶をして回った。

 10時少し前、僕と美咲の両親が式場に入ってきた。母の着付けの準備があるため、多少の時間がかかる。その間に、僕は美咲の控え室に移動した。

 スタッフに連れられて、部屋の中に入る。

「どうぞ」

 扉が開くと同時に、中にいた人が何人か振り返るのが見えたが、僕はその中の美咲に釘付けになった。そして、彼女も僕をまっすぐに見つめてくれた。僕らだけが僕らだけを見ていた。

 美咲は大きな鏡の前に座っている。白いウェディングドレス。まとめられた黒い髪の毛がドレスによく映える。白い肌がまぶしいくらい綺麗だった。

 スタイリストやスタッフが気を遣って控え室を出て行った。

「かっこいいじゃん」

 先に口を開いたのは美咲だった。僕の見慣れない格好を見て言っているのだ。

「美咲はめっちゃ綺麗だ」

 堂々と言うと、美咲は少し照れながら、いや照れて固まってしまった。その反応に僕は驚いた。

「え・・・どうしたの?」

「ちょっと・・・緊張してきた・・・・・こんなに緊張することなんてあんまないのに」

 ひらひらしたドレスを大胆にばっと広げて彼女はつぶやく。

「昨日はよく眠れた?」

「全然。早めに寝たんだけど、全然寝れなかった」

「俺も。緊張して寝れなかった」

 苦笑して近くのイスに座る。ドラマでよく見ていた結婚がこんなに緊張するものだったなんて思ってなかったのだ。

「これ、夢じゃないんだよな・・・?昨日家族と過ごしてるときに、これが日常のような気がして・・・・・孝介と結婚するっていうのが夢に思えてきたんだ。寝ようと思っても明日これはじつはドッキリでしたーとか、結婚詐欺だーとか」

 言いながら美咲がパニックになりつつあるのがわかった。僕は慌てて彼女を抱きしめる。

「夢じゃない。もうすぐ俺たちは結婚するんだ。明日、婚姻届を出して正式に夫婦になるんだよ」

 僕の腕の中で落ち着きを取り戻した美咲。キスしたいと思ったが、今日の誓いのキスまでとっておこうと考えた。僕は美咲を放した。

「ちょっとは落ち着いた?」

 美咲はにっこりと微笑んでこくんとうなずいた。


 美咲の家族が来たのはそれからすぐのことだった。お父さん、お母さん、美花、おじいさん、それから僕の知らない親戚と思われる人もいる。僕も美咲も改めて挨拶をした。しばらくして僕の家族も控え室に入ってきて、それぞれ挨拶をした。

「孝介君」

 美咲のお父さんに部屋の隅に呼ばれてびくっとなる。最後に殴られるのかと思いきや、

「君にはいろいろ失礼なことをしてしまった。こんな私が言うことではないのかもしれないが、父親として1つ言わせてほしい。美咲と一緒に幸せになりなさい」

 その言葉が胸に響いた。そうだ、結婚したら僕はこの人の息子にもなるんだ。それはなんだかむずがゆくて、でも嬉しかった。


 10時半、挙式のリハーサルが始まり、すぐに招待客がやって来た。

 美咲の女友達も大勢来ていたが、どんなコネなのか国会議員までもが来ている。僕が呼んだのは同じ学校だった友達ばかりだ。

 いっぱい冷やかされたが、いっぱい祝福された。

 久しぶりに会った友達に、僕のこの早い結婚が子供ができたからと勘違いしていた人もいたが、とりあえず否定をしておいた。


 そして、控え室にいると、スタッフに時間だと呼ばれた。

 いよいよ緊張感が高まった。



 扉が開いた。2人の影が逆光になって見える。美咲とお父さん。

 ゆっくりと歩いてくる。お父さんに連れられて、僕のお嫁さんとなる人が歩いてくる。

 美咲は伏し目がちに、でもちゃんと顔を上げている。

 バージンロード。僕はその先で待つ。

 緊張した。心臓がばくばくと高鳴る。落ち着け自分。大丈夫。緊張するな。

 やがて、2人が僕の前まで来た。美咲のお父さんと目が合った。お父さんはしっかりとお辞儀をして、美咲を僕に任せる。僕はアイコンタクトをしてから、彼にお辞儀をした。

 そして、美咲と目を合わせる。彼女は僕の腕を取る。

 この瞬間、なにかのバトンが渡されたような気がした。

 僕たちは神父に向き直った。


 誓い合う。僕らは誓った。

 緊張した空気の中で、僕は美咲と出会ってからのことを思い出したいた。

 トンネルの中で襲いかかってきたとき、お見合いで再会したとき、初めてのデートのときに見せた人間らしい顔と一瞬だけ見せた泣きそうな顔、初めて抱いた夜、いなくなった美咲と再会して自分たちの気持ちを確かめ合ったとき、プロポーズを受けてくれたとき、ヤキモチをやいた彼女の顔、いつだって傍にいてくれた美咲。

 ずっと傍にいたい。この人と結婚したい。

 僕は彼女のベールを上げる。上目遣いに僕を見てくる。僕らは見つめ合った。

 ゆっくりとゆっくりと、人生最高のキスをした。

 僕らは誓った。一緒に幸せになると・・・・・・



 今日、僕らは結婚した。

 これはスタートだ。僕らの新しい第1歩がここから踏み出される。

 一緒に、幸せになる。

 ずっと、2人で・・・・・・・・・・

ここまで読んでくださってありがとうございます。

とりあえず一件落着です?うん。

結婚はゴールではないんです。

幸せな結婚をしたいものです。


この後、新婚旅行編を書きたいと思っています。

新婚後、初旅行ですからいちゃいちゃします・・・

もしよろしければ、もう少しお付き合いください。

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