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パーティーは楽しい(4日目~6日目)

釣り役、メインアタッカー、支援にヒーラー。

もう絵に描いた様なベストな構成。


おまけにコウはすごい情報通で指示も的確なんで、俺らもなんとなく格好ついてきたっていうか、それなりに効率的なパーティーになってきた。


まあ…たまにコウの実も蓋もない言い方でアオイが落ち込んで~みたいな事もあるんだけど、そういう時は良い人担当の俺の出番でなんとかその辺をクリア。


アオイを説得してる間はお姫さんをコウに押し付けておくと、最初の出会いで立場的強者となっているらしい彼女にどうにも強く出られないコウは普段の俺様っぷりが嘘のように大人しい。


人間関係においてもそんな感じでなかなかそれぞれが絶妙のバランスを保ってる。



もちろん俺らの他にも当然パーティー組んでる奴らはいる。


今日はたまたま例の厨二病のゴッドセイバーと奴の女王様らしいウォーリアのイヴ、あとはイヴのもう一人の従者ぽいベルセルクのショウの3人パーティーが側で狩りをしていた。


女一人に男二人の不協和音。

ショウが敵を連れてくると、ゴッドセイバーがいきなり無言でダっとどこかに駆け出して行った。

それをスルーで二人はそのまま敵を叩いている。


「イヴ~!」

やがてゴッドセイバーが戻って来た………張り合うようにでかい巨人を連れて…。

「俺の敵の方がでけえしー。

やっぱ俺マジやばくねっ?」


えっと…お前の方が別の意味でやばくね?

HP真っ赤なんだけど?

てか…倒せるん?それ……



「脳みそに何かわいてるな……」

コウが対峙していた眼前の敵を叩き伏せて、チラリとそちらに目をやってつぶやく。


「まあ…とばっちり来ない程度に距離取っておこうか…」

それを合図に俺も苦笑しながらみんなのHPを回復し終わって自分のMP回復のために座ってるお姫様を少し離れた岩陰にうながした。


全体の護衛がコウの仕事なら、お姫様の護衛が俺の仕事になってる。

ヒーラーに怪我させるってのはコウ的に一番の外道らしい。


まあ…確かにヒーラーさえ生きてれば瀕死でも回復してもらえるし、最悪死んでも蘇生してもらってデスペナで減る経験値も軽減できる。


効率的に考えてもヒーラーは絶対に死なせちゃいけないわけなんだけどね。


それ以上にコウ的には”姫”に怪我させるって言う事は許されざる罪悪って感じだ。

なんつ~か…騎士道精神つ~やつ?

いつも真っ先に大事にお守りしてる。



「ちょ、ちょっと信じらんないっ!

何連れて来てんのよっ、あんたっ!!」

俺らより少し遅れてゴッドセイバーが連れてきた怪物に気付いたらしい。

イヴが叫ぶ。


「一番強そうなの連れて来たしー。

俺すごくねっ?」

「すごいわよっ!

もう信じらんないくらいすごい馬鹿っ!!

倒せない敵連れて来てどうすんのよっ!!」


イヴの言葉にゴッドセイバーはポカンと立ちすくんだ。


「え~!マジっ?!

ありえなくねっ?!」

「ありえないのはあんたよっ!

それ連れて向こう行って死んどいてよっバカっ!

こっち連れて来ないでっ!!」

「まじすかっ!!」

もうさ…どつき漫才っすか?

悪いけど笑える。


「ほんと……ありえんな……」

あちらのドタバタを遠目で見ながら呆れた息をつくコウ。

しかしコウはそのまま後ろを振り返り俺に声をかけた。


「ユート。能力アップ一通りかけといてくれ」


その言葉にお姫様の隣でやっぱりMPを回復してた俺は立ち上がってかけよる。


「なに?助けるん?」

そのままコウの隣で魔法をかけ始める俺。


「ん~、義を見てせざるは勇なきなりって言うからな。でも倒せるかわからんからお前らは離れてろ。」

と、コウはいかにも奴らしい勇者様な台詞を吐いて、スラっと背中に背負った大剣を抜いた。


俺らの側でそんなやりとりが繰り広げられてる間にも、イヴ達は修羅場を繰り広げてる。


「きゃあぁっ!

ちょっと、どうすんのよ、これっ!」

悲鳴を上げるイヴの前に

「まかせろっ!」

と、立ちはだかるゴッドセイバー。


「暗黒に染まりし神の使徒、このゴッドセイバーの虚空より現れいでる刃の煌めき!

受けるがいいっ!!

ナイトメアスーパーメテオインパクト!!!」

と、そのまま巨人に特攻………スカっとかわされた。


厨二病決定。

つ~か、期待裏切らないゴッドセイバーに拍手っ。


「ムッ!貴様、やるなっ!!」

巨人の周りをそのままグルグル逃げ回りながら叫ぶゴッドセイバー。

呆れるイヴとショウ…。


「イヴ…この隙に離れようぜ」

というショウにうなづいて、イヴはショウと共にジリジリと後ろに下がって距離を取り始める。


「ク、クソッ!お前は俺を怒らせた~!

黒き業火がごとき俺の怒りを受けてみよっ!

今燃え上がる漆黒の必殺技!

ファイナルゴッドライトニングスラッシュ!!!」


………スカッ。

…だめだ、こりゃ。

残りHP…たぶん10以下?そろそろ死ぬかなぁ……。

つ~かさ、自業自得なのはわかるけど、もうちっとパーティーの二人フォローいれてやれよって思っちゃってる時点で俺もコウに毒されてきたんかな…。


んでもってだ、当のコウはあと一撃で死ぬだろうゴッドセイバーに斧を振り下ろしかけてる巨人に斬り掛かって行った。


ほんっきでもうなんつ~か、善意と正義の塊だよな、こいつ。

パーティーメンですら見捨ててんだぜ?

結構…どこぞの純粋培養のボンボンかもしれん…。



意外な事に…倒せないとばかり思ってた巨人は倒せる範囲の敵だったらしい。


まあ途中でコウに気付いたゴッドセイバーが同じく殴り掛かってもスカスカで全く当たらなかったから、俺の魔法の成果かもしれないけど。


とりあえず自分のHPを半分ほど減らしながらもコウが巨人をソロで倒した。


ズドン!

と音をたてて倒れたあと、ス~っと地面に巨人が消えて行くのを確認すると、そのまま無言で大剣をまた背に担いでこちらに戻ろうとするコウの背中に、ゴッドセイバーが


「待て!」

と、声をかける。


「俺は暗黒神の使徒、黒い稲妻ゴッドセイバーだ。

共に強敵を倒した盟友のお前の名前を聞きたい」


コウは一瞬無言で立ち止まる。

そしてため息。

「…キャラ名…頭の上に出てるだろ。

見えんのか。」

それだけ言ってまた歩き始めるコウ。


まあ…そうなんだけどな……。

なんつ~か、このおせっかいなまでの善意と、この実も蓋もない言い方のギャップが…。

もうちっと言い方変えれば思い切り感謝されると思うんだけど…。


「コウ君すごいねっ♪

マジかっこ良かった♪」

巨人が倒れて安全なのを確認してイヴが戻ってくる。


「今度リアルで会わない?

名前教えてっ?」

と、ピタっと寄り添いかけるイヴからスっと距離を取るコウ。


そのイヴの言葉にゴッドセイバーが口をはさむ。

「俺のダチだしー、3人で会わね?」

「何よ?コウ君のリアフレなの?GS」

「いや、今ダチになったしー」

「なってないっ!」

コウがきっぱりと言う。

「じゃ、あんたは要らない、GS」


なんか…感じわり~。

つかさ、本気で嫌な女の典型って感じだよな。


そんなゴッドセイバーとは対照的に、イヴのもう一人の仲間ショウは

「コウがすごいわけじゃないよ、イヴ。

向こうにはエンチャがいるから。

能力アップの魔法かけてるから同じくらいのレベルでも強いように見えるだけだって」

と、つめよる。


こいつも感じわりーし、みっともねえよな。

自分のパーティーメンの事だろうが。そうまで言う前に自分何かしてみたのかよっ。


強い弱いじゃなくて、倒せないかも知れない敵なのにデスペナ覚悟で全く得にもならなければ義理もないのに自分のパーティーメン助けにきてくれた相手に言うべき言葉じゃないだろっ。

ひがみにしかきこえね~っつ~の。


一方そんな敵対心ビシバシに言うショウの言葉にもコウの方はカッとなるわけでもなくひけらかすわけでもなく、極々冷静に

「ま、そういうことだ」

って返すあたりがクールっつ~か、ちとかっこいい。


コウはそのままこれ以上色々言われるのは面倒とばかりに、俺らの方に戻ってきた。


「悪い。待たせたな」

と俺らに言うコウのはるか後方では

「もうっ!コウ君行っちゃったじゃないっ!

GSもショウもエンジェルウィング一つ取ってこれないくせにっ」

と、イヴが怒ってて、二人が必死にご機嫌を取っている。

まあ…類友って感じのうざいパーティーだ。




その後しばらくそのまま狩り。

やがて唐突に…本当に唐突にお姫様の語り。


「えと…でも~コウさんもたぶん一人で強い敵と戦うより、みんなで遊んでる方が楽しいんだと思います♪」


通常会話で流される言葉。

誰と話してるん?

電波…受け取ってますか?


「ふざける?

えとぉ…私最近喜ぶの動作は覚えたんですよぉ♪

ふざけるはまだ覚えてません。

だからまだできないからやってません。

そんな動作あったんですねぇ。

今度やり方教えて下さいねっ♪」

謎の独り言が通常会話で流れて行く。


「え??えっと~~~ウィスって??」

この辺で…なんとなく見えてきた。

チラリとちょっと離れた所のパーティーを見ると、イヴがチラチラこちらを伺ってる。


「うわぁ♪そんなの初めて知りました♪

イヴさんて物知りなんですねっo(^-^)o」

これでほぼ決定。

「姫……もしかして…嫌がらせのウィスでもきてるのか…」

コウが敵の最後のHPを削った後、クルリとお姫様を振り返った。


そのコウの言葉に

「あ、あたしはっ…」

とあわてて駆け寄りかけるイヴ。


ディスプレイ上なのになんとなくコウの怒りがフツフツと燃え上がっていくのを感じる。

つか…キレる寸前ぽ。


「ぜんっぜん♪

お話してただけですよぉ♪

イヴさんとってもとっても物知りで、色々教えて下さいましたっ(^-^」

なんとなく一触即発な空気の中で、お姫様はノホホ~ンと返す。

「なんだか…どんなウィスがきてたのか想像付く気はするんだけど…(^^;」

俺は苦笑。

コウ無言。

絶対にぶち切れてイヴにウィス送ってる。


「コウさん♪

今ね、イヴちゃんにウィスって話し方教えてもらったんです♪

やってみていいです?(^-^」


そんな中でお姫様は一人相変わらず通常会話で話続ける。

本気で空気読めてない…ていうか別空間で生きてるよ、この子。


「今取り込み中だから待て」

と言うコウ。

やっぱりウィス中か~。

そのコウの返事にお姫様はキョロキョロとあたりを見回し、アオイに目を止め、じ~っと見つめた。

「私はいいよ、試してみても(^^ 」

と、アオイが察して言うと、お姫様は

「わ~い♪o(^-^)o」

と喜ぶ動作。


その後双方無言なところ見るとあちらはあちらでウィス中な予感。



なんつ~かさ、本人気にしてないぽいし言っても時間の無駄な気がしないでもないんだけど…。

暇~…。

俺一人暇ですよ?

と思ってると、アオイがため息。

まさか…とばっちりで今アオイの所にウィスきてたり?


(もしかして…アオイの所にもウィスきてたの?

大丈夫?)

だったら俺が文句言ってやる!と思いつつ聞くと、


(えっと…今のため息はフロウちゃんのウィスに対してなんだけど…

私の所にもってことはユートの所にも来てたの?)

と、アオイ。


信じられね~!!

アオイにも送ってやがったかっ!!

絶対に文句言ってやる!


(いや、俺の所には全然。

でもアオイの所にはきてたんだ…。

大丈夫?ひどい事とか言われた?)

さらに聞くとアオイは無言。


思い出して滅入ってる?

そうは見えないけど結構落ち込みやすいんだよな…アオイ。


(えと…、言ってくれれば俺の所でとどめておくから。コウまで行くと大変な事に…(^^;)


このままじゃ平行線ぽいから、別の方向で攻めてみる。

結構対人間に対しては臆病なところのあるアオイはそれであっさり折れてくれた。



だだ~っと流れるウィスの原文


『アオイちゃんて…寄生だよねぇ…』

『コウ君とかレベル高いしジョブも強いし、ユート君は底上げ能力とかあるけど、レベル低いシーフって何も貢献できないよねぇ…』

『コウ君とかレベル倍なわけだし、レベル低い上に弱いアタッカーが一緒じゃなければもっとレベル高い敵狙えて経験値もいっぱい入るよね』


むっか~……

もう…思い切りイヴが泣くまで文句言ってやれ!

コウ!!

つか、これコウに流したくなってきた…。


そしてもう1パターン

以下原文…『』内はイヴのウィスで「」内はうちのお姫様の通常会話…


『フロウレンスちゃん、レベル低いあなた達が一緒にいるとコウ君に迷惑だと思わない?

彼レベル高いし、もっと強い敵と戦えるわけだし…』

「えと…でも~コウさんもたぶん一人で強い敵と戦うより、みんなで遊んでる方が楽しいんだと思います♪」

『ちょ、ちょっとふざけてるの?!

あんた何で通常会話で返事してるわけ?!』

「ふざける?

えとぉ…私ね、最近喜ぶの動作は覚えたんですよぉ♪ふざけるはまだ覚えてません。

だからまだできないからやってません。

そんな動作あったんですねぇ。

今度やり方教えて下さいねっ♪」

『何?何言ってんの??

ふざけんなよ!

ウィスあるでしょ??

まさか知らないとか言わないでしょ?』

「え??えっと~~~ウィスって??」

『チャットウィンドウにカーソル合わせてCtrl+ スペースでチャットモード変えられるじゃんっ』

「うわぁ♪そんなの初めて知りました♪

イヴさんて物知りなんですねっo(^-^)o」



…すげえ…マジ日本語通じてない……。

これ…わざとじゃないとこがすごい……。

まあそんなお姫様のおかげで事が露見したわけで…。


コウの時もそうなんだけど、姫、ものすご~い良いタイミングでものすごく良い事言うよな…。

…普段は天然なだけにフォロー大変なわけだけど…


まあでも今回はマジ良い事言った!


(えと…ね、アオイ気にしない方がいいよ。

姫みたいに流しちゃいなよ。

まあ…姫は意識してとかじゃなくて、文字通り頭の中を流れて行ってるだけみたいだけど…(^^;

姫の言う通りコウは効率追求するより今のパーティでやるのが楽しいんだと思うからさ。)

俺はアオイにまたウィスを送る。


正直…俺にもコウが何を思って俺らといるのかわかんないんだけど、効率より楽しさ選んでる、そう受け取っておくのが一番平和だ。

「ごめんな…姫。ちゃんと苦情は言ったから。」

俺らが裏でそんなやりとりしてると、どうやらイヴとウィスを終えたらしきコウがそう言ってお姫様の頭をなでた。


「??なんでコウさんが謝るんです??」

「いや…たぶん俺のせいだから。」

「コウさん、忙しいのはしかたないですよぉ?

大丈夫♪

アオイちゃんがつきあってくれましたからっ(^^」

「なに?アオイと一緒にウィス入れてたのか?

そっか。自分で言えるなら良かったけど。」


………


(たぶん…言ってる事全然かみ合ってないね)


もう笑うしかないんだけどさ…このタイミングだからアオイの元気付けの材料にくらいはなるかな。

俺がウィス送って苦笑すると、アオイも笑ってくれた。


本当はまだ滅入ってるかも知れないけど…とりあえずドツボにはまり込んではいないと思って良いか。


(今回はね、イヴがコウ欲しくなっちゃっただけでアオイがどうのとかじゃないよ、話聞いてると。

ま、長くやってると色々あるよ。

でもさ、仲間内では楽しくやろう。

アオイも他に言いにくい事とかあったら俺に言ってね?

必要な事なら俺が他に伝えるし、愚痴なら俺の所でとめとくから(^^))


まあ…あわよくばそれをきっかけに…なんて下心がないとは言わないけど、とりあえずは落ち込まれるとなんとなくこっちまで悲しくなってくるからさ。


当分ははけ口の”良い人担当”でもいっか…なんて俺は思った。


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