クレバス
ここは冷たく暗い穴の中。
さむい。外は雪が降ってるのではないだろうか。
冷えは私の指先、足先からどんどん体温を奪っていく。
「ああ、さむい。」
一人つぶやいた、声はあたりに広がり消える。声が消えた瞬間、更に冷たく感じた。
刺すような冷え、凍える体、冷えた指先で冷えた鼻先をこすった。
誰にも会えない。外にすら出れない。ここ数日、人の気配すらない。
「私はいつまでここにいるのだろうか…?」
ポツリ。またつぶやいた。ここにいて何日何年、そんな日数は忘れてしまっていた。昔の記憶さえ寒く凍りついてしまったかのようにおもいだせない。
春になれば誰か来るのだろうか、そもそも春は来るのだろうか。とても冷たくさみしい冬が私の体から体温、肉体も奪っていった。
氷の山、深い深い穴そこから私は寂しく冷たくそこにいる。
「早く誰か見つけてくれたらいいのに」
人ではなくなった私は今も誰かを待っている。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
皆様も冷えにはご注意ください。