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インサイド  作者: 成神全吾
ノンペル/クエスト
7/57

モルモット『3』

「いや、おたくの娘さんがですね。ここは地球じゃないなんて素っ頓狂なことを言ったので、改めて聞こうかなと思いまして痛っぁ!」



尻に大激痛。割れ目にトゥが襲来。



「だ~か~ら~………私を子ども扱いすんじゃないわよ! 私がここは地球じゃないって言ったらそれが本当のこと! 一回で分かりなさいよこのモルモット!」

「モルモットモルモットって………いい加減にしろよこのガキ! またケツ蹴りやがって! 君のうじゃけた考えにはどうも信用できるものじゃない………もう御天頭(おてんと)に来た。親御さんの前で気は引けるがここは教育的指導を施しあばばばばばばばばばば!?」



体を駆け巡るサンダーショックにその場に倒れ伏せる。



「バカね。アンタはモルモットなのよ。ただ首輪をつけるだけだと思った? モルモットが反抗した時のための鞭なのよその首輪は」

「この首輪から電流……? これは……人間のすることじゃねェ。おい! こんなことしていいと思ってんのか!? ぜってぇ訴えてやる!」



これは許されることではない。声を荒げて木霊する。


そうだ。ここに連れてこられたのも全部違法だ。

そりゃ助けてもらった事実もあるけど、電流の流れる首輪をハメられてモルモット呼ばわり何ぞ完全に違法だ。


そう、ここで声を上げずにいつ上げるか。決して許されることではない。



「……君はルビィからここが地球じゃないということは聞いてるんだろう」

「あん? 聞いてるけど、んなモン信じてるわけないだろ。いいから、家に帰せお願いします! 痛いのは勘弁してください!」

「……私の言葉が信じられないなら空を見ればわかるわよ」



空を見ればわかるという言葉。

なぜ空を見ればわかるのか。それは空を見たらわかるのだろうが。

何だ。よくある月が二つあるとかそんなパターンでここは地球じゃないってことを証明するのだろうか。


バカバカしい。そんなことあるはずない。


じゃあ見てやろうじゃないか。腕に力を入れ立ち上がろうとする。



「……足に力が入らない」

「カッコ悪。ほら、椅子に掴まりなさい」



何故か手を差し伸べてくれずにいちいち椅子を持ってきた。

どこか釈然としないが椅子に掴まり立ちあがる。

ふらつく足を叩いて御して脳幹が揺らめきながらもオフィスにあるような馬鹿でかい窓から空を見上げる。


グルリと見渡す。別に特に何か変だあれが変だのは無かった。

普通の青空に普通の雲。

見慣れた空……空なのだがどうも物足りなく感じた。

 

空の明るさは少なくとも夕刻などとは程遠い昼時の青。それなのに見えるはずのものが無い。

窓に張り付き、大きく首を振ってもう一度確認する。先ほど考えた物とは真逆。月、太陽が二つとかのレベルじゃない。



「太陽が……ない?」



そうだ。見えるはずの、あるはずの太陽がどこにも見当たらないんだ。

いや考えろ。この窓から見えないだけだ。だから地球じゃないとかじゃないはず。ないはずだ。


だがさらに追い打ちをかけるのは空にうっすらと見えるいくつかの線。まるで、空に区切りがあるような、映像を映し出しているような機械的な線。



「……ここは、どこなんだ?」

「ここは地球どころか惑星じゃないわよ」

「……じゃあ、どこなんだ?」



その問いの答えを告げられる。



「ここはいくつかの『島』がチューブによって繋がれてる超巨大宇宙漂流艦隊船団『カラーリテラ』」



宇宙。そのワードに身体から一つの答えが噴き出す。


ああ、これは夢だ。夢に決まっている。

いきなりここは宇宙を漂流する艦隊を編制した船団なんて言われてそんなオカルトは否定的に脳内麻薬を分泌して妄想に引きずり込もうとする思考を叩き殴り正常位置に舞い戻る。



「……質問だ。アンタらは何が目的だ。俺を家に帰してくれ!」

「後者は無理だ。物理的に無理だ。目的は……簡単に言えば侵攻だ。そのために君を連れて来た」

「……どういうつもりで俺がここにいるんだ」



その問いに槍を刺すようにルールビィが答えてきた。



「カラーリテラには今大きく二つの考え方がある。超巨大船団ってことでそれなりの人口も収容できるし食糧問題や環境問題もここ何百年全く問題になってないけど、この空調も空も地面も全部作り物。言ってしまえば『本当の星に移住したい』って考える『侵攻派』、別に生活の場をカラーリテラから移さなくてもいい。むしろ移住できる星があるならその星との清く正しい関係を深めたいと考える『親交派』の二つ」



言葉の前に説明が入ったからわかるけど読みが一緒だから口頭だけじゃどっちがどっちだか聞き訳ができない。



「でもそう都合よく移住ができる星なんか見つからずにどれだけの時間が経って、結局のところ侵攻派は名前だけの存在で夢見るロマンチストって言われてきたわ」



だが、とハートアスは先ほどのルールビィのように横槍を刺してきた。



「それも十年ほど前の話だ。我々はやっと見つけた。移住できる星を。そのことによって侵攻派の活動は活発化。カラーリテラにかつてないほどのムーブメントが起こっている」



力説したが、ここで今一度知らなければいけないことが分かった。


侵攻派親交派、どこを侵攻したいのかどこと親交したいのか。おおよその見当が脳裏に浮かんだ。

ただ思想の問題。住める星があれば侵攻するという考えと親交する考えは全く違う考えだ。


だからこそ確かめなくてはならない。

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