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インサイド  作者: 成神全吾
ノンペル/クエスト
6/57

モルモット『2』

「はぁ……しかしまだ初対面なので、じゃあハートアスさんでいいですか?」

「構わないよ」



その言葉に胸を撫で下ろす。



「よかったですよ。やっと良識のある知的な会話のできる人と会えました」



これでやっと今からの現状の把握から打開策を講じるといった行動に実行できる。今の今まで隣の尖った少女のいびりに耐えてきたかいがあったものだ。



「やっと会えた? ちょっと待ちなさいよアンタ。その言い分だとまるで私が良識のない粗暴な会話の成立しない人種だって思ってたわけ? え? そこんとこ詳しく答えなさいよコラ」



うわぁ反応してきた。



「あーっと……そういうわけじゃないんだ。俺が言いたいのは俺より大人な人に遭えたって意味で、」

「どう見ても私はアダルトでしょーがこのヴォケ!」



後ろからゲシゲシと足の裏で叩いてくる。出会い方はいいものじゃなかったけど、そこまで悪印象を与えた物ではない気もするが……全裸姿がそんなにもグロテスクだったのだろうか。



「やめろよ。ヘルニア持ちだから俺。てか普通に腰蹴られていてーんだよ。さすがに温厚な俺でも聞き分けのならんことにはビシッと怒るぞ」

「うるさい! モルモットの分際で御主人様に口答えするんじゃないわよ!」



足蹴はまだまだ続く。



「御主人様って……ハートアスさん。この子の親なら止めて、くだ、さい……いい加減にしろよ!」

「はぁ? 何をいい加減にしろっての? 全く。パパも何か言ってよ」



ここで親に振っていくか。

先にどうにかしろと振ったが。さて、どちらつくのか。



「ルビィ。これ以上蹴るのはやめなさい」

「は? なんでそうなるのよ」



ハートアスが与したのはどうやらこちら側。うん、良識がある。


今までのことを咎めたりはしていないが、流石に今の粗暴な行いに『お前は正しいことをしている』みたいなことを言ったら確実にこの子にしてこの親ありの評価を下していた所だ。



「何でこいつの味方をするのよ!」

「あのなぁルビィ」



ハートアスは近づいて、ルールビィの前で腰を下ろし、肩を叩く。

いい。まさに理想のお父さん像。聞き分けのない娘と同じ視線に立って優しく諭そうとするその姿。まさに良識のある知的な会話のできる人だ。



「お前は大変な勘違いをしているぞ。こいつは我々にとってとても大切なモルモットだ。乱暴に扱って使い物にならなくなったら大変だろう」



…………………………………………………ン?


今とても良識のない粗暴で自分勝手な言葉が良識のある知的な会話のできる人から聞こえた気がしたが、気のせいか。気のせいだ。


己の心の芯に言い聞かせる。



「だけどパパは私にこの一件を任せるといったのよ。私がこいつに何しようと勝手じゃない」

「まぁまぁ考えてみろ。お前が今まで大切に研究し作り上げてきた大切な研究対象があるとする」


「………なあ、ハートアスさん?」



文句……の一つというわけでもないがこの場の槍を一つ差し込んでもいいだろうと一声かけたのだが。

真正のスルー。此方に気も止めず見向きもしない。


付け入るスキがないのではない。眼を合わせる気が無い、自分以外のペースを気にも留めないと言ったところだろう。



「研究対象は自分の命と同等以上に大切だ。それをどこの馬の骨とも手合いとも分からないやつに壊されたら嫌だろ」

「嫌に決まってる! 何を言っているんだパパは」


「アンタらが何を言っているんだ」


「嫌だろルビィ」


「俺が嫌だよ」



とにかく横槍。かまってもらわなくても兎に角横槍だ。




「つまりお前のしていることはそういうこと、自分で自分の首を絞めてるようなものだ。新しいおもちゃだからって好き勝手してもいいとと言っても大切な被検体。むやみやたらにモルモットを壊そうとしたらダメだぞ。利用価値のあるものはちゃんと大事にしなさい」

「……善処するわよ」



つんけんしながらも、口を尖らせながらも父親の優しい問いかけに応じ下を向いてしまう。そんな娘に微笑みながら頭を撫でる様はまさに理想の親子像。


ああ素晴らしきかな親子愛。だけど完全に研究対象、親子でモルモット扱い。

今こそ言える。この子にしてこの親ありだ。



「何なんだよこれは」

「……ん?」



不意にハートアスと目があってしまう。少々の間と共にルールビィに見えないようにグッと親指を立ててきた。


ダメだ。初対面なのに殺意しか沸かない。



「で、我々は何の話をしていたんだっけか。おや、なぜ距離を置くんだ?」

「いや、俺こう見えて日陰者なんで壁際が好きなんですわ。後ろに壁があるとすげぇ落ち着くんですよ。あとは第四の壁があれば完璧ですね」

「ふぅん……地球人は日陰を好む、か。新しい見解だわ」



メモっているがそれについては言及をするつもりはない。



「で、俺としてはとっとと家に帰りたいんですけどー……帰り道の方、教えてくれませんかねぇ?」

「君はルビィからここがどこだか聞いてないのかね」



聞いてる、というよりここが地球じゃないと教えられた。だけどがそれは信じるに値しないものだったのだ。

まさかこの親バカは娘の言うことを信じろというのではないのだろうか。


モルモットとかの暴言は後回し。

ここは法治国家だ。もし本当にモルモットとか言って人体実験なショッカーを行おうと言うのなら、全力で逃げてこの悪事を全世界にネットの海に放逐してやるまで。

今の世は情報社会。

インターネットは広大。

情報が拡散すれば隠蔽など以ての外。


そうなれば事態を収拾できるのは陰謀論のみだ。

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