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インサイド  作者: 成神全吾
ノンペル/クエスト
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エピローグ

「ハーン。やっぱりエイリアンガジェットは胸を叩くねぇ」



高い高い天井高架の一端。俺はマスクから流れるお気に入りの音楽を聴きながら体をうねらせて踊るかの如くノリノリに気分だった。


カラーリテラに来てエイリアンガジェットに出会えたのは本当にここに来たことがよかったと思えることの一つだ。


この心臓を打ち付けてくるビート。どうせなら生の演奏が聴きたいな。



『ノンペール。事件よー』



突然に音楽がブツンと切れて代わりに甘い声質の仕事の催促の声が入ってくる。


ずっこけた。高架から前倒しに落ちてしまう。

あぶねぇ! と手のひらから弾む空間を高架に固定してゴムひもが戻るように上へと戻る。



「ったー! 何だよトガ公! せっかく一番盛り上がるところで水差すことしちゃってお前はー!」

『ブレインストロング』

「……BRAINSTRONGゥ。で。事件ってなんだ?」

『アンタ、ハイシット高架線にいるんでしょ? 脱獄犯が逃走中なのよ。もうそろそろそこを通るはずなんだけど』

「つっても別にそれらしきエアリアルは眼前にはドゥベッヘェ!?」



通信中の衝撃。

背中にぶち当たる鋼鉄の感覚と共に視界が急激に加速していく。


な、何が起きたんだ!? 背中から痛烈なる押してくる感触が体をくの字に変えてくる。


状況確認だ。ハッキングカメラで街中のカメラの様子を見てみる。

自分を他人から見る視点ではどうやら俺はエアリアルに突進されてフロントの所に貼り付けになっているようだ。



『そのエアリアルが脱獄犯の乗ってるのよ!』

「そりゃまたご都合的だな。最後だからって手抜きは勘弁……ん?」



身体をくるりと反転させてエアリアルのフロントガラス越しに脱獄犯もとい脱走犯の顔を拝見すると。



「わお。お久しぶり」



かつて捕まえた。強盗犯だった。



「そして事件解決!」



詳細はカットだ!

とりあえず仕事を終えてマスクだから汗もかかないのだけどなんとなく額の汗を腕で拭う仕草を取ってしまう。


にしてもやりすぎたかな? エアリアルが地面に突き刺さってやがる。



「公僕にどやされる前に逃げないと。ん?」



花瓶を割った現場から逃げる子供のように逃げようとしたら一人の少年がメモとペンを手に近寄ってきた。

ファンなのかな? ならば応えないといけないな。


俺は逃げるのをやめて踏みとどまり、少年からメモとペンを受け取りサラサラサラと書き留める。



「少年。俺に憧れちゃダメだぞ」

「あの、ノンペル。ノンペルは本当に地球人なの?」



少年は興味津々と聞いて来た。

地球人なの、か? その質問はこの一ヶ月痛いくらい耳にした。



「ああそうだ。俺は地球人だ」

「地球人なのに何でカラーリテラにいるの?」



その質問も痛いほど聞いた。

どうやってカラーリテラに来たのか。カラーリテラに来て何をするつもりつもりだったのか。そんなことばかりを聞いてくる。


はぐらかすわけじゃないけど俺はいつもこう答えている。



「カラーリテラの皆と親交を深めたいと思ったからだよ」



そーんな適当なことを言って俺はまた空に駆け出す。


アンペルとの戦いから一ヶ月。

戦いに敗れたアンペルはあの戦いから表舞台を去った。


人々は俺とアンペルの戦いを一部始を知っているのでノンペルが現れてアンペルが現れなくなったので『あぁ、アンペルは負けたのか』という認識と共に侵攻派は親交派に敗れたと風評するようになった。


そのあとも大変だった。ルールビィが親交派のトップであることを明かし、独自の考えを公表。もちろん賛否両論となり大討論に発展した。


親交派は侵攻派のトップを殺した。そのトップの娘が親交派だった。彼女は止めることができなかったのか。彼女はカラーリテラを変えようとしていた。


ルールビィは連日引っ張りだこで会見を行っていた。


しかしカラーリテラの世論に絶対的な風をもたらすものがあった。


それが俺ことノンペルの存在だ。


カラーリテらの住人は地球に知的生命体がいることを知っていないため俺が地球人だと自白したことに驚きを隠せずにいた。


中には地球人を語るペテン師と根も葉もないことを流すやつもいるけど、実際に地球人だと証明できるのは口だけなのでそれはしょうがない。


だがルールビィはさらに公表した。私は地球に行く術を開発した。すでに地球との接触を行っている。

それはかつて行われた拉致のこと。


まだ不完全ではあるがその際に俺を招待したと俺が招かれてきたかのような物言いに事実を捻じ曲げられて伝えた。


そしてさらに伝えた。まだ不安定な移動手段を完成させ、地球との接触を図りたいと思っていること。それは決して戦争ではなく親交の懸け橋としての接触だと高々と告げた。


地球人として公表された俺がカラーリテラで多くの事件を解決して回っているのはカラーリテラと親交を望んでいるためと言った結果。上手い具合に傾いてくれて世論は地球との親交を望む声が多く上がった。


戦争ではなく手を取り合うための接触をとカラーリテラの皆が手を上げてくれたんだ。

ルールビィの悲願、皆が手を取り合える親交に近づいたんだ。



『ノンペル。シガルアット区間でまた事件よ。急いで現場に急行して』

「今事件解決したばっかなのに人使いが荒いな! まあ行くけどよ」



俺はこの街を駆け巡る。

それは人々のためではなく一人の少女のために。


決して寂しい思いをさせない。一人ぼっちの女の子のために空を駆ける。


俺はノンペル。仮面無き者だ。

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