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インサイド  作者: 成神全吾
ノンペル/クエスト
46/57

クエスト『1』

暇をもらった。

と言っても家に居たら行けないとは言われていないので最初はルールビィの帰りを待っていようと思ったけど、どうしてもじっとしていられなかった。


ルールビィの後を追い、ハートアスの屋敷の片づけとやらを手伝ってもいいかとも思ったけど、無理に一緒にいてはルールビィに反発されるのはもちろんだけど、本当に一人にしてほしいそうだったし。



「数日前からずっと一人にさせてたけど。付いていくべきだったのか? 俺はあいつの家族じゃないし、嫌がってるのに無理強いも……それはさっきのことでも言えることか」



そんな感じで家に閉じこもっていては考え込んでしまうのでルールビィからもらったお暇を外に出て発散しようと街に繰り出していた。


また連絡すると言ってたけど、どれくらいかかるのだろうか。

一日もかからないのか、それとも相当日数がかかるのかはわからない。


とりあえずいつもの道を歩く。

たどり着いたのはいつのもウォーキーショップだ。



「ん? あらぁゴトーさん? 今日は一人? 一人なんて初めてじゃない?

「まあ、ルビィの方は用事があるみたいでして。なんとなく散歩していると小腹も空いて来たので……ふらっとここに来てしまいました」

「ゴトーさんもあの子に毒されてきたねぇ。じゃあ何にする? 青塗り?」



いつも頼んでいるウォーキーは青塗り。

活け造りの赤塗りにそうじゃない青塗り。それに色々トッピングしていくのだけど。



「今日は赤塗りでお願いします。なんだかそう言う気分なんですよ」

「そう。あの子がいたらさぞ喜ぶだろうねぇ。ところで、老婆心から何だけど、あの子は大丈夫なのかい?」



おばちゃんは心配そうに聞いてくる。


流石に話は広がっているか。

数日前の惨事。計六人の死亡者が出たあの事件。


親交派の行き過ぎた思念が引き起こしたあの事件は親交派への信頼を大きく損なうことになった。

ツボを割るのは簡単だ。だけど割れた破片をパズルのように修復するのは難しく、決して同じ形には戻らない。


作った傷は大きすぎた。ノンペルとしてやってきた活動がすべて無に帰したような感じだ。

修復は不可能かもしれない。



「今……一人にしてほしいって言われているんです」

「えぇ? いいのかい一人にしといて」

「本当は一人にしない方がいいと思うんですけど、ハートアスさんとあの子の間に赤の他人の自分が入るのも億劫になると言いますか」



ただ単にだけど、やはりまだ壁を感じる。

本当に拒絶されたら踏み込むのに戸惑いが生じてそれを肌身に感じたほどだ。



「何言ってるんだい。あの子があんなに明るくなったのはゴトーさんが来てからだよ! 胸張んなさいな。これ食べてビシッとしなって」



赤塗りのウォーキー。ルールビィの大好物。

ウォーキーなんて名の、ハンバーガーもどき。



「どうだい? 一緒にいる気になったかい?」

「……いえ。あの子は一人になって自棄になるなんてことはしません。信じてほしいと思っているでしょうし、待つことにしますよ」

「そうかい? あんまり淋しい思いをさせちゃダメだからね」



念入りにくぎを刺されながら席に着く。


赤塗りのウォーキーを手にするのは最初にルールビィにこの広場に連れてこられた以来で、こうして面と向かい合って口にしようとするのは初めてだ。


ぎょろりと目がこちらを睨み付けてくる。

初日は驚いて地面に落としてしまったけど、今度は意に介さず豪快にかぶりつく。


ピギーとウォーキーの断末魔が口の中に広がる。食われてもなお必死で抵抗する様が口の内側を叩いてくる。


美味しい。何というか、生き物は他の生き物を食べて生きている。ウォーキーは新鮮なまでに口の中で暴れてまるで散っていく花弁のように動かなくなっていく。

それはまさに『生き物』を食べている感覚だ。


満たされる食欲と同時に支配欲が感じられた。


ウォーキーが喉を通り、言葉が出る。



「美味しい……美味しいなぁ」



ウォーキーを食べた後は適当に歩いた。


いく当てなんかない。

ルールビィの連絡もいつ来るかわからない。けど零壱ゲートのおかげでどこまで行ってもすぐにルールビィのところに駆けつけられるんだ。


多少遠出したって怒られないだろう。


こうしてカラーリテラを一人でじっくり歩くのは初めてだ。

いつも隣に出不精なルールビィが面倒くさそうな顔をして歩いてたから、やはり淋しいものだ。


景色は移り変わる。

いつも歩きなれた道から少し離れた景色。


数日前にあんな事件があったって言うのに皆何食わぬ顔で歩いているけど……そんなものか。実際地球にいた際地元で大きな事件が起きても自分には関係ないって学校に行っていたことを思い出した。


更に歩いて、歩いて、歩いてたどり着いた場所は少しさびれたストリート的な場所。

人通りも一気に少なくなり、見るからに生活が荒れているような輩もチラホラ目につき始める。

耳をすませば喧嘩をしているような声も聞こえるし、来る場所を間違えたか?


ちらっと見てしまった。建物の間で三人が一人に暴行をしているところを。

そして暴行をしている一人と目が合ってしまった。


少し無言の間見続けてしまった。


無理に首を突っ込む気性ではないが、ノンペルとして慈善活動をしていたせいでどうにも放っておけない質が芽生えたようで、つい近づいてしまう。



「やめてあげれば」



唐突な第三者が生意気に正義感を振りかざして横槍を入れる。もちろん悪漢共は気に入らないのか一人が詰め寄ってくる。


見るからに乱暴そうな三人と少し気弱そうな一人。


少し考えて、ある考えを口にする。


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