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自称魔王の、魔王を倒すまでの道  作者: 刺身こんにゃく
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急襲、失敗

ゼノは不意に雷に打たれたかのように身を震わせた。


「はっ...何を言っていたのだ我は!剣士、魔法使い、武闘家ときたら次は僧侶じゃないか!そうだ、ど忘れしてた!あれ、でも...」


ゼノは傍らの美しい女性に視線を向ける。

白い服を纏い神々しさすら感じさせる彼女は、正に聖女だった。


「てことは、貴様は僧侶じゃないか!」


「うるさいって言っているでしょうが」


きつく睨まれるも、ゼノは動じない。


「僧侶は確定、剣士も確定となると、後は魔法使いと武闘家だな!うーむ、いいぞ、この調子で勇者達を集めるのだ!ふははははは!!」


ゼノの笑い声に、見ないように、関わらないようにしていた周りの国民達が全員びくっと縮こまる。


それを見て、ふと、ゼノは疑問を口にした。


「そういえば、貴様は我を見て何も思わないのか?」


「その手には乗りませんよ。貴方の顔を見たら戦意を喪失すると噂されています。残念でしたね、既に私は己に魔法をかけることによって、貴方の顔を野菜に見えるようにしています」


「なっ...そ、そんな魔法があるとは...!成程、だから貴様は...」


「言っておきますが、これから来る剣士にも、その魔法はかかっています。何をしようが無駄ですよ」


「ふははははは!!引っかかったな勇者よ!我の一番の売りどころは顔の怖さではなくこの怪力よ!!」


「じゃあ死ね」


その瞬間、ゼノの首に容赦なく剣が叩き込まれた。


ゼノが軽く吹っ飛び、近くの服屋の壁に衝突して成すすべもなく倒れる。店の主人が「勘弁してくれーっ!」と叫びながら逃げていった。


ゼノを吹き飛ばしたのは、淡い赤の髪に濃い灰色の瞳の、旅人風の格好をした青年だった。


「何をするのですか!」


剣を収める青年に、レオーネは突っかかる。


「何だと?魔王を殺したんだろーが」


「連携して攻撃すると言ったでしょう!」


「黙れよ、狗が。俺はサラさえ帰ってくればそれでいい」


青年はぞっとする程冷たい目で、レオーネを射るように見るが、レオーネはひるまない。


「魔王があの程度で死ぬ筈がないでしょうが!」


「何言ってる。首を斬ったんだぞ」


「...はあ。貴方の剣、よく見てみたらどうですか」


「...剣?」


青年はいぶかしげに再び剣を抜き、そして目を見開いた。

青年の剣は、半ばからひびが入っており、思わず触ってみると、折れた。

そして、死んだ筈の魔王が勢いよく体を起こす。


「ふははははは!!まだまだ!!」


「貴方今、タイミングを見て起きたでしょう」


「魔王とはそういうものだ!勇者に絶望を与え復活するのだ!」


「無銭飲食すら出来ない善人のくせに、何を言っているのですか」


「ぐっ...まあ、それは置いておけ!さて、勇者よ!魔王たる我にかかってくるがいい!」


ゼノは慌てて叫ぶと、構えた。

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