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自称魔王の、魔王を倒すまでの道  作者: 刺身こんにゃく
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魔王参上

山羊の魔物、サテュロスのフームはあくびをしながら、共に魔王城の門番を勤めるハーピー、シイナに話し掛けた。


「なあ、さっきからリールがめちゃくちゃ怒ってる声がするけど、何かあったのかなあ」


「ん?何だ、あんた知らないのかい。魔王様が帰って来たのさ」


「え?魔王様って、今朝嬉々として出掛けていったんじゃ?」


「あたしも詳しくは知らないさね。勇者達を集めてくるとか言ってたけど、失敗したんじゃないのかい」


「勇者!?うわあ、いいなあ!カッコいい!勇者アルみたいな人かな!」


「どうだかねえ。まっ、勇者アルみたいな人なんて、そうそういる訳ないさ。というかあれ、おとぎ話だろう?」


「え?そうなの?僕てっきり時々遊びに来てたあの小さな女の子がそうなのかと...」


「ええ!?そっちの方がびっくりだよ!」


フームとシイナはのんびりと雑談を続ける。

たとえ今この時勇者が現れたとしても、変わらずに。





「魔王様、あんた言いましたよね」


「はい...」


「勇者見つけてくるって言って、今朝、出掛けていきましたよね」


「はい...」


「なのに何で宣戦布告なんてしてんですか!勇者はどうしたぁっ!」


玉座に縮こまっているのは魔王で、怒鳴っているのは側近の魔物、リール。何ともおかしな図である。


「だ、だって、アギスさんが...」


「他の人のせいにするんですか!!」


「ごめんなさい!...で、でもちゃんと呼び掛けたぞ?勇者集まれよって、ちゃんと言ったぞ?」


「あんた自身で勇者集めるんじゃなかったんですか?自信満々だったのは誰ですか?」


「うっ...だ、だが!二人は確定しているんだぞ!魔法使いと剣士!レオーネさんと結局名前分からなかった人!」


「本当に来るんですか?一月後には、レナンド王国を攻めなきゃいけないんでしょう?それまで来ますかね」


「来てもらわないと困るのだ...」


ゼノは深刻そうに目線を下に向けた。


「...く、来るよな?来るよなあ!?勇者、ちゃんと来るよな!?」


「知りませんよ来ないんじゃないですか!?」





「ほんとに来ちゃったよ」


リールは呆然と城の最上階の窓から悠々とやって来た人間達を見つめた。

まだ魔王の宣戦布告から一週間しか経っていない。この秘境を攻略するのにも苦労する筈なのに、恐ろしい早さだった。


「魔王様ー、魔王様ー!勇者来ましたよー!」


「何っ!?流石勇者!素晴らしいぞ!よし、私自ら出迎えてやろう!」


「あんたは待っててくださいよそんなのカッコ悪いでしょ!」


ゼノはきょとんとした顔付きになると、すぐに眉を寄せる。


「何を言う。魔物達が怪我をしたらどうするのだ。即刻ここに通せ」


リールはため息を吐き、ゼノを凝視した。


「はあ...あのねえ、魔王様。私達だって、あんたに付き合う覚悟はとっくに出来てんですよ。最期までね」


魔王はしばし呆気に取られた後、目を見開いた。


そして、玉座の間を飛び出した。





レオーネは苦々しい思いでその場に居合わせていた。

自身が屑と呼んでいる青年、ケリーとその生意気な妹サラがいるのも理由の一つではあるが、それ以上に気に入らない人物が先導しているのが酷く苛立ちを募らせる。


「ふんふふんふふーん、さあもうちょっとじゃぞ!早く進むのじゃ俗物どもめー!うははははは!!わらわは無敵じゃー!」


突然現れ魔王城への案内役を買ってでた幼い赤毛の少女。

どう見てもただの少女だというのに、この自分が顎で使われているのが許せない。

無事に魔王城に辿り着けたら、即座に死を与えてやろうと思う。


「ほら、危ないですよ、リンク様。ちゃんと僕に掴まってください」


「ぬお?おお、すまんな!」


そして、少女をリンク様と呼びおんぶしている美少年。

この少年の名前はアルといい、少女のしもべだと名乗った。変態である。

アルは誰に対しても丁寧で優しく接している。が、レオーネは気に入らない。

密かに付けたあだ名は偽善者。

少年の気持ち悪い程の正しさが、そう呼ぶに値した。

たとえば、町の貧しい子供を優しく相手した後、その父親が盗みを働いたら躊躇いなく殺したり、平民の恋人と逃げる為に家族を騙し裏切った貴族の女性を捕まえ、その恋人を殺したり...など、行動が苛烈なのだ。

早い話、人間味がないのだ。これならよほどゼノの方が善人だと思う。


そんなことを考えているうちに、本当に魔王城へ着いてしまった。


「おおっ懐かしいのう!ゼノのやつ、息災じゃろうか」


「リンク様!魔物です!」


のほほんとしているリンクを庇いながら、アルは剣を構えて門を守るサテュロスとハーピーに飛び掛かった。


結果は、見るまでもなかった。


「おぬし、本当に強いのぉ。わらわびっくり」


「...はは、そんなことありませんよ」


レオーネは苦い顔をする。少年は明らかに楽しんでいた。


アルはにっこりと微笑み、倒れている二体の魔物にトドメをさそうと剣を垂直に振り降ろした。

だがその剣は、空を斬った。


「...おや?」


リンクが呑気に声を上げる。


「おー、久しぶりじゃなゼノ!元気そうじゃのー!」


「...ええ、お久しぶりですね...ルーさん」


フームとシイナを寸でのところで救出したゼノは、邪悪な笑みで言葉を返した。

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