女子トイレでの秘密の話
「ゆりあーっ!ちょっといい?ってか、藤崎!ゆりあ借りる」
「あー、うん。どうぞ」
私たちが話していると、突然嵐のように現れた女の子。それは、同じ学年で同じクラスの私の親友である新島紗江子。
「ほらっ、ゆりあ!行くよっ」
そういって、紗江子が私のことを引っ張って行ったのは女子トイレだった。
「え?何、どうしたの?何かあったっけ、紗江子」
「何もないわよ。ただ、なんか藤崎といるのにゆりあが全然楽しそうじゃなかったから。何かあったのかなって思って」
さすが、紗江子。人のこと良く見てるマネージャーだな。とっても鋭い。直人もこれくらい鋭かったら…って思うけど、そしたら私が直人のこと好きなのもバレちゃうか。
「さすが紗江子」
「ってことはあたりなわけね。もしかして、藤崎に彼女でもできた?」
「…違う。彼女できたなんて言われた日には、学校来れない。大泣きだよ、それ」
「じゃあ、好きな子?」
なんでこう、ドンピシャで当ててくるのかな。
「無言ってことは肯定だと思っていいの?」
「そうよ、そう。で、しかも…私とは真逆な子。さらさらの黒髪のストレートの女の子で、佐野麻由って子」
「たしかにそれは真逆かもしれないわね。…違う人だったらいいんだけど、私佐野って子に朝すれ違ったんだよね。制服の名札に佐野って書いてあって、その子バスケのキーホルダーつけててさ…。私ついつい、バスケに興味あるの?って聞いちゃって、そしたらマネージャーやりたいって。だから、是非って言っちゃったんだよね……」
それもう、直人の望み通りじゃん。バスケ部のマネージャーになるって。
なんで、直人の勘がこんな時に当たるの?
…勘っていって道を選べば迷子。
…勘で賭すれば、絶対に負ける。
そんな直人の使えない勘がどうして、こんな不必要な時に当たるわけ?
「それ、本当だよね?」
「う、うん。名前も聞いた、佐野麻由って。でも、もしかしたら…同じ名前の似たような子が…」
「佐野麻由って子は、一人しかいなかったよ…」
あれだけ気を張って、点呼聞いてたんだから間違えない。
「ほら、大丈夫だよ!まだ女バスってことも」
「ないよ、女バスは今年もマネの募集かけないって言ってたもん」
女子同士で揉め事は多いうえ、女子のマネージャーなんてやりたい人はこの学校にはいないからって、部長さんいってたし。
「あちゃ…、でも近づけなきゃ」
「協力するみたいになっちゃったし。あの直人だよ?絶対に自分から近づきにいくでしょ」
それにもし、佐野さんが直人好きになっちゃったら?もう、私にはどうしようもないでしょ。
「まっ、ほら見た目だけがタイプだったってこともあるからね?」
お願いです、佐野麻由さん。性格ブスであってください。