世の中は思い通りにいかないことだらけ
直人の指をさした方向をみると、さらさらのストレートの黒髪を高めのポニーテールで結んでいた可愛らしい女の子がいた。
生まれつき、色素が薄い茶色の髪で少し緩めの天然パーマの髪の私とは、まるで真逆のような子だった。
「あんな感じの子が好きなんだよなー」
そういった直人。そういえば、直人の好みの女の子なんて初めて知った。今まで、直人からそんな話聞いたこともなかったし、自分と全然違うタイプを言われるのが怖くて、聞こうとしたこともなかった。
「直人って、あんな感じの子がタイプなんだ」
「まぁな。黒髪のポニーテール好き。顔も髪形もめっちゃタイプ」
つまり、ゆりあの髪はふわふわしてて好き~とかいってたのは、ただの直人がふざけていってただけだったんだ。直人の好み怖くて聞けなかったけど、聞いてしまった直人の好みは私とはまるで逆。
大好きで、少し自慢だったこの髪が大嫌いになった。
「な、ゆりあ協力してくれね?」
そう残酷にも君は言った。
ずっと好きで、好きすぎて想いを伝えられなくて、それでも少しでも直人に振り向いてもらおうと努力してきたつもりだった。なのに、協力して?ほかの女と好きな人をくっつけるために?
…何が嬉しくて?そんなの冗談じゃない。
「私、あの子と接点ないし無理だよ」
私との接点も、直人との接点もいらない。だって、直人は非の打ちどころがないほど、いい人だと思う。しいて言うなら、鈍いところくらい。そんな直人のこと好きにならない女の子なんていないと思う。
「んー、大丈夫!接点は出来るよ!絶対。あの子は、うちの部活のマネージャーになる」
「…根拠は?」
「勘だよ」
お願いです、神様。直人の勘なんて、あてないでください。
「ねぇ、あの子。佐野麻由だって!名前まで可愛いし」
しっかり入学式の点呼で呼ばれた名前を覚えたらしい直人。そういいながらも、私も気になって周りが寝てる中、一年生の後ろ姿を必死に見て、佐野麻由ちゃんを探していた。
ゆりあって、変わった名前に比べれば麻由なんて十分可愛い名前だと思うけど、名前まで可愛いって褒めすぎじゃない?
「…そうだね」
好きな人の好きっていうか、気になってる子の話を聞くのはかなり悲しい。何が嬉しくて、直人の好みの女の子の話を聞かなきゃいけないんだ。
しかも、自分とは真逆の容姿の女の子を可愛い、可愛いって。
「はぁ」
思わずため息を吐いてしまうのも仕方がないことだと思う。
「ん?ゆりあ、どうした?ため息つくと幸せ逃げちゃうよ?」
もうすでに幸せは、遥か彼方に逃げてるよ。そもそも、幸せが逃げる原因作っているのは、直人なんだけどね。