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ウルの秘密1

ウルは実は……。

今回は年齢がポロッと出てきます。

 登録が終わった功一は、ある魔法を使ってからウルに話しかける。


「なぁ、ウル。聞きたいことが幾つかあるんだが、いいか?」


「?はい、いいですよ。」


「じゃあ一つ目。なんで受付にウルしかいないんだ?」


 そう。受付は六つあるのにウルしか座っていないのだ。


「それは、その……カインズさん達がいると仕事が出来ない、と……それでストライキを……。」


「おっさん迷惑すぎんだろ……。」


「で、でも功一さんが来ましたからね。カインズさん達もあれで懲りた……と思いたいですね……。」


 実際は心もプライドも折られた上に、自分たちとは事務的にしか話さないウルが楽しそうに話しているのを見て、このギルドは彼らにとってはちょっとしたトラウマになっていたりする。 


「ま、まあもう大丈夫だろ。少なくとも俺がいればバカなことはしないと思う。

 ……で、二つ目は、ウルって猫人族(ねこびとぞく)なのか?」


 ウルの頭の上に、限りなく白に近い水色の髪と同じ色の猫耳があり、功一は気になって仕方がなかった。


「はい、そうですよ。ただもう少し細かく分類すると、猫又族となりますね。尻尾が二本あるんですよ?」


(猫又?だとすれば推測とは違うか?……聞きゃわかるか。)

「へぇ、猫人にもいろいろあるのか。猫又族は猫人族とはやっぱり何か違うのか?」

 

「ええ、獸人にしては珍しく、幻系の魔法が得意なんですよ!幻影、幻視、幻惑……他にもいろいろ出来ますよ!」

 

 ウルは自慢気に話す。が、そこに功一が冷や水を浴びせる。


(推測通り、か。)

「凄いな。たしかに、そこまで出来るなら姿を偽るくらい(・・・・・・・)簡単だな。」


「ぇ……?」


「……俺には視えている(・・・・・)ぞ、ウル。……離れて見た時は“俺より少し年上の美人”だと思ってた。だが、近くで見ると“やたら幼く”見えた。」


「え、あ……な、何を言ってるんですか?わ、私は見ての通り――」


 明らかに動揺しているウルは、やっとのことで言葉を絞り出したが、


「――三つ目の質問だ。」


 功一によって容赦なく切られてしまう。


「ウル、君は自らの幻術が破られた時の対策をしているか?」


「……え?」


「してないよな。でなきゃ、そこまで動揺しないし。……自分の幻術にかなり自信があったようだが、それでも保険は用意しておいた方がいい。


 これは、同じく(・・・)姿を偽り他人を騙している者からの忠告だ。


 ……たしかにウルは優秀だよ。俺が近づかないと見破れなかったんだから。でも俺には見破られてしまったんだ。いつかまた同じことが起きる……だから――」


「――どうして……」


「ん?」


「どうして見破ってしまったんですか!?どうして騙してたことを責めないんですか!?どうして忠告なんてするんですか!?どうして――」


「――同じだから。さっきも言っただろう。」


「……?」


「あ~……だから、俺とウルは理由は違えどやってることは同じなんだよ。」


「同じ……?」


「……あぁ。証拠は見せられないが俺のこの姿は仮初めのものだ。」


 同族意識でも芽生えたのだろうか?

 功一は、まだこの世界の誰にも言っていない秘密を会ったばかりの少女に話した。


「そ、そうなんですか?でも私は全く違和感を感じませんよ?」


 唐突に結構重要なことを言われ、疑うことすら忘れてむしろ冷静になったウル。


「バレちゃ駄目だからな。……たぶんだが、原因は魔力の差だと思うんだ。」

 

「魔力の差……ですか?」


「うん。ウルは魔力高いよな?具体的にはSくらいか?」


「あ、えっと……はい。魔力はSですが、なんでわかったんですか?」


 少し迷っていたが、一つだけなら問題ないと判断したようだ。


「俺の魔力に抵抗するにはそれくらいは必要だと思ったから。ちなみに俺の魔力はSSだ。」


「SS!?え、でも平均はそんなに高くは……」


「あくまで平均だからな。足を引っ張るステータスもあるんだよ。……話を戻すぞ。自分の姿を変えるような“自らに掛けるタイプ”の幻術は、魔力を纏うようなものなのはわかっているな?」


「はい、自分を魔力で包むような感じですよね。」

 

「その魔力が、より強い魔力に影響されて歪んでしまったら?どうなると思う?」


「それは……幻術が解除され…る……」


「気づいたか。格上に幻術が効きにくいのもこれが原因だな。攻撃魔法じゃないから魔防の値は関係なく魔力の量がものを言う。幻術に関してはこんなところだろうな。」


 そう。幻系の魔法は意外と繊細な操作が必要で他者の魔力が強すぎると、操作が乱れて効果が発揮出来なくなってしまうのだ。


「……恐らく、功一さんのその仮説は正しいと思います。ですがそれなら何故、離れていた時は幻術の効果があったのでしょうか?」


「それはステータスには表示されない“技術”と“習熟度”が関係しているんじゃないか?」


「……あ。」


「つまりこの二つが高かったから、ウルの魔力は俺が近づくくらいでしか乱れなかったんだろ。今だって完全に解除されてるわけじゃないし。」


 功一は軽く言ってはいるが、心中は尊敬の念で溢れていた。理由はどうあれ“姿を偽る”ことに関しては、このギルド職員は功一に匹敵するのだ。単純な魔力の差で破られてしまったが、それがなければ功一でも最後まで気づかなかったであろう技術力を、目の前の幼い少女は身に付けているのだ。


「……なぁ、ウル。ここからはギルドの受付で話す内容じゃないし後で時間あるか?」


「……もう話すことなんてないですよ。」


「あるよ。ウルが姿を偽る理由だ。」


「……何故そんなことを言わなければならないのですか?」


「俺は知ってるぞ?他者と壁を作り、独りで生きるつらさを。誰にも言えない息苦しさを。」


 功一にはヒルダを始め、事情や真実を知っている者が何人かいる。だがそんな人達と出会う前は孤独感に押しつぶされそうになっていたのだ。当時11歳の少年には少し辛過ぎた。


「っ!でも……」


 ウルは今にも泣きそうな表情だがまだ躊躇う。


「……はぁ、10歳くらいに見えるけどそれであってるか?」


「…………(コクリ)」


「ここ(ユピテル)じゃどうか知らないが、その歳なら誰かに甘えるべきだ。我慢しなくていい、弱い自分を見せてもいいんだよ、ウル。」


「……ぁ……。」


「……ふぅ……で、どうする?俺に弱さを見せるか、いつか来る破綻を待つか。」


「………………………………場所を移しましょう。受付は他の人に頼んでどうにかしてもらうので、少し待ってて下さい。」


「……何も今すぐじゃなくても――」


 まさか今すぐ話すとは思ってなかった功一は逆にちょっと焦った。


「――いえ、今決めなければいつまで経っても決断出来なくなりそうなので。」


「…………そっか。」


 ウルの決意に満ちた表情を見て、功一は何も言わないことにした。


「では、ちょっと頼んできますね。功一さんは向かって右手の奥にある第八会議室で待っていて下さい。」


 そう言って、鍵を渡すウル。


結界(・・)は解除しておくか。)

「わかった。無理なら今じゃなくてもいいからな。」



 こうしてウルを救う為に功一は会議室に歩いて行くのであった。



感情の表現が難しい……。

もしかしたら一部書き直すかもしれません。

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