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ギルド登録

説明回。

ウルについては次回で。

「こんにちは!戦闘職ギルドへようこしょ!」


 受付の美人――ウルは盛大に噛んだ。


「「………………」」


 ウルは俯いてプルプル震えている。功一は受け流す機会を失い。目を泳がせていた。


(この人……いやこの娘は小動物系だな。猫耳(・・)がその印象にピッタリだし。)


 ……現実逃避気味にどうでもいいことを考えていたが。


(しかし、近くで見るとやたら幼く見えるな……さっきまでは少し年上の美人に見えたんだが……)


「あ、あの!」


「うん?」


 どうやら復活したらしい。……目をあわせようとしないが。


「戦闘職ギルドを嫌いにならないで下さい!」


「へ?いや、意味が……あぁ、そうか……別に嫌いにはならないですよ。まだ好きになるかどうかはわかりませんけど。」


 功一はおっさんのことだと思っているが、ウルは自分が噛んでしまったことを言っている。

 特に問題ない類のすれ違いだが。


「そ、そうですか。よかったぁ……あ、すみません!」


 ほにゃっ、と笑ったかと思えば申し訳なさそうな顔をして謝る。実に忙しい少女(?)である。


「いえ……あの、ウルさん――」


「あ、呼び捨てでいいですよ。」


 ここでさん付けするのはただのバカだ。選択肢は有るようで無いのであった。


「あ~……ウル?」


「はい、なんでしょうか?」


「とりあえずギルドに登録したいので、お願いできますか?」


「………………(じーっ)」


(……やけに積極的だな。この世界だとこれが普通なのか?)

「…………ギルドに登録したいから、説明してくれ。」


「わかりました!では――」


 そう言って二枚の紙を取り出すウル。


「まずはこちらに記入して下さい。名前以外は絶対に必要なわけではないので、書かなくても結構です。」


「それって他の項目は必要なのか?」


「それはですね……(ここだけの話、細かく記入しておくとギルドからの信用度が違うんですよ。)」


 声を潜めてウルは教えてくれた。どうやら守秘義務とかは気にしないようだ。


(それは言っちゃダメだろう……)

「そうなのか。じゃあ名前だけでいいかな。面倒だし。」


「話聞いてました!?信用度がむぐっ!」


「(デカい声出すんじゃねぇよバカ!)」


 やはり守秘義務なんて知らないらしい。


「(コクコク)……ふぅ、あの、話聞いてました?信用度の差はいざという時に扱いの差になります。いろいろな場でギルドから援助が――」


「それは実績を重ねれば同じだろ?……まぁ、信用云々は別にいい。質問だが、名前は登録した後でも変更可能か?」


「え、あ、はい。可能ですよ。偽名で登録されている方も結構いますが、それが誰かわかれば十分ですので名前に関して特に制限はありません。」


「そうか。んじゃ、早速名前を――」


「ですが貴方は本名で登録して下さい。」


「なんで!?」


「私が知りたいからです。」



 功一は薄々だが、ウルが積極的な理由に気づいた。

 というか奥の女性職員から「ウルちゃん頑張れ!」とか「アタシも素敵な出会いが……」とか言ってるのが聞こえてくるし、よく見るとウルの頬が少し赤くなっていた。


 功一は経験は乏しいが、鈍感主人公ではないのだ。


(だが切欠がわかんねぇな。まだギルドに来てから、しょぼいおっさんをめり込ませるくらいしかしてないぞ?)


 功一は知らないが、ユピテルでは“強さ”も恋愛における一つの重要な要素なのだ。

 街や村の外で簡単に人が死ぬ世界では、当然なのかもしれない。



「……はぁ、わかったよ。てか偽名を使う気はなかったけどな。……ほら、書いたぞ。」


「こういちさん……ですね?あの、姓は?」


「ん?姓は無いよ(・・・・・)。スラム出身でね。そんなもの必要なかったからな。」


 平然と嘯く功一。だが半分以上が真実(・・・・・・・)でもあるが故に、ウルには嘘を吐いているようには見えなかった。


「ぁ……すみません、失礼しました!」

 

「はは……別にいいよ。何とも思ってないからさ。」


「ぁぅ……で、では!功一さん。こちらの紙にステータスプレートを置いて、魔力を流して下さい。」


 これ以上謝っても、却って迷惑だとわかっていたウルは次の手順に移る。

 功一も特に何も言わずに説明通りに、紙とプレートに魔力を流す。


「……?何も起こらな……おぉ!」


 魔力を流して10秒ほどすると、ステータスプレートにギルドメンバーとしての情報が浮かび上がった。


「へぇ……おもしろいな、これ。その紙になんか仕掛けがあるのか?」


「その通りです。この紙にはですね、魔力で刻み込まれた情報が入っています。そして次に魔力が流し込まれたら、その時に触れている無機物へ刻み込まれた情報を写す、という魔法陣が施されているんですよ。」


「便利なもんだな。……早速見てみるか。」


 手元に視線を落として内容を確認する。



 ・名前・・・功一

 ・レベル・・・1(1)

 ・平均ステータス・・・A+

 ・ギルドランク・・・C

 ・討伐履歴・・・―――



 ステータスは教えないのに平均ステータスはいいのか、なんて思わなくもないが、日本の隣国すらよくわからんのだから世界が変わればこんなこともあるか。と無理やり納得することにした功一。


(あのSが乱立するステータスの平均がA+とは……確実に運が足を引っ張ってるな。)


「やっぱり功一さんの平均は高いですね。一流の冒険者の平均がA~Sくらいなんですよ?カインズさんもA+ですし。」


「へぇ……てかカインズさんって誰だ?」


「功一さんがめり込ませた人ですよ?知らなかったのですか?」


「あぁ、さっきのおっさんか。知らなかったけど……有名なのか?」

(マジかよ……あのおっさんで一流?そりゃあ迷宮制覇も出来ないわけだ。)


「いえ?特に有名ではないですよ?」


「違うの!?」


「はい。ステータスが高いだけで技術がない人でしたからね。ほら、平均が同じ功一さんにもあっさり負けたでしょう?」


「なるほどね。じゃあ次の質問だけど、ギルドランクがCなのはなんで?」

 

「あ、では先にランクについて説明しますね。

 ランクはステータスと同じようにF~SSSまであります。ですが、プラスやマイナスは付かないので9段階になります。

 Dまでは初級。B・Cが中級。S・Aが上級の依頼を受けることができます。

 SSランクは地上にいる最高位の魔物を最低でも年に一頭、狩ることが義務付けられています。

 SSSランクは年に一つ、迷宮を制覇することが義務付けられてはいますが、現在は一人もいませんので機能していませんね。」


「へぇ、じゃあ俺は中級を受けられるわけだ。」


「そうなりますね。登録時のランクは平均ステータスの二段階下になります。強い人に初級依頼をやらせても、意味ないですからね。」


「ちゃんと考えられているんだな。……疑問なんだが、SSランクの奴らはなんで迷宮制覇をしないんだ?最高位の魔物を狩れるなら出来なくはないだろ?」


「それがですね、SSランクが八人しかいないので二組に別れて魔物を狩ると、それだけで手一杯なんですよ。」


「は?四人一組なのか?」


「ええ。さすがに一人では太刀打ち出来ませんからね。最低でも前衛が三人は必要らしいですよ?」


「……………………そうか。ランクを上げるにはどうすればいいんだ?」


「……?あ、ランクアップですか?同ランクの魔獸や魔物を50頭か、上位ランクの魔物を10頭討伐すると一つ上のランクに上がります。例外的に迷宮制覇すると、そのパーティー全員がSSランクに繰り上げられます。」


「試験とかはないのか?」


「ランクアップの条件が試験なので。」


「なるほどな……うん、俺からはもう特にないかな。」


「わかりました。……あの、功一さん。そのレベルの横の(1)ってなんですか?」


「……さあ?俺にもよくわからん。」


 何とも功一らしい答えだ。


「そ、そうですか。まあ問題なさそうですし、大丈夫ですかね。」



 こうして功一のギルド登録は無事(?)に終わった。

後半はウルに地の文の役目を奪われてしまった……。


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