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魔法を語る

なんで進まないんだ……

進行遅くて申し訳ないです。

「着いたぞ、この部屋だ。」


「……こんな部屋に王女様が?」


 随分と奥まで歩いたが、至って普通の部屋のようだ。


「いや、この部屋はここから王城へ行くための部屋なんだ。」



 メイアに案内されて入った部屋には転送(・・)魔法陣があった。

 ややこしいが、転送は一方通行。転移は自由。さらに転送は座標がわかれば好きな場所へ、転移は陣と陣の間でしか移動出来ない。(魔法陣を使った場合)



(こんなトコに敵が入って来たら面倒だし、ここから敵が入っても問題だからな。……しかし、これも(・・・)俺が知っているのと同じ構成か。たしかに、言葉・文字・魔法・暦、これだけ揃えば大規模召喚も出来るわな。)


 そう。ユピテルと地球、いや日本は様々な共通点があるということを覚えているだろうか?

 魔法は除くが、功一が上げた例はほぼ完全に一致していた。言葉と文字に関しては現代日本語で、建築物などとの発展度合いのちぐはぐさが際立っていた。


「……なぁ、今更なんだけどさ、俺みたいな奴をすんなりと王女様に会わせていいわけ?」


「私の実力をあっさり見抜いて、それでもなお私を全く恐れない実力者……もうどうしようもないよねっ!」


「はぁっ!?てかキャラ崩壊してんぞ!?」


「ふふっ、冗談だ。……完全武装解除はもちろん、リリアル様の周囲では魔力も使えなくなるからね。そうなったら一人では何も出来ないよ。」


(へぇ……俺は魔力じゃない(・・・・)力もあるんだが……)

「そ、そうなのか。何かあれだな、メイアって予想以上に面白いやつなんだな……」


「ん?そうか?周りの奴らには固いだの、冷たいだの言われているんだが?」


「そりゃ、さっきの建て前の仮面を着けているからだろう?今のお前の方が自然な感じだと思うんだが?」


「……そうかもしれないね。っと、お喋りはここまでだ。そろそろ行かないと。」


「ん、そうだな。俺もちょっと聞きたいことがあるし、ちゃっちゃと行こうか。」


「聞きたいこと?」


「あぁ。召喚魔法陣について少しな。」


「ふむ……まぁ、問題ないかな。それじゃあ行くよ?」






「ではボディーチェックを始めます。」


「いや必要ないでしょう!?」


 功一は王城に着いてすぐに使用人たちに武装チェックをされていた。


「なんで人がパンツ一枚になってんのに……ってだから触ろうとすんな!!」


 肉食獣のようなメイドが迫ってきて、もはや口調すら繕えない功一。


「何を言っているのですか。もしかしたらその下着の中に凶器を隠しているかもしれないでしょう?」


「あんた真面目なこと言っても涎垂らしてたら下ネタにしか聞こえないからな!?」


 この場で補食されるか、部屋を出て捕まるか。功一に逃げ場はなかった(笑)


「なあ!メイアもなんか……ってお前もかよ!!怖ぇよ!どんだけ飢えてるんだよ!!俺、女性恐怖症になっちゃうよ!?」


「功一。私は近衛騎士として暗器の確認を怠ってはならんのだ。だから――」


―――ガチャ


 だが、功一の悪運は強かったようだ。


「メイア?何を騒いで――」


「「「っ!?!?」」」


 リリアル様のご登場である。


「「「「………………」」」」


 とても重い沈黙。


「何を、しているのかしら?メイア?」


「あ、えと、これは、その……」


「貴女も、何を?」


 続いてメイドに問うリリアル。

 なかなか迫力のある笑顔だ。


「ひっ!?…………(ブクブク)」


 どうやら主君の迫力に意識を手放してしまったようだ。立ったまま泡を吹いている。


「はぁ……メイア、貴女はその娘をベッドに運んであげなさい。」


「は、はいっ!」


 物凄い速さでメイアは気絶してしまったメイドを抱えて部屋を出て行った。


「えと、貴方、名前は?」


「え……あ!こ、功一です。」


「では、功一さん。私が案内しますので服を着てくださいな。」


「すいません!すぐ着ます!!」


 二人の出会いはある意味とても記憶に残る出会い方だった。






 笑撃的な出会いから1時間。

 ここはリリアルの私室。メイアは入れてもらえず、涙目で廊下に立って警護をしている。

 そして肝心の二人はと言うと――


「へぇ~、凄いな。たしかにその発想はなかった。これなら理論上は全てに応用出来るんじゃないか?」


「はい。ですが、意味の無いものもあるので、実際は総数の三割程度にしか効果を発揮しないと思います。」


 仲良く魔法について語り合っていた。

 それは、城内の人が見たら目を疑う光景だった。

 不敬だから……ではない。リリアルと魔法理論で、対等に語り合える者がいる。ただそれだけ。それだけで使用人たちは功一に尊敬の目を向けるほどだ。

 功一は視線に気づいているが、全く気にしない。


「いやいや、それでも凄いから。それに俺がいるからいくらでも増やせるしね。」


「あ、そうでしたね。しかし、それを考えると私のものより、功一の理論の方がずっと優れていますね。」


 このリリアルの言葉に、今度は耳を疑う使用人一同。少しは自分を信じろと言いたい。

 まぁ、宮廷魔術師たちに魔法について様々なことを指導しているリリアルに、「私の方が下」と言わせる功一がおかしいのだが。


「それは場合によりけりだろう。こっちの“自己完結型”は汎用性重視。この“固定増幅型”は一点特化タイプだ。

 これを比べても意味はないよな?だって役割が違うから。

 そう考えるとリリアルの理論は、俺なんかのよりよほど優れていると言える。」


「ふふっ、そういうことにしておきましょうか。」



 その後、なんと四時間も語り合ってやっとお開きすることになった。



「とても有意義な時間だったよ。また来てね?試作品作っておくからさ。」


「あぁ、俺も楽しかった。まさか魔法でここまで話が弾むとは思わなかったよ。」


 どうやらすっかり仲良くなったようだ。リリアルは素の喋り方になっていた。


「またすぐ来るわ。俺の方でもいろいろ試してみるけど、二人でやれば早いしな。」

「うん、わかった。許可はこっちで取っておくから。」


「あ、悪いな。……じゃ、また今度な。」

「ん、また今度!」






~~~side リリアル~~~



 私は部屋に戻り、ベッドに横になりながら考える。

 凄い人でした。独自の理論でオリジナルの魔法陣をいくつも作り上げていました。


 中でも一番驚いたのは、魔法陣を使わずに魔法が使えるということでした。

 この世界では魔法は魔法陣を使用しないと発動できないのが常識です。

 だけど彼にそのことを伝えると、


『それはない。魔法陣はあくまで補助。あれは現象を起こすために魔力を最適化するという手順を簡略化し、魔法を使いやすく(・・・・・)するためのものだ。

 つまり、自分の中で最適化が出来れば、魔法陣なんか使わずに発動可能なんだ。

 とはいえ長年の常識は強力な暗示のようなものだ。ユピテルの人たちが使うのは厳しいかもね。』


 そんな、今まで誰も考えたことのなかった解決法を教えてくれたのです。

 私がその方法を試したいと言うと、彼は真剣に魔力の動きを見て、アドバイスもしてくれました。

 そうして一時間ほど経って、やっと小さな火種が出た時は嬉しくて、礼儀作法を忘れてはしゃいでしまいました……。




「リリアル様。功一はどうでしたか?」


 先ほどのことを思い出していると、ずっと廊下にいたメイアが話しかけてきました。あとでお仕置きですが今はいいでしょう。


「…………っ!?(ゾクッ)……?」


「ふふ、どうかしましたか?……功一は予想以上でした。ただ……」


「何かあったのですか?」


「恐らく功一は何か重要なことを隠しています。それも魔法などの知識ではなく、自分自身のなにかを……」


「ですがそれは誰しも一つくらいはあるのでは?」


「それはそうなんですが……メイアは功一のあの姿(・・・)に違和感を感じませんでしたか?」


「違和感……ですか?見た目は普通の少年に見えましたが……」


 メイアは何も感じなかったようですね。

 でも私は感じました。目の前にいるのにまるで違う人に話しかけているような、そんな感覚になるのです。


「リリアル様……?」


「決めました。私は功一から信頼を勝ち取ります!そうして本当の功一を見せてもらいます!!」


「いえ、ですが……」


 そうと決まれば行動に移さないといけません。まずは、新型魔法陣の試作品ですかね。あとはこちらから功一を訪ねるのもいいかもしれません。


 明日から忙しくなりそうですね。



~~~side out~~~

王女は自衛の為に魔力が使用可能です。

あと第二王女は宮廷魔術師の教育が最重要公務となっているので、案外自由です。

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