決戦!神祖竜〔序〕
今回は短いです。各視点の前振りなので。
功一の作戦が始まってから二ヶ月後。
早朝。まだ辺りが薄暗いなか“天竜の牢獄”の入り口に冒険者らしき者たちが数名いた。
ここにいるということは一流の冒険者なのだろう。全員が高そうな装備を身に着けて今日の予定を話し合っている。
「今日はどうするよ?このままじゃ獲物に会うことすら出来ないんじゃないか?」
「んなこと言われてもな。なかなか出会えないから希少価値が付くんだろ。」
「そりゃそうだが、依頼が達成出来ないと結構痛いぜ?」
「だからどうするかを…………ん?なんだ?少し揺れてないか?」
冒険者風の男が、地面が揺れていることに気付く。
「……?ホントだ。ちょっと揺れてるな。」
「ああ。だが揺れも小さいし気にしなくていいだろ。」
「まあ、そうだが……。」
他の男達も気付き、そんな会話をしていると――
「……おい、大きくなってきてないか?」
「あ、お前もそう思うか?」
「……何か嫌な予感がする。迷宮から離れ……!?」
――いきなり揺れが激しくなる。それは男達が立っていられないほどで、しかもまだ揺れは大きくなる。
そしてそれ(・・)は大地を喰い破って現れる。
―――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………バガアアアァァァン!
『ギュアアアアアアァァァァァァァ!!!!』
――白い竜が。
~~~side ヒルダ~~~
『ギュアアアアアアァァァァァァァ!!!!』
「来ましたね。」
それにしても、思ったより早かったですね。10年以内と言っていたのでまだ出て来ないかと思っていたのですが。
「まあいいでしょう。確実に殲滅しろとの命ですので本気でいかせてもらいますよ?」
まずはあの白い竜――神祖竜がどの程度なのか確かめてみましょうか。
――転移。
―――ッゴオォォォォン!!
「あら?意外と脆いのでしょうか?蹴っただけで落ちるとは……。」
『グルルルルル……』
「……拍子抜けですね。あの程度の蹴りなら、リリスやカルマは傷一つ付きませんよ?」
ご主人様――タキツ様は言わずもがな、です。
~~~side out~~~
~~~side リリス~~~
「星嵐!」
―――ズドドドドドドドド!!!!
「極星!」
―――ッガアアァァァァン!!!!
「死月光!」
―――バシュウウウゥゥゥ…………
「こういうのは~、出会い頭を叩くのが一番楽ですよね~。もう死んでくれましたかね~?」
『グル……グルルルルル……』
「おやおや~?まだ生きてるんですか~?頑丈ですね~。周りは大惨事なのに~。」
ですが~、流星群からの特大隕石と~光エネルギーが直撃してますからね~。ところどころ焦げてますし~……
「これは楽勝~ですかね~?」
早くマスターに会いたいです~。
~~~side out~~~
~~~side カルマ~~~
「…………っ!」
―――ザシュッッッ!!!!
『ギュオオオォォォォ…………!』
―――ズズゥゥゥン……
「…………まだ生きてる。」
こんな高さから落ちたのに。
「…………お腹減った……。」
~~~side out~~~
ここはリリアルの部屋。功一はいつも通りに過ごしていた。
ウル達もあの話から二ヶ月も経つと、さすがに警戒や緊張なんてものは続かず。
結果的に以前と変わらない日常が送られていた。
「ねえー?神祖竜なんて本当にいるのー?」
「いるよ。……お前はいつもここにいるな。王女ってやつは暇なのか?」
「お兄ちゃん、そんなことあるわけない……ですよね?」
「そ、そんなわけないでしょ!私だって宮廷魔術師に指導したりしてるの!」
それは事実なのだが、功一が来てからリリアルの指導の質が上がり、今は魔術師達がそれに着いて行けず鍛えている状況だった。
つまり、リリアルが教えられることは現時点では存在しないのだ。
「そうなのか。頑張れー王女サマー。」
「バカにしてない!?」
「……だって魔法陣を教えているんだろ?」
「魔法陣が要らない功一やウルちゃんが例外なんだよ。ユピテルでは魔法陣は必須なんだから。」
「私、そのことを最近知りました。皆さん不便ですよね。」
「そうそう。魔法陣が必須なのがおかし……!?」
だがそんな日常は続かなかった。
「どうしたの?何かあっ――」
「――来たぞ!探知結界に引っ掛かった!!」
「「っ!!!!?」」
「よし!じゃあ……?」
すぐにでも行こうと思っていた功一は、着ていたシャツの裾を掴まれて静止した。
仕方なく振り返ると、
「お兄ちゃん……絶対に、帰って来てね。」
「功一。死ぬことだけは許さないからね?」
少女二人がそう、言ってきた。
それに対し功一はニヤリと笑った。
「ああ。あんな白トカゲに俺が負けるわけないだろ?無傷で帰って来てやんよ。」
そう言い放ったところで転移の準備が終わる。
「じゃあ、征ってくる。」
次回はヒルダ回。




