作戦と使い魔達
「それはな、俺と俺の使い魔達で四ヶ所は対処して、残りの一ヶ所は、まあどうにかすればいいだろ。」
「随分と雑な作戦ね。」
若干呆れながら返すリリアル。
しかしこれには理由がある。
「いつ来るかわからない敵をずっと警戒出来るわけないからな。本音を言うともう一人、俺クラスの戦闘力を持った人が欲しいが。」
「あ、そっか。明日にでも始めるつもりだったよ……。こんなこと言って明日来たりして。」
「やめろ、フラグを無駄に立てんじゃねぇ!」
「……ふらぐ?」
「なんでこれは伝わんねぇんだよチクショウ!!」
いつ来るかわからない世界の危機を前にしても、やっぱり緩い功一だった。
「お兄ちゃん“使い魔”って何?」
「はぁ……え?あぁ、使い魔ね。使い魔ってのは、自分の何かしらを媒介にして契約した者のことを指すんだ。」
「媒介っていうのは?」
「まあ、血とか髪の毛とかだな。俺は全く違うけど。」
ちなみに人間と契約しても使い魔と呼ぶ。これは“魔物を使う”ではなく“魔法で使う”という意味なので、どんな生き物と契約しても使い魔と呼ぶのだ。
「お兄ちゃんは違うの?」
「ああ。俺は自分の“影”と“心”と“魂”をそれぞれ媒介にして契約しているんだ。」
「え?それって大丈夫なの?特に魂とか。」
「大丈夫だよ。別に媒介にしても質量が無ければ消費しないからな。まぁ、それぞれ契約は一回限り、っていう制限が付くが。」
苦笑いしながらウルの好奇心を満たしていく功一。今は何にでも興味が尽きない年頃なのだろう。
「へぇー!ねぇねぇ!その使い魔って今は見れないの?」
「あ~……どう思う?リリアル。」
「な、なんで私に……大丈夫じゃない?ウルちゃんだって功一と約束したら破らないでしょ。」
無論、ヒルダのことだ。
だが――
「いや、ヒルダだけじゃなくてな。他の使い魔も問題がありそうなんだが……。」
――問題はそれだけじゃないらしい。それをどうなのかリリアルに聞いたのだ。
「…………はぁ。他の人に見られなければ大丈夫なんじゃない?私達はバラす気なんて無いし。」
「それもそうか。……じゃあ一応、二人ともこれから見るものは他言無用で。」
「よくわかんないけどわかった!」
「わかった。言っても信じてくれないと思うけど。」
「じゃあ呼ぶか。ヒルダ、カルマ、リリス、出てきてくれ。」
そう呼び掛けると功一の身体から光の球が二つ飛び出て来た。
拳ほどの大きさの光球。それが人が入れるくらい大きくなると、弾けて中から妖艶な女性と中性的な少女が現れた。
そして影からヒルダも浮き出てくる。
「お久しぶりです。ご主人様。」
「そうだな。たしかに久しぶりだ。」
「マスタ~、アタシのこともっと呼んで下さいよ~。」
「リリスも、久しぶりだな。世界が変わったから、おいそれと呼ぶわけにはいかなかったんだよ。わかってくれ。」
「むぅ……じゃあ~お詫びに後でいつものくださいね~。」
「はぁ……仕方ないな。あげるから大人しくしててくれよ。……カルマ、久しぶり。」
「…………(コクリ)」
「しばらく呼べなくて悪かったな。退屈してなかったか?」
「…………(フルフル)」
「そうか?ならいいが……。あ、後でご飯いっぱい食べさせてやるからな。」
「…………!(コクコク)」
こうして使い魔が揃った。なんだか個性的な三人だが、実力は折り紙付きだ。
「ウル、リリアル。こっちから順番にヒルダ、リリス、カルマだ。まあ見た目が全く似てないから間違うことはないだろ。」
「あ、えと……ウルっていいます。よろしくお願いします。」
「あ……リリアル・フォン・フューゲルバイデと申します。どうかお見知り置きください。」
「ふふ、これはご丁寧に~。アタシは~リリス・イヴィルと申します~。リリスって呼んで下さいね~。」
「…………(チラッ)」
「ほれ、カルマも自己紹介しねぇと。」
「…………カルマ・リープ。カルマでいい。よろしく。」
「リリアルさん、お久しぶりです。ウルさんは、はじめましてですね。私はヒルダ・エル・ブラッドと申します。」
これで全員の自己紹介が終わった。
ウルはまだ他人には名前を隠しているし、リリアルは王女モードだし、使い魔達は自分の種族を言っていないが。
「は、はじめまして。あの……ヒルダさん達は人間、じゃないですよね?」
「はい。私は吸血姫ですね。」
「私は~、夜の女神です~。あ、二重の意味ですよ~?」
「…………ボクは死神。」
「お、お兄ちゃん?どういうこと?」
どうやらウルの頭脳でも処理しきれなかったようだ。リリアルは理解することを放棄したらしく、目が虚ろになっている。
「うん?そのままの意味だぞ?
ヒルダは吸血鬼族の真祖、吸血姫だ。紛らわしいが鬼共とは根本が違うからな?
実は影を司る女神でもある。
リリスは夜を司る女神で、夢魔や淫魔なんかが従属しているな。
ふわふわした喋り方だが、滅茶苦茶強いぞ。なんせ夜ならなんでも(・・・・)出来るからな。
カルマは死神……らしい。こいつは俺を殺しに来たみたいなんだが、腹が減りすぎてぶっ倒れていたんだよ。
で、いろいろ食べさせたらいつの間にか従属神になってて。なら契約しておこうと、まあそんな感じだ。
こんなやつだが単身で国を潰せる程度の実力はあるぞ。」
その解説を聞いて二人は絶句してしまう。功一の使い魔だからそれなりに強いとは思っていたが、全員が――吸血姫のヒルダでさえ――神だなんて想像していなかったのだ。
ちなみに、ヒルダは金髪灼眼、リリスは黒髪金眼、カルマは銀髪碧眼だ。
「驚いているとこ悪いが、これからのことの説明をするぞ。
ヒルダは魔法国家エンディミルの迷宮“覇竜の城”付近で待機してもらう。
リリスは水の国カランディアの迷宮“滅竜の要塞”付近で待機。
カルマは宗教国家マインスの迷宮“崩竜の砦”付近で待機だ。
クライスの迷宮“天竜の牢獄”は俺がこの国にいれば大丈夫だろう。問題は商業国に行けるやつがいないことか……。」
功一は呆然としている二人を置いて、使い魔達に指示を出す。だが使い魔は三人しかいないのでどうしても人が足りない。
ウルとリリアルは戦力に数えていない。戦わせたくないのもあるが、それよりも二人が神祖竜の相手になるとは思えないからだ。二人もそれは十分承知している。
「………………仕方ないな。クライスの神祖竜を巻き込んでドゥローレンに転移するか。」
ドゥローレンとは功一の言っていた商業国だ。ちなみにクライスは鉄の国と呼ばれている。
「……!それってお兄ちゃんが神祖竜と二匹同時に戦うってこと!?そんなのだめだよ!」
「私も、いくら功一が強くてもそれは無茶だと思うな。」
功一の言葉を聞いて呆然とした状態から復帰した二人は、無茶なことを言う功一に詰め寄る。
「たぶん神祖竜はSS+~SSS-だと思う。だから油断しなきゃ負けないよ。ヒルダ達が終わったら援護してもらえばいいし。」
「な、なら功一がドゥローレンに行けばいいんじゃないの?クライスなら私が迷宮に近づかないように勧告することも――」
「――神祖竜が全く同時に起きるとは限らないのにか?」
「……ぁ」
「ドゥローレンで待ってたらクライスが壊滅してました、なんてしゃれにならん。……俺にとって命の重さは平等じゃない(・・・・)。見ず知らずの他人より、お前らを始めとする知人の方が何倍も重い(・・)。」
「お兄ちゃん……。」
「……ふぅ。とにかく、ドゥローレンにはいざという時は犠牲になってもらう。……それでいいな?」
「「……………………。」」
二人はとても悔しそうな表情だ。自分は何も出来ず他人に頼るしか出来ない、それが悔しくてたまらないのだ。
「…………。はぁ、じゃあヒルダ達はさっき言った場所へ早速向かってくれ。」
「「はい。」」
「…………(コクリ)」
神祖竜討伐作戦は始まった。あとは出て来るのを待つだけだ。
なかなか進まない……。




