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考察

質問などありましたら積極的にどうぞ。

「……で、国の協力無しでどうやって神祖竜を倒すの?」


「むしろ要らないな。さっきの兵士が何人いても邪魔なだけだ。……神祖竜は俺が始末する。」


「お兄ちゃんだけじゃ無理だよ!相手はユピテルのほとんどの人を食べちゃうような化け物なんだよ!?」


「私もそう思う。世界を相手にするようなものなんだよ?」



 一人で全てやるという功一に、ウルもリリアルも制止をかける。



「あ~……説明が足りなかったな。神祖竜は一匹じゃない可能性が高い。」


「えぇ!?こんな、伝承通りなら一ヶ月で世界を荒らした化け物が!?」


「……お兄ちゃんはどうしてそう思ったの?」


「リリアル、それは違うんだ。ウル、理由は二つある。ヒントはリリアルの言った被害の大きさだ。少し考えてみろ。」



 功一はウルに考えさせる。答えを与え続けて何も考えられない“お人形”にするつもりはないのだ。



「うーん………………さすがに速すぎる(・・・・)とか?」


(へぇ……勘がいいのか、聡明なのか。)

「何が速すぎるんだ?それになんでそう思った?」



 功一はウルの回答に苦笑いしながらも再度問う。



「えっとね?その神祖竜が例えば転移とかで移動しても、一ヶ月じゃ精々が国一つかな、って。だとすると世界中で暴れるのは難しいんじゃないかな?って、そう思ったんだけど……。」


「そうだな。大体俺の推測と同じだ。つまり、単純に考えると神祖竜一匹の力は伝承の二割程度になる。さすがにそこまで単純じゃないが。それにしてもウルは凄いな~!リリアルなんか全くわからないって顔をしてたぞ。」


「う、うるさいな!人には適材適所というのがあるの!」


「はは、そうだな。……さて、話を戻そうか。ウルが言った通り神祖竜が一匹じゃ被害と期間が釣り合わない。つまり複数いることになる。ここまではいいか?」


「うん。」


「大丈夫。」



 二人に問いかけ、頷くのを見て話を続ける功一。



「次に、じゃあ一体どこから神祖竜は出てくるのか、という問題があるわけだが……リリアル、お前はどこから出てくると思う?」



 今度はリリアルに考えさせる。どうやら魔法理論以外の頭脳労働は苦手らしいからだが。



「さ、さっき適材適所って…………め、迷宮?」


「何故そう思う?」


「な、何故って、ほとんど勘だけど、しいて言うなら強い魔物は迷宮に居るかなって。」


「ふむ、理由はともかく正解だ。五国にある各最高難度の迷宮に神祖竜は眠っていると、俺はそう考えている。」


「それって……!」


「神祖竜は五匹もいるの!?」


「たぶんな。……俺が言うのも変だが、神祖竜がいるかどうかすら推測の域を出ないものだからな?」


 そう。この話は“かもしれない”ことしか話していないのだ。

 なのに二人が本気にしすぎているような気がして、少し注意する。

 ……実は他の意図も含んでいるのだが。



「あ。……そ、そうだよね。」



 リリアルはそれを聞いて話の前提を思い出したようだ。

 いくら推測をそれらしく繕っても神祖竜が存在しなければ意味は無いのだ。

 だが――



「冗談キツいよ?お兄ちゃん。」



 ――ウルは騙されなかった。それどころか隠された功一の意図に気づいたようである。



「ウルちゃん……?」


(勘じゃなかったか……。その歳で大したもんだ。)

「別に冗談なんて言ってないが?神祖竜なんて、いるかどうかわからないじゃないか。」



 功一はどこか楽しそうにウルに返す。



「お兄ちゃんが言ってることは正しいよ。でもね、それを言ってるお兄ちゃんが正しくないよ(・・・・・・)。」

 

「ほぅ……?それはどうして?」


「だって……」



 ウルは功一を睨みつけながら、嘘は許さないと、そう目で語りながら話す。



「お兄ちゃんは本気だから。本気でこの世界を、ううん、これを知ってしまった私達を救おうとしてるから。だからお兄ちゃんは正しくないよ。」


「え?それってどう――」


「――あっはははははは!!」


「「っ!!!??」」



 ウルが功一をそう指摘すると、された本人は凄く楽しそうに、とても魅力的に、いきなり笑い出した。



「ちょっ?いきなりどうしたの功一?」


「お、お兄ちゃん?」 

 

 

 そんな功一に二人は心配そうに声をかける。無理もない。誰だって目の前の人間がいきなり笑い出したら精神か頭の心配をするだろう。



「はははっはは、は……はぁー……いや素晴らしいね!こんなに笑ったのは久しぶりだ。……ウル、お前は俺のことをよく理解しているな。


 たしかに俺は、これを知ってしまったお前らがその後の被害に罪悪感や無力感を感じて、心に傷が残ることを危惧してこの話から二人を離そうとしたよ。


 ウルは大正解だったな。

 俺は、神祖竜は絶対にいると確信している。……しかしさっき言った理由は、伝聞ばかりで確実性に欠ける。

 

 だがこの世界には今、現実的な、五国が同盟を結んでまでして対処している世界を揺るがす大問題がある。」


「“世界の大穴”……。」



 “世界の大穴”とは、ユピテルにある五つの国が協力して攻略する、年々規模が拡大している迷宮だ。

 大陸の中心にあるので現在、ユピテルの国は真ん中のないドーナツを五等分にしたような配置になっている。



「そうだ。俺達がこの世界に呼ばれた原因であろうもの。ユピテルで唯一の大陸の中心に存在する“大迷宮”。これが、ここ50年で急速に膨張しているらしいな?」


「え、うん。でもそれと神祖竜に何か関係があるの?」 

 

「ある。……ここからは推論だが、神祖竜は実際には人を喰ってはいないと思う。何故なら、いくら竜でも一国にいる大半の人々を喰うのは無理だから。


 では、喰われたとされる人々はどこへ行ったのか。それは恐らく“世界の大穴”だ。腹の中に転送陣でもあるんだろうな。


 そこからはどうなるか情報がないからなんとも言えないな。だが“世界の大穴”が膨張して以前より多くの人が死んでいるのは事実だ。


 つまり“世界の大穴”には大量の人間を必要とする何かがある。またはいる。……俺はこう考えたわけだ。」



 長々とした推論をそう締めくくる功一。

 ウルとリリアルはそれを聞いて何かを考え込んでいた。


 

(……こんな突飛な話を聞いてなお俺を信じるか……変なやつらだ。)



 その反応を見て、功一は苦笑いをこぼしてしまった。普通は鼻で笑って終わりにするような話なのに、ウルとリリアルは疑いもせずに真剣に考えている。



「……なんで功一は、神祖竜と“世界の大穴”にある何かが関係あると思うの?神祖竜のいる迷宮に食べられた人が運ばれてるかもしれないのに。」



 リリアルはどうせ何か考えているのだろうと、半ば確認に近い質問をした。



「そりゃ時期だな。神祖竜が起きる時期と“世界の大穴”が膨張している時期。これが一致しているのはおかしいし怪しい。」


「……それだけなの?」


「それだけって……クライス王国500年の歴史で“世界の大穴”がデカくなった記録でもあんのか?」


「た、たしかに。」



 リリアルはそれで納得してしまった。

 考えてみれば、今まで変化の無かった“世界の大穴”が最近になっていきなり大きくなりだしたのはおかしいのだ。

 何故こんなことに気付かなかったのかと、リリアルは身悶える。



「私からもいいかな?」


「ん?どした?」



 次に、ウルが疑問を投げかける。実は功一はとても気になることを言っていたのだ。



「『この世界(・・)に呼ばれた』ってどういうことなの?」



 そう。功一はあたかも他の世界があるようなことを言っていたのだ。もっとも、それはウルから見た話で、功一からしてみれば常識だし今更だが。

 ……ただし、常識に異世界が入る高校生はこいつだけだろう。



「あぁ、それな。まあ、そのままの意味なんだが……ウルはユピテル以外の世界って考えたことあるか?」


「ユピテル以外の世界?……うーん、想像できない……。」


「俺は、その想像できない場所から来たんだよ。」



 適当すぎるが、あながち間違っていない。魔法が無く科学が発達した世界などユピテルの人が想像できるハズがないのだ。



「あ、だから人類卒業してるんだね。」



 ウルは無邪気にそう言った。単純に想像できない世界にいたから、功一は想像できない強さを持っていると思っただけなのだが――



「ぐはっ!?」



 ――功一には効果抜群だった。悪意の欠片も無い笑顔で言われると、そのことについてほぼ諦めていてもかなり傷つくようだ。



「……それで?具体的にはどうやって動くの?」


「あ、あぁ……それはな――」



 ダメージの残る身体で神祖竜討伐作戦の概要を話し始めた。



次回は作戦。

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