王城前の揉め事
「~♪~~♪」
「やけに楽しそうだな?ウル。」
現在、功一はウルと王城に向かって夕陽で赤く染まった街を歩いていた。
「えへへ……これからはお兄ちゃんと一緒にいられるからね。楽しいに決まってるじゃん♪」
(なんでこんなに懐いてんだ?たしかに兄代わりかもしれないが……。)
功一は忘れていた。ウルが功一に憧れに近いが、確実に恋情と言える感情を持っていたことに。
「それより、お兄ちゃんってどこに住んでるの?」
「城。」
「お城!?」
「訳あって世話になってんだよ。お前はどうなんだ?」
「私はギルドの社宅に住んでたから、今は宿無しだよ?」
「無計画すぎんだろ……。俺が宿無しだったらどうするつもりだったんだよ……。」
「その時は私のお給料で宿に泊まろうと思ってたけど?」
「俺が凄く情けなくなるな。」
そう話しているうちに王城に着いた二人。
「……止まれ。誰だお前。名前と用件を言え。」
普通に門を通ろうとしたら、槍を持った兵士に止められてしまった。
功一は不機嫌になり、ウルは少し不安そうだ。
「用事なんかねぇよ。俺はここに帰ってきたんだからさ。」
「何をバカなことを言ってる。お前のような奴がここに住めるわけないだろうが。さっさと帰れ。」
兵士はそう言って二人を睨んだ。
ウルはその視線に怯えて功一の後ろに隠れてしまった。
ウルは微かに震えていた。どうやら幼少の頃を思い出してしまったらしい。
「………………おい。」
さほど大きくない、恐ろしいくらいに冷たく暗い声が辺りに響く。
「なんだ?まだ入ろうとするなら切り捨てるぞ。」
「やってみろよ。クズが。」
どうやら本気でキレたらしい。ウルを離して兵士と対峙する功一。
「……貴様。王家に逆らうとは……わかっているな?」
「お前は王家じゃねぇだろ。バカか、口だけ脳筋野郎。」
露骨な挑発をして、兵士を誘う功一。もっとも、全て本音だが。
「貴様ぁぁぁぁぁ!!」
そしてそれに乗せられる兵士(笑)
だが、
―――ヒュン
―――ッドゴン!!!
突き出した槍は空気を切り裂く。
むしろ、その伸びた腕を取られて突進の力を利用した投げ技で石畳に叩きつけられる。
「ハッ、さすが脳筋。真っ直ぐ突っ込んでくるとはな。」
「お、お兄ちゃん……これ、やり過ぎだよ……。」
「…………(ピクピク)」
「ぅっ……ピクピクしててキモチワルイ……。」
「お前、結構いい性格してんな。」
功一はウルのコメントに思わず苦笑いしてしまった。
「でもこれって問題になら――」
「――おい!!お前らそこで一体なにをしている!?」
「や、やっぱり……。」
またしても兵士の登場だ。
「(ウル、合わせろ)……なに、ってこいつ(兵士)がこの子に絡んで来たから叩きのめしただけだが?」
「(えぇ!?)あ、あの……。」
「お嬢ちゃん、本当か?」
どうやらこの兵士はまともらしい。まあ、あのチンピラ兵士(笑)がおかしいのだが。
「あ、えと……はい!睨まれて怖くて動けなかったところを助けてもらいました!」
「(ナイスフォローだ、ウル!)」
「ふむ……どうやればこんな惨状になるのかわからないが……そいつを起こして話を聞かないと何とも言えないな。」
「だろうな。……ほら、起きやがれ。」
「ぅ……こ、こは……?」
功一が蹴って兵士(笑)を起こす。……まともな方の兵士は眉を寄せたが、何も言わなかった。
「お目覚めか?気分はどうだ、脳筋。」
「っ!貴様は!!」
「ロイ!何もするな!!」
「っ!?」
兵士(笑)の名前はロイと言うらしい。
(チッ……そう上手くはいかないか。煽って言い逃れ出来ないようにしたかったんだが……。)
「……君も腹が立っているのはわかるが今は抑えてほしい。」
「……あぁ、済まなかった。黙ってるから、そっちも早く終わらせてくれ。」
「協力、感謝する。」
とても白々しい会話の後、兵士はロイに問いかける。
「ロイ、そこの少年はお前がその女の子に絡んで来たと言っているが、事実か?」
「違いますよフリーデ隊長!こいつらが城に入ろうとしたから止めたら、いきなり侮辱してきたんですよ!」
「……ロイはこう言っているが?」
「城に入ろうとしたのは事実だ。だがそいつはこの子、ウルを睨み、脅したんだぞ?俺達にはちゃんと理由があったのに、だ。」
「どうなんだ?ロイ。」
「いや……ちょっと睨んだのは事実ですが脅してなんて……。」
「『これ以上入ろうとするなら切り捨てるぞ。』お前たしかに言ったよな?」
「そ、それは……。いや!そんなことより、理由も無く城に入ろうとするのが――」
「――帰ってきたって言ったろうが。」
「隊長!こんな理由で王城に入れるんですか!?」
「……少年、君の名前は?」
「功一だ。リリアル様に聞けばわかるぞ。」
「……わかった。確認してこよう。」
「隊長!?」
まともな兵士もといフリーデはやっぱりまともで、しっかり確認するようだ。
フリーデが30分ほどで戻って来た。……リリアルを連れて。
「リリアル様!?」
「さっきからうるさいぞ。いちいち驚くんじゃねぇよ。……で、なんでわざわざ?」
フリーデとリリアルに問いかけるが、ロイが邪魔をする。
「貴様!リリアル様に向かってなんだその口の利き方は!!」
「……お前ちょっと黙ってろよ……。」
「そうよ。ただの兵士は黙っていなさい。」
「リリアル様!?」
「……はぁ……本っ当にうるせぇ。」
「功一殿、その、済まないな。悪い奴ではないんだが……。」
「フリーデさんが謝っても意味ねぇだろ。」
「お兄ちゃん、まだ?お腹減っちゃったよ。」
「ちょっと待ってろって。……一体何なんだよこのカオスは!?」
ついに功一が状況に耐えられなくなったようだ。ウルとリリアルが参加して収拾がつかなくなってしまったからなのだが。
―――30分後
ここはリリアルの私室。ウルはしきりに恐縮していたが、今は功一の膝の上で落ち着いている。
結局、王城前の混沌はの件は誰もお咎めなし。ロイは全て自己責任で、石畳が割れた原因は不明。ということに落ち着いた。
……表向きは。
「まったく、さすがにあれはやり過ぎだよ。またあんなことしたら、国外追放だよ?」
「あ、そうなの?じゃあ問答無用で殴っときゃよかったな。」
「「…………は?」」
ウルとリリアルの声が綺麗にハモった。
「だって国外追放なら確実に国の外に出てもらうために、国境まで送ってくれるんだろ?別にここに居続ける理由もないし、送ってくれるんなら楽でいいじゃん?」
何故こいつは重罪の一つを単なる移動手段として考えているのだろうか?
「お兄ちゃん、私の故郷がクライスにあったらどうするの?」
「密入国するに決まってんだろ。」
「功一ちょっとおかしいよ!?」
訂正。どうやらこの男は罪を罪とは思っていないらしい。
「……私は、お兄ちゃんが犯罪者なるのは嫌だな。」
「わ、私も功一が国外追放なんて嫌だよ?」
「……わかった、わかったよ、なるべく法に触れないようにするから。」
「「絶対。」」
二人は“なるべく”が気に入らないようだ。
「そりゃ無理だな。」
だがキッパリ断る功一。
「な、なんで?」
「功一は犯罪者になりたいの……?」
「いやさ、相手が法を遵守するならいいよ。でもな?相手が無法者だったら、こっちだってそういう対応しなきゃ命に関わるだろ?」
「う、でもやっぱり功一には――」
「――お兄ちゃん、それは必要なの?」
なんとウルが王女様の言葉を無視して発言した。
これには功一もリリアルも目を見開いて驚いた。
(ホント、たくましいよな。)
「あぁ、必要だ。いざって時に躊躇うわけにはいかないからな。」
「……うん、わかった。でもやっぱり、なるべくそういうことはしないでね?」
「……了解だ。出来る限り避けることにする。だから心配すんな。」
そう言ってウルの頭をわしゃわしゃする。それを見ていたリリアルは少し不満そうだ。
「……ねぇ、そろそろその子のこと教えてくれない?」
「………………あ。」
「~~~♪」
やはりこの男はどこか抜けているのであった。
ワンパターンですね。
ちなみに兵士は弱くはないです。
功一があれなので瞬殺されましたが。




