ウルの秘密2
シリアスもどき。
若干重いです。
第八会議室で功一とウルは向かい合って座っていた。
「では、改めて……ウルティリス・ララシリアです。」
「ど、どうも功一です……?」
なんだかお見合いのような始まり方であるが、本人達は至って真面目だ。
「そういやウルの名前、今初めて聞いたな。」
「皆さんには“ウル”としか言っていないので、自己紹介などでも“ウル”で通していますからね。」
「……名前も隠していたのか。」
「功一さんだって偽名ではないけど本名でもないのでしょう?」
「さあ?どうかな。……ところで、その言葉遣いはどうにかならないのか?なんだかウルの見た目で敬語を話されると違和感しか感じないんだが。」
たしかに見た目10歳(実年齢もだが)の少女が敬語で話すより、普通に話した方が違和感は少ないだろう。
「むぅ……これでいいかな?お兄さん(・・・・)。」
「呼び方以外は完璧だな。」
「じゃあ、お兄ちゃん?」
「やめてくれないかな!?変態の烙印を押されるのは俺なんだぞ!?」
「でも、普通に喋りながら“功一さん”は変だと思うよ?」
おかしいのは事実だが……。というか、いつになったらウルの話をするのだろうか?
「くっ……………………………………………………………………………“お兄さん”で……。」
功一、苦渋の決断である。が――
「うん、わかった!……なんかこうやって普通に話すのって久しぶりだよ。楽しいねお兄ちゃん(・・・・・)。」
「ウルさん?先ほどの俺の決断はどこへ……?」
――ウルはサクッと無視した。
功一は動揺から思わず敬語になってしまったようだ。
「じゃあ私の話をしよっか。」
(……はぁ、仕方ない。呼び方は後ででいいや……。)
「………………。」
どうやら呼び方については後回しにして、黙って話を聞くことにしたようだ。
「私はある猫人族の(・・・・)集落で産まれたんだ。理由はわからないけど私の尾は二本あったから、狭い集落の中じゃ“不吉”だとか“呪われてる”とか、酷いものだと“悪魔の子は死ね”なんて言われたこともあった。
でも、私のお父さんとお母さんはね、凄く可愛がって育ててくれたんだ……最初はね。
私への迫害は、私の両親にも向かったんだ。“悪魔を産んだ魔女”“幻術使いの悪魔”……そうやって集落の奴らは罵倒してきたの。
私が幻術が得意だったのもあって、お父さんは姿を変えていると疑われて毎日拷問されるようになって、次第に変わっていったんだ。
……そしてある日、お父さんが無傷で帰ってきたの。あの時はまだ5歳だったから傷が無いことに疑問なんてなくて、素直にお父さんの無事を喜んだんだ。
でもお母さんはすぐにおかしいと思ったみたいで、ナイフを持って私を背にかばったの。私はいきなりのことで何が起こっているのかわからなかったけど。
……それでね、お母さんが『裏切ったの?』って聞いたらお父さんが『そいつを殺せば助かる』って言ったの。
そしたらお母さんが『ウル!幻術を使ってでもこの集落から逃げなさい!』って叫んでお父さんに切りかかって行ったんだ……。」
「……ウル?」
話が途切れてしまい功一は心配になって声を掛ける。
「私……私っ!怖くて、二人を見ていたくなくてっ!…………それで、逃げちゃったんだ……。」
「ウル……。」
「あ、あはは……最低だよね。生みの親を見捨てて生き延びてるなんて……。ホントに私は悪魔の――」
「――ウルはそう思うのか?」
「……え?」
「自分が最低だと、悪魔の子だと、そう思うのか?」
「……わかんない……わかんないよ……。」
「じゃあ今はそれでよくね?」
「…………………………軽くない!?」
功一は何を言っても全て否定しそうな暗い雰囲気を意図的にぶち壊した。もっともウルからしてみれば不真面目極まりないが。
「いや、だってさ……わからないってのは、これからどうとでもなるってことだろ?もしかしたらウルの親も生きてるかもしれないしな。」
「そ、そんなこと……。」
「ないとは言い切れない。“悪魔の子を上手く追い出した者”としてその集落に残れたかもしれないからな。」
「だとしても、私の力じゃ探すことなんて……」
「そこは俺を頼れよ。甘えるべきだ、って言ったろうが。」
「ぁ……。」
そう言われたウルは、目からポロポロと――
「い、いいの?私、意外とわが、わがまま……だよ?」
――涙を零しながら、問いかける。
「おう。わがままくらい問題ねぇよ。」
「わ、私、あま、甘えるときは、とことん甘え、るよ?」
「俺が言ったしな。いくらでも甘えさせてやるよ。」
はっきりと即答され、ウルは拒否も遠慮する理由も無くなってしまった。
もともと、親から十分な愛情は注がれず、誰にも弱い部分は見せられず、また甘えることも出来なかったが故に作られたウルの心の壁。
その壁は今、完全に崩れてしまった。
「ぁ、あ……おに、ちゃ……。」
よろよろと功一に近づくウルは、もう涙で前が見えないようだ。
(ったく、仕方ないやつだな。)
内心で苦笑しながらウルに近づき、そっと抱きしめる。
「ぅぁあ……おにぃ……ぅう、うわあああぁぁぁぁぁぁぁん!!」
(ホント、よく我慢したな。生きることすら難しかったろうに。)
「今まで、よく頑張ったな。」
「ぅっ…………うん……!」
「これからはちゃんと頼れよ?」
「……うん……!」
「じゃあ今は、泣けるだけ泣いとけ。」
ウルは功一の腕の中でしばらく泣き続けた。
―――1時間後
(寝ちまったよ……どうすっかな……。)
あの後、ウルは泣き疲れて寝てしまったようだ。
今はウルを抱きかかえつつ、椅子に座って途方に暮れていた。
(ふぅ……起きるまで待つかぁ……。)
―――さらに1時間
「ん……?んぅ……」
「おっ?起きたか?」
どうやらやっと目覚めたらしい。
「ぁれ?おにーちゃん、おはよー。」
「おはようさん。気分はどうだ?」
「ん~……ん?」
ウルは現状に気づいたようだ。即ち功一に抱きしめられているという状況に。
「はわっ!?あれ?なんで!?」
「うおっ!?」
瞬時に抜け出し、身構えるウル。
「なんっ……わたっ……うにゃーーー!!」
「いや落ち着けよ……。はい、深呼吸~。」
「?……すぅ~……はぁ~……」
(ホントにするとは……なんか和むな。)
「どうだ?思い出したか?」
「う、うん……。取り乱してごめんなさい……。」
「いや、別にいいんだが……。ん~……ここに入ってからかなり時間経ったしそろそろ来るかな?」
「……?お兄ちゃん、何が来るの?」
功一はニヤリと笑って、
「迷宮制覇のお知らせだよ。」
そう、楽しそうに言うのだった。
次回の前半はリリアル回。




